シネマトゥデイ

古田新太、高岡早紀
『蜉蝣峠』
長丁場の舞台は、ラマーズ法のごとく乗り切るべし!?
『蜉蝣峠』古田新太、高岡早紀 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:高野広美

結成30周年を迎えた、いのうえひでのり率いる人気劇団の劇団☆新感線と、人気脚本家の宮藤官九郎がコラボレートした舞台を、最新のデジタルシネマ技術で映像化して映画館の大スクリーンで上映する「ゲキ×シネ」シリーズ作品の『蜉蝣峠』。ほぼすべての登場人物がアウトローという異色の時代活劇に主演した劇団☆新感線の人気俳優・古田新太と、ヒロインを務めた高岡早紀が、「ゲキ×シネ」作品の魅力や共演の感想、プライベートまで赤裸々に語ってくれた。

■「いのうえ歌舞伎」シリーズ史上、最高のオモシロさ!

Q:基となった舞台ですが、昨年春から初夏にかけての公演は、連日大盛況だったと聞いています。

古田:おかげさまで大反響でした。いのうえさんと宮藤さんの物語には、面白いセリフが必ずあるので、そこがお客さんの楽しみであり、人気の一つだと思っています。そういうセリフを表現することがヘタクソな俳優さんもいらっしゃいますが、僕らに限っては大丈夫でした(笑)。

高岡:わたしは、そのセリフを表現するのが難しかったですね。古田さんって、休憩中はウロウロしたりしていて、共演者に無関心なようでいて、実はすごく聞いているし、すごく観ている人なんです。 だからわたしもちゃんとしなきゃなって思っていました。面白いセリフや、演技をハズさないように、毎回パシッと決めることって本当に難しい作業だなと、今回改めて思いましたね。

Q:劇団☆新感線と宮藤さんが「いのうえ歌舞伎」で初めてコラボレートしたことも話題の的でしたよね。

古田:ええ。僕は「いのうえ歌舞伎」シリーズに長いこと出ていますが、今回の『蜉蝣峠』が個人的に一番好きな作品です(笑)。 「いのうえ歌舞伎」をたくさん書いている人たちには申し訳ない話ですけど、今回が一番面白いと思うな。

高岡:いきなりストレートできましたね(笑)。わたしは今回、「いのうえ歌舞伎」に初めて参加しました。話の底には暗いテーマが流れていますが、宮藤さんが脚本を書かれたことで暗い部分をうまくごまかせていると思いました。暗くなり過ぎず、微妙なラインで進む構成が魅力的ですよね。いつも観ている舞台とはまったくテイストが違うので、出ていても楽しかったです。

■「ゲキ×シネ」では反省点ばかり!

Q:"壊"と書いてパンク(PUNK)とルビをふっているタイトルが表しているように、今までの「いのうえ歌舞伎」を一度解体した、新しいコンセプトの演出の数々も斬新なものがありました。

古田:そうですね。もともとの劇団☆新感線の「いのうえ歌舞伎」シリーズには、スーパーマンが出てくるヒーローものが多いんです。だからここまで悩み、苦しむ主人公像はポイントですね。市川染五郎さんの『朧の森に棲む鬼』も悪役の話でしたが、今回の『蜉蝣峠』は、キャラクターたちが暗いものを抱えている。そこがまず全体の根っこにあるわけです。僕自身も暗い人間なので、暗い話が性に合っていて大好きですね(笑)。

高岡:古田さんって暗い性格でしたっけ?

古田:心の中に澱(おり)がずっとあるような感じかな。で、話を戻すと(笑)、宮藤くんの持っている軽いノリは、ウソの若者のノリなの。つまり、本当はみんな苦しんでいるけれど、そうは見えないような感じ。だから自分で今回の映像を観たときに、主人公の闇太郎はもっとチャラい雰囲気を出してもよかったかなと思いました。中身が何もない人間である闇太郎を表現するために、終始ボーッとしていようと思ったけれど、戯曲の持っているパワーで、最後までいけたなあと。「ゲキ×シネ」って反省点ばかりが先に立ってしまいますね(笑)。

高岡:寄り引きを映画のように撮られてしまうので、反省しますよね。舞台中継のような映画のような。映像と舞台はそもそもまったく違うので、そういう意味でも反省点が見えますし。

古田:アラが見えるよね! 一本の映画だと、テンションをシーンごとに上げて積み重ねていくから全体的なトーンは同じままだけれど、一回何時間のスパンでやる舞台は、早紀ちゃんがしゃべっているときは僕が気を抜いていることもある(笑)。そこを抜かれちゃうわけだからね。

Q:舞台は長時間なので、気を抜く瞬間がいくつかないと乗り切れなそうですね。

古田:そうなんです。通常、お客さんはセリフを言っている役者に目が行くものですし。第一、映画と舞台じゃ、向かっていくベクトルがまるで違いますからね。映画はいくら主演で長時間の作品でも、どこか短距離走な感覚ですよ。ワンシーンを全力で走り抜けるみたいなね。舞台はマラソン、長距離走ですよね。ヒー、ヒー、フーみたいな出産時の呼吸法でいかないとダメ(笑)!

高岡:そこまでではないと思いますが(笑)、今回はとても勉強になりました。でも、メリハリをつけるといいますか、全力で走るよりも、休憩したほうがいい瞬間もあると思いましたね。

■夜中に手をつないで歩いたものの、パパラッチに無視された!?

Q:以前ドラマでも共演されているお二人ですが、今回はキスシーンがありましたね!

古田:とても幸せな時間でした……。毎日チューができてよかったです。

高岡:毎日チューしていましたね! 古田さんは本当に安心感をくれる方なので、毎日ありがたいなあと思いながら現場に行っていました。

古田:早紀ちゃんは芝居の揺れやトーンがとっぴじゃない分、すごく静かなレベルで感情の変化が感じられるので僕はとても好きです。僕は共演者の人とテーブルで座って話している感じで、そのまま舞台に乗りたいタイプ。その意味でいうと、早紀ちゃんはとてもやりやすいですし、楽しいですね。早紀ちゃんは僕自身に向き合ってくれて演技をしてくれたので、本当に演じやすい人でしたね。

高岡:ありがとうございます。古田さんもお客さんの方を向かず、共演者の方を向いてくれる人です。わたしたちが面と向かって話さないと、その二人の気持ちがお客さんに伝わらないと思います。だからこそ相手役を意識するって一番重要なことだと思いますが、今回の舞台ではまずわたしに古田さんの心が届いたので、安心してお任せすることができました。

Q:お二人はプライベートでも親交があるそうですね。

古田:以前、早紀ちゃんの誕生日パーティーに顔を出したことがありますね。同じ誕生日なのに、僕が早紀ちゃんの誕生日パーティーに行きました(笑)。

高岡:そうなんですよー。同じ日付なので、まさか来てくださるとは思っていなかったのですが、普通に、一番にいらっしゃって。

古田:誰よりも先に来て、一人で飲んでいた(笑)。

高岡:すいません……。どうしてあんなに早くいらっしゃったんですか(笑)?

Q:親交があるからこそ、いいリレーションを築けたということでしょうか?

古田:早紀ちゃんとはドラマで何度かご一緒したことがある程度でしたが、舞台の稽古中や公演中は、ほぼ毎日、ランチを二人でたしなむ間柄になりましたね。仲良くなって、二人で麻布にあるスナックに行ったこともありましたが、まったくフライデーはされなかったですけどね(笑)。

高岡:そういえば全然でしたね(笑)。

古田:下北沢では、わざわざ手をつないで大声で話しながら二人で歩いたけど、ダメだったよな。

高岡:きっと撮られているとは思いますけど、誌面では使えなかったのかもしれないですね(笑)。

古田:つまり、ニュースソースとして相手が僕じゃダメだったということになるのか(笑)!

■地方の人にも観てもらえる「ゲキ×シネ」ってすてきな作戦!

Q:「ゲキ×シネ」のシステムが広まることで、演劇界での何か変化を期待しますか?

古田:どうでしょうねえ。まあ、舞台に出ている人間としては、反省点が浮き彫りになってしまうので、今度はちゃんとやろうと思う反面、お客さんとしてはめったに観られない舞台上での切り替えしが楽しめますよね。当然アップもあるわけです。しかも舞台よりも値段が安いぞと(笑)。

高岡:本当にそうですね。「ゲキ×シネ」になることで、心構えまで変わってしまいそうですね。

古田:それと、普段僕らが行けないような土地で上映することで、観られる人が増えるというのが何よりうれしいですね。劇団☆新感線はスペックがでかい作品しかないので、そうなるとバジェットがかかる。だから地方で上演するのは、なかなか難しいことなんですよ。「ゲキ×シネ」の場合、僕らが地方に行きたい欲望は満たされないけれど、僕たちの舞台を家庭ではなくて、ほかのお客さんと共有しながら楽しめる空間で観てもらえるのは、すごくすてきな作戦だなと思いました。

高岡:「ゲキ×シネ」はすごく臨場感にあふれているので、舞台を実際に観ることができなかった方でも、ライブで観ている状況にかなり近い感覚で楽しめると思います。アップのように舞台上の細かいところまで観られるのが、「ゲキ×シネ」の魅力かなあと思います。

生の舞台を録画して映画として上映する「ゲキ×シネ」は、「課題も多いけれど、今後は楽しみなことが起こりそう」と肯定的に受け止めている古田と高岡。確かに一回限りで映像に残らない演劇作品も少なくないため、映像に残す「ゲキ×シネ」は、新しい演劇のあり方として熱い注目を集めそうだ。昨年は3D元年として3D映画が量産され、デジタル化が一気に波及したが、そんな今こそ、「ゲキ×シネ」の世界を堪能してみてはどうだろうか。

映画『蜉蝣峠』は2月13日より全国公開

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