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浅野忠信、ペンエーグ・ラッタナルアーン監督、プラープダー・ユン
『インビジブル・ウェーブ』
僕は演じているだけ、みんなが作ってくれるんです(笑)
『インビジブル・ウェーブ』浅野忠信、ペンエーグ・ラッタナルアーン、プラープダー・ユン単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦

2003年、浅野忠信はペンエーグ・ラッタナルアーン監督のタイ、日本、オランダらによる合作映画『地球で最後のふたり』でヴェネチア国際映画祭コントロコレンテ部門主演男優賞を受賞し、海外から高い評価を集めた。このときの“アジア最強”と呼ばれるスタッフと浅野忠信が再び組み、海外の映画祭で注目を浴びた作品が最新作『インビジブル・ウェーブ』だ。タイから来日したペンエーグ・ラッタナルアーン監督、脚本家のプラープダー・ユン、そして主演の浅野忠信に話を聞いた。

■“アジア最強”チーム再び

Q:このプロジェクトは『地球で最後のふたり』の撮影中に決まっていたのでしょうか?

浅野:撮影中から、スタッフの中にも、僕自身にも、このチームでまたやりたいという気持ちが芽生えていました。その思いがこの映画につながったんだと思う。決して具体的な企画が撮影中にあったわけではなかったんですが、そういう雰囲気はありました。

Q:作品のオファーを受けた決め手は?

浅野:やっぱりキョウジって役が面白くて、興味深い役だなと思ったところですね。僕は映画をあまり観ないですし、映画のことも全然知らないですけど、演じることがどういうことかってことは、多少なりとも理解しているつもりなので……。映画の中で、起こってはいけないことがいきなり起こっているっていうのは、一番興味深いですね。僕はそういうのがとても好きなんですよ。

Q:監督はどんな経緯で浅野さんを抜てきしたのでしょうか?

監督:実は、自分の国で何人かの役者に脚本を見せたのですが、全員に断られてしまったんです。それは脚本そのものが分かりにくいという理由だったんですが、そんなとき、この役を演じられるのは、『地球で最後のふたり』で仕事をしたアサノタダノブしかいないだろう、という結果になりました。

Q:そんな分かりにくい脚本に、すぐにOKするというのは、やはり役者としての直感でしょうか?

浅野:直感って言っていただけるとありがたいですね。いい加減って言われると困りますけど……。

■言葉よりお互いが何を感じ合えるかが大切

Q:監督との意志の疎通はいかがでしたか?

浅野:僕はよく言えば、直感で生きようとするタイプだから(笑)。コミュニケーションもクソもないというか、ひたすらこうニコニコと監督の顔を見て、こうかな、違うのかなって(笑)。それでクリスとかがワァーッて怒り出すと、これはよくないのかなーって(笑)。

Q:監督はいかがでしたか?

監督:現場に通訳はいたんですが、あまり通訳の力には頼らなかったんです。言葉の問題っていうよりは、じかにお互いが何を感じ合えるかでしょうね。やっぱり通訳を通すとワンクッション入っちゃいますから。

Q:浅野さんは全編英語のセリフに挑戦されましたがいかがでしたか?

浅野:ひたすら監督に減らしてもらって(笑)。英語でセリフを吹き込んだCD録ってもらってひたすら聞いて覚えました(笑)。13ページに渡るような、えっらい長いのもあったんですけど、僕はすぐに減らしてくれって(笑)。英語をやったり、ちょっとタイ語やったり、先日はモンゴル語もやりましたし、カンボジア語も……。いや~大変ですよ、外国語は、本当に!

Q:英語のセリフに感情を込めるのは大変ではなかったですか?

浅野:もう、どうでもいいやと思っていました(笑)。感情を込めようが込めまいが、それは監督とかカメラマンの人がうまく撮ってくれるので(笑)。日本語でも一緒なんですよね、感情を込めていなくても、込めているように見える映像を、僕じゃない人たちが作ってくれるんですよ。僕はもう、へらへらやっているだけです(笑)。

■監督と浅野忠信の完ぺきな信頼関係

Q:脚本家として、ご自身の頭にあったイメージと出来上がった作品を観て、いかがでしたか?

プラーブダー・ユン:やっぱり違いますよ。それが脚本家としては面白いところですよね。逆に何をどう期待していいのか分からなくて、驚きもひとしおでした。編集の結果で思ったものとは違うもの、ずっといいものになった気がしますね。

Q:本作のストーリーの魅力はどこでしょう?

浅野:自分でも多少なりとも人生の中で「悪いことをしてしまったな」ってことはあって、そういうときって「僕は悪くない」ってことを考えるんですよ。どうしたら僕が悪くないんだろうっというような理由をまずね。でも、はたから見たらやっぱり悪いんだっていう感じが、映画の中で描かれている。そこが面白いと思いますね。

Q:監督から見て、俳優・浅野忠信の魅力はどこだと思いますか?

監督:……。

浅野:そんなに止まらないでくださいよ(笑)。

監督:大変な映画でした。規模としても大きくなり過ぎて、技術的な面でもこれまでとは違った課題がありました。かなりいろんなことに気を配らないといけないかったです。そんな状況でも、浅野さんについては完ぺきに信頼していますから、何も心配する必要がありませんでした。100パーセント任せられるところが魅力だと思いますね。

Q:国際的な監督と組まれる楽しさとは?

浅野:日本の中でも特殊な監督を見つけるのは大変だし、ほかの国を見てもあんまりいないですよ。彼とは仕事をしている中で、僕はとても可能性を広げてもらっているような気がするんです。それってやっぱり重要であり、大切なことなんですよね。

インタビューの最中も、興味深げにカメラで浅野や、インタビュアーを撮り続けていた監督。そんな彼を「面白いでしょう? 監督」とうれしそうに見守っている浅野。インタビューの空間には、言葉の壁を越えた穏やかな雰囲気がただよっていた。「言葉の問題なんて大したことはない」といった監督と、「コミュニケーションもクソもない」と独自の表現をした浅野の深い信頼関係が、素晴らしい作品を作り出した。『インビジブル・ウェーブ』を観れば、そんな2人の関係に納得せざるを得なくなってしまうだろう。

『インビジブル・ウェーブ』は5月26日よりシネマート新宿ほかにて公開。

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