シネマトゥデイ

松山ケンイチ
『ドルフィンブルー ~フジもういちど宙(そら)へ~』
幸せを幸せだと分かる人にしか、幸せは来ない
『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙(そら)へ』松山ケンイチ 単独インタビュー

取材・文:南樹里 写真:鈴木徹

今、乗りに乗っている若手実力派俳優の筆頭といえば、松山ケンイチだろう。主演最新作は、世界初「イルカの人工尾びれプロジェクト」を実現させたという実話に基づいた『ドルフィンブルー ~フジもういちど宙(そら)へ~』。同作では、人口尾びれを発案し、奔走(ほんそう)する新米獣医師にふんする。舞台は沖縄美(ちゅ)ら海水族館。青森出身の松山ケンイチが初めて訪れた沖縄の地で、まるまる1か月滞在し撮影した自信作について話を聞いた。

■獣医を演じるにあたって

Q:ロードバイクを疾走させるシーンがすてきでした。

特に大変なことはなかったです(笑)。楽しく乗っていたら、ロードバイクはすぐに乗りこなせるようになりました。

Q:特技は棒高跳びだそうですが、運動神経は良いですか?

僕、泳げないんです。青森では学校の授業で水泳がないんです。スキーの授業はありましたが、すっごくうまい! っていうわけではないです。普通です(笑)。

Q:獣医役をとても自然に演じていましたが、役作りはどのようにされたのですか?

僕的には、一也のモデルとなった植田さんを表現したかったんです。でも、前田監督から一也は新米で生意気って設定。オリジナルの一也を演じてって言われたんです。なので、こだわった演技もしていません。ある日常を切り取ったドキュメンタリー風の作品で、観客をあまり泣かそうとはしていないんです。監督もそのまま自然な感じを出したいっておっしゃっていました。

Q:前任の獣医たちが耐えられずに辞職する中で、一也はどうして飼育や掃除を耐えられたのだと思いますか?

中村課長役の利重さんに言われた「イルカのことをどれだけ分かってる?」ってことですね。一也は獣医として何が必要なのかをどこかで分かっていたと思うんですよ。自分が早く何かを成し遂げたい、証明したい、っていう思いがあるから、すごくあせっている。だけどそうじゃないってことも知っていて、だからこそ我慢できたんだと思います。普通に僕らも分かってはいるけれど、認めなかったり、知らないふりをしたりすることがたくさんあると思うんです。

Q:モデルとなった植田さんと話すことで、「分からない部分が分かった」とおっしゃっていたようですが、具体的にはどんなことですか?

獣医師であることについて、全部です。普通なら準備のために作品と作品の間をとるようにしているんですけど。今回は事前に役作りをできなかったんです。獣医のこともまったく勉強していかなかったので、採血や、体温の測定、どこまで触れていいとか、すべて教えてもらいました。

Q:アイデアの提案や、撮影中のアドリブはされたのですか?

監督とは本当によく話し合いました。池内博之さんが演じられた比嘉剛と一也の関係って険悪なんですけど、台本ではあそこまで激しくは描かれてはいなかったんです。実際、現場でかかわっているうちに、ああなったんです。お互いが、人と同じぐらいの命の重さが動物にあることを知っているし、助けたいという思いがあってこそですから。

Q:“反骨心”をにじませる演技は、さじ加減が難しいのでは?

それは監督と相談しながら考えました。抑えきれない部分は普通に出ちゃっていますし、それは編集でなんとかしてもらっています(笑)。今回は自分の感じたままに演じていたことが多いです。

■イルカとの触れ合いを通じて学んだこと

Q:初めて行かれた沖縄で、一番の思い出といえば? またお酒や食事はどうでしたか?

飼育員の方の家で飲み会をしたことです。それもあって泡盛は飲めるようになりました。おいしかったです。お酒に関しては、飲んでもそんなに変わりません。食べ物で言えば、沖縄美(ちゅ)ら海水族館のパイン味のアイスがおいしかったので、おすすめです。

Q:動物が苦手とのことですが、イルカとの共演はいかがでしたか?

イルカたちと接して、動物に対する距離感が変わりました。僕は動物に対して、触れたいという興味がなかったんです。一緒にプールに入るシーンでは、最初の方は、タイミングが合わないこともありました。でも、イルカがスーッと寄ってきてくれたときは「通じ合えた!」と思えました。飼育員の方のサインに従って、望み通り演技を見せてくれました。イルカのフジは母のような存在で、この現場で一番大切でした。

Q:(イルカの)フジは、泳ぎをあきらめたときに、人間からの救いの手が差し伸べられたわけですよね。

フジの場合も本当にフジがどう思っているのか、それが本当に良かったのかって今でも分からないところだと思うんです。でも、間違いなく、そういう尾びれをなくしてしまうイルカはフジだけじゃない。人間がそれを知って何かをできるようにするために、こういうプロジェクトができあがったんです。僕らが水族館で普段見ることのできない魚を見られることで、こんなにもたくさん命が世界にいて、自分たちが自然界を汚すことによって、これだけの魚たちが死んでしまうってことがよく分かる。たぶん水族館の意味ってそういうことだと思うんです。

Q:この作品に関わったことで、動物に対する思いは変わりましたか?

水族館とかって、ただ、自分たちが楽しむために魚を囲っているだけじゃないかと言われてしまうのは仕方がないと思います。ただ、館長のセリフにもありますが、人間の自己満足で終わらせちゃいけないと思うんです。"絶対に必要な悪いこと"なのかな、って考えさせられました。

■俳優として、一人の人間として

Q:表現者として大切にしていることは?

自分が表現者として成り立っているかは分からないのですが、間違いなく、自分が今この世界に生きていることが、表現する力になるし、役になりきる力になる。そういう意味で、ちゃんと今の世界を生きるっていうことに対する責任を持ちたいです。

Q:松山ケンイチ個人として、自分に対して課しているルールはありますか?

自分ができることは、知らないふりをしないでやろう! ってことですね。たとえば……マイ箸(はし)を持ち歩くとか、ペーパータオルは使わないとか。電気はこまめに消す。そういう簡単にできることは、ちゃんとやろうと思っています。

Q:「今ある状況を変えるのは自分自身でしかない」との発言を以前されていました。現状には満足されていますか?

はい、充実しています。いい人間関係で、スタッフにも恵まれ、作品にも恵まれ、大満足しています。今の自分の考え方がいいからだとも思っています。

Q:自分に自信を持つのは、とてもいいことですね。

自分に自信を持つって大事ですよね。自分のことを好きにならなくちゃダメだと思うんです。自分を好きにならないといけませんよね。幸せを幸せだと分かっている人間にしか、幸せは来ないですからね。

Q:今後“松山ケンイチ”はどうなるのでしょうか?

いただいたお仕事にきっちり向き合っていきたいです。

「インタビューぐらいでしか自分のことを話す機会がないから」という松山ケンイチ。こちらの質問に対して言葉を選びながら真摯(しんし)に答えてくれる姿は好感度大。22歳という若さながら、自分の考えを持ち、妙なブレをまったく見せないのは、芯(しん)がしっかりしているからだろう。人気上昇にともなってモテモテ状態では? と聞いてみたが、「全然です」と即答だった。それでも世間は思っていますよと伝えると、「それは心外です」とまじめに答えるシャイな面こそ、女性のハートをくすぐるに違いない。今後、ますますの活躍を期待し、応援し続けたい。

『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙(そら)へ』は7月7日より全国公開。

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