シネマトゥデイ

サム・ライミ&レイチェル・ワイズ
『オズ はじまりの戦い』
大人になって忘れてしまったものを思い出させてくれる
『オズ はじまりの戦い』サム・ライミ&レイチェル・ワイズ 単独インタビュー

取材・文:相馬学 写真:吉岡希鼓斗

L・フランク・ボームの児童文学「オズの魔法使い」に着想を得て、偉大な魔法使いオズの若き日の冒険を描いたディズニー製作のファンタジー『オズ はじまりの戦い』。巡業生活を送る身勝手なマジシャンだったオズが、魔法の国の危機を救うために邪悪な魔女と戦う物語は大人も子どもも楽しめる。『スパイダーマン』シリーズでおなじみのサム・ライミ監督と、魔女エヴァノラにふんしたアカデミー賞女優レイチェル・ワイズが、本作に込めた思いを語った。

■映画史上初!? 誰も傷つかないバトルシーン

Q:この映画の企画のどこに惹(ひ)かれたのでしょう?

サム・ライミ監督(以下、監督):脚本が素晴らしかった。読んでいて気持ちが高揚したよ。物語が魅力的だったし、そこに登場するキャラクターは僕が心を開いて接したいと思えるような愛すべき人々だった。面白い映画になると思ったね。最も興味を引かれたのは、クライマックスのバトルシーンにバイオレンスが一切ないことだ。オズがウイットを武器にして魔女と戦うというアイデアがとても気に入った。誰も傷を負わないバトルシーンは、これが史上初じゃないかな。それが観客にとって魅力的かどうか不安もあったけれど、オズの魅力を伝えるうえで、これ以上ないクライマックスだったと思うよ。敵のエヴァノラは戦略家だけれど、オズはそうではなく、観客の目を欺いてきたペテン師のようなマジシャンだ。その経験を生かし、なおかつ周囲の助けを得て、敵の魔女たちにショーを見せるというわけさ。

レイチェル・ワイズ(以下、レイチェル):オズがそれをやり遂げられたのは、彼を導く善の魔女、グリンダがいたからよね。偉大なる男性の陰には、いつも偉大な女性がいるのよ。

監督:(笑)。そのとおり。グリンダにとって、頼れる人物はペテン師のようなオズだけだった。そこで彼の持っている才能を最大限に引き出すことになるのさ。

レイチェル:わたしもサムと同様に物語とキャラクターに惹(ひ)かれたわ。同時に、監督がサムだったから、どんな世界を作り上げるのかとても楽しみだった。この作品を船に例えるなら、彼ならばわたしたちをオズの国に導く、素晴らしい船長になるだろうと思ったのよ。魔法の国を魅力的に描きながら、キャラクターをリアルに演出してくれる。この二つをブレンドすることは難しいわ。サムは見事なカクテルを作り上げたのよ。

■『オズの魔法使』の思い出

Q:映画化された『オズの魔法使』は古典となっていますが、これに対して、どんな思い入れを持っていらっしゃいますか?

レイチェル:歌とジュディ・ガーランドの美しい声が印象に残っているわ。観たときは子どもだったから、やっぱり魔女がとても怖かったことを覚えているわ。

監督:僕も子どもの頃に見たけれど、鮮明な思い出がいくつかある。まず、竜巻だ。子ども心にとても怖かったけれど、あれをどうやって撮ったのか、すごく興味が湧いたね。もちろん、レイチェルが言っていたように歌もダンスも素晴らしかった。何より、俳優の力には感銘を受けたよ。カカシ役のレイ・ボルジャーは特に素晴らしかったけれど、本物のわらのように見えるカカシが、どうすればあんなふうに動くのか不思議でしょうがなかった。あの映画以来、僕はあれ以上に素晴らしい演技を見ていないと言っても過言ではないかもしれない。

Q:それを踏まえると今回の作品で確かな演技力のある俳優をそろえたことも納得がいきますが、実際に出演者たちの演技を見て、いかがでしたか?

監督:素晴らしい体験だったよ。僕はレイチェルに見とれていた。「監督、カットと言ってください」と言われて、初めてわれに返ったこともあったね。その分、オズ役のジェームズ・フランコの演技は冷静に見ていた。オズの重要なポイントは良心の葛藤だ。彼のやりたいことと、なすべきことのバランスがとれているか、常に冷静に観察していた。もちろん、ジェームズは見事にやり遂げてくれたよ。

■わたしたちも“オズの国”にいた

Q:レイチェルさんは、監督から困難なリクエストを出されたことはありましたか?

レイチェル:うーん、特にはなかったかしら。

監督:僕が「ミュージカルにしようか?」と言ったら、彼女は「いいわ」と言ったほどだから、大抵のことは大丈夫だったはずだ(笑)。

レイチェル:そうね……監督はわたしたちに「何でもできる」と思いこませてくれた。何といっても、わたしたちは“オズの国”にいたのよ。不可能なんてないわ(笑)。おとぎの国の話だから、何でもありの世界なのよ。わたしもいろんなことを実験できたし、子どもの頃に帰っていろいろなことができたし、監督も自由にトライさせてくれた。わたしだけではなく他の役者もそうだったと思うけれど、まるで子どもが遊び場に置かれたような感じだったもの。

■子どもの頃に忘れていた何かを思い出す

Q:この映画は、どんなことを観客に訴えるとお考えですか?

レイチェル:女の子は皆、魔法が使えるということかしら(笑)。とにかく、空想の力はとてつもなく大きいわ。子どもはそれをよくわかっているけれど、むしろ大人は忘れている。そんな力を、取り戻させる映画だと思う。

監督:これはモラルについての物語だ。オズは偉大な人間になろうと思っているけれど、その前にはまず良い人間にならないといけない。それこそが大切だと思うよ。

レイチェル:オズは偉大な人物になろうとして良い人になってゆくけれど、それは彼が夢を捨てず、そのための方法を状況に応じて変えていった結果だと思うわ。どんな状況でも夢を追い続けること、それがこの映画のメッセージね。

監督:その通り。

にこやかに答えてくれるライミ監督とレイチェルの姿を見ていると、この映画を作り上げることをとても楽しんだことが容易に想像できる。息の合ったやりとりにも、監督と俳優の強い信頼関係が見て取れるようだ。“オズの国”のすてきな魔法は、今も彼らを包み続けているのかもしれない。

(C) 2012 Disney Enterprises, Inc.

映画『オズ はじまりの戦い』は3月8日より全国公開

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