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「ウルトラマンブレーザー」前代未聞の挑戦!“1シーン&1カット”空中戦、田口清隆監督が明かす誕生秘話

ウルトラマンブレーザーと田口清隆メイン監督
ウルトラマンブレーザーと田口清隆メイン監督

 特撮ドラマ「ウルトラマンブレーザー」(テレビ東京系・毎週土曜午前9時~)が、14日放送の第14話「月下の記憶」で後半戦に突入し、さらなる盛り上がりを見せている。「セカンド・ウェイブ」「V99」といった謎めいたワードが登場し、メインストーリーが大きく動き出したが、「ウルトラマンブレーザー」は今後どのような展開を迎えるのか? シリーズ構成(※小柳啓伍と共同)&メイン監督を務める田口清隆がインタビューに応じ、直近の展開や第14話の制作秘話を明かした。(以下、第14話までの内容に触れています)

【画像】約2分30秒、怒涛の空中戦!第14話に登場したデルタンダル

「ウルトラマン」の王道は、一話完結の読み切りSF短編

 ニュージェネレーションウルトラマンでは、「ウルトラマンギンガ」の全11話、「ウルトラマンギンガS」の全16話、「ウルトラマンX」の全22話を経て、「ウルトラマンオーブ」以後、全25話の放送話数が定着して今日に至るが、そこで重要なのが「シリーズ構成」である。現在では、作品全体を通してのドラマの大きなうねりや見心地感も外せない要素となっているが、一方で、縦軸を重視し過ぎると、個々のエピソードの独立性が損なわれるきらいがある。

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 その点について、田口監督は「今回はシリーズとしての難しい縦軸より、1本1本のエピソードが面白いかどうかを大切にしました」と語り、シリーズ構成の小柳とは事前に「一話完結形式の読み切りSF短編から成り立っているのが、ウルトラマンの王道であり、シリーズ構成を組み立てる上では、各話で隊員たちが同じ人物として不整合がないように、徹底的にやりましょう」と申し合わせたという。

 ドラマで活躍する特殊怪獣対応分遣隊「SKaRD(スカード)」隊員については、シリーズ構成の途中でキャスティングが決まり、キャストの個性を踏まえつつ、各キャラクターの肉付けを行った。実際に撮影が始まると、キャストの関係性とSKaRDの設定が上手く噛み合ったとのこと。「SKaRDは、全員急遽集められた人間で、第1~2話の時点では全員が初対面でしたが、俳優さんたちもまた同じ状況だったんです。それがシリーズを通じて人間関係が構築され、やがて最大の難局に立ち向かう上では、役柄とキャストの立ち位置がかなりシンクロしていたし、それぞれの役柄についても見事にハマってくれました」

「ウルトラマンブレーザー」新展開へ - (c)円谷プロ (c)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

 前半戦では、第4話でアオべ エミ(搗宮姫奈)、第5話や第9話でミナミ アンリ(内藤好美)、第6話でバンドウ ヤスノブ(梶原颯)、第7話と第8話でナグラ テルアキ(伊藤祐輝)といった各隊員に焦点を当てたエピソードが作られ、第10話では主人公・ヒルマ ゲント(蕨野友也)の妻や息子が登場し、家庭人としてのゲントの一面が描かれた。これに関しても田口監督の強い意向が働いており、「主人公を妻子持ちの設定にすることは、かなり検討を要しました。主な視聴者層のお子さんが感情移入できなくなるんじゃないかとの懸念も伝えられたのですが、最終的には、むしろお父さんを見るつもりで応援してもらえるはず! との結論に至りました」と企画当時を振り返った。

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 本作のテーマは「コミュニケーション」が掲げられているが、妻子持ちであり、防衛隊の隊長であるゲントは、ある意味、このテーマを代弁した存在とも言える。「“板挟みに遭う主役”という案が色々な場面でのコミュニケーションの重要性を表現できそうで、面白いと思ったんです。父として家庭と仕事の間に挟まれる、隊長として上司と部下に挟まれる、さらにはウルトラマンという人に言えない秘密を持っている。いわば全てに挟まれる形。しかもウルトラマンブレーザーとは会話もできない」とゲントの置かれた立ち位置を解説する。

 互いに意思疎通を図ることができないブレーザーとゲントの関係性は、前半戦のクライマックスの軸となった。第10話「親と子」ではブレーザーがゲントの意思に反する場面が描かれ、SNS上では放送後、視聴者の間で様々な考察が行われるなど話題となった。続く第11話「エスケープ」と第12話「行くぞブレーザー!」を通じて、ゲントとブレーザーが心と心を通わせる展開に至り、作品は一つの頂点を迎えたと言っても過言ではない。

必殺武器「チルソナイトソード」誕生秘話

チルソナイトソードを構えるウルトラマンブレーザー - (c)円谷プロ (c)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

 第14話までの時点で、直近のウルトラマンと大きく異なる点が見られた。ウルトラマンブレーザーには、いわゆるタイプチェンジが設定されていない。このアイデアは、「ウルトラマンティガ」から始まり、ニュージェネシリーズでも度々取り入れられてきたほか、様々な形で派生し、現在では他社の特撮作品でも半ば定番化している。ウルトラマンシリーズの歴史を紐解く上で、偉大な発明の一つと言えるだろう。「過去にはタイプチェンジしないウルトラマンも大勢いたわけですし、逆にタイプチェンジしないことをウルトラマンブレーザーの特徴にしました」と田口監督の答えは実にシンプルだ。

 一方、第12話では新たな必殺武器「チルソナイトソード」が登場した。実は、ここにタイプチェンジに代わって提案したアイデアの片鱗が残っているそうだ。

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 「最初に出したアイデアが、例えばゴモラの角が付いた槍とか、倒した怪獣をどんどん武器や防具にしていくというものだったんです。その案自体は採用されなかったんですけど、ちょうど越(知靖)監督が第10話でガラモンを撮ることとなり、ガラモンと言えばチルソナイトでしょう。理屈はともかく『ガラモンからできた刀』なんて聞いたら、僕はもちろん、怪獣好きの人間なら絶対握りたくなるはず!(笑)」とチルソナイトソードの誕生秘話を披露した。

前代未聞!1シーン&1カット風処理で描いた迫力の空中戦

一体何者? 第14話に登場したドバシ・ユウ - (c)円谷プロ (c)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

 第1~3話を経て、2組目となる第14話と第15話(21日放送)を担当した田口監督。第14話「月下の記憶」では、第1話のサブタイトルでもあったバザンガを差す「ファースト・ウェイブ」、ゲバルガの「セカンド・ウェイブ」、それらを分類する「V99案件」など数々のワードが浮上。謎を追求するエミ、行方不明となっている彼女の父の存在、エミの行動を阻もうとするドバシ・ユウの登場など、新展開が幕を開けた。

 「いわゆる縦軸と言われる要素は、実は第1話からずっと流れていて、それが明確に表面化した最初のエピソードが第14話になります」とのことで、読み切り単発回として楽しんできた前半戦にも、様々なヒントが隠されている。例えば、第2話でエミが、唐突に「参謀長に言われてまして」とゲントと新隊員を引き合わせる役を務めたことは、第14話で明かされたハルノ レツ参謀長(加藤雅也)とエミの父親が親友であり、「おじさん」と呼ぶ間柄から説明が付く。「V99」のワードも、第4話でエミが潜入したノヴァイオ社の社長室で閲覧していた防衛隊の機密資料の中に見出すことができる。

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ウルトラマンブレーザーvsデルタンダル、圧巻の空中戦 (c)円谷プロ (c)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

 田口組といえば、特撮シーンも見逃せない。第14話では、ゲントの変身からウルトラマンブレーザーがデルタンダルを撃退するまでの空中戦を、合成を駆使した1シーン&1カット風処理で描写し、多くの視聴者が画面に釘付けになったことだろう。特撮シーンについて、常に多彩なアイデアを持ち合わせている田口監督だが、この一連が実現したのは脚本が発端だったという。「縦軸の内容部分は小柳さんと詰めたのですが、後は事前に多数の怪獣デザインがある中、小柳さんに好きな怪獣を選んでもらい、この回で何が起きて、どう戦うかは丸投げしたんです。それで、あがってきた脚本を読んで思ったのが『あ、デルタンダル、着地しないんだ』と(笑)」

 確かに空を飛ぶ怪獣は多々あれど、劇中、終始飛行したままというのは意外と珍しい。「フルCGの飛行怪獣は、テレビシリーズの規模では難しいし、操演でやるにしても手間がかかるので、だいたいは着地して格闘になるものなんです。いつもなら、『最後は地上で戦わせましょう』と言うところなんですけど、実は以前から変身から戦いが終わるまでを1カットでやってみたいと思っていたんです。ぐんぐんカットからシュワッチで飛び去るまで、1カット風処理なんて前代未聞でしょう」

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頭を悩ませたアースガロンの操縦室 - (c)円谷プロ (c)ウルトラマンブレーザー製作委員会・テレビ東京

 レインボー光輪やチルソナイトソードを使う際、ブレーザーブレスに各種ストーンを挿入するインナースペースでのカットはマストであり、同時にアースガロンも戦っている。それらをいかに1カット風に入れ込むかは、特に頭を悩ませたそうだが、「こんなチャンス、今後もないと思ったので、思い切ってトライしてみました」と打ち明ける。

 「特撮の全体打ち合わせで、“今回1カット1シーンでいきたいと思います”と宣言した際の、スタッフ全員からの『うーん、やりたいのは分かるけど……』みたいな微妙な空気が忘れられません(笑)」と振り返った田口監督。およそ10年にわたって、現場を歩んできた熟練のスタッフと共に、約2分30秒にもわたる怒涛の空中バトルシーンを作り上げた。(取材・文:トヨタトモヒサ)

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