シネマトゥデイ

今週のクローズアップ 『悪魔のいけにえ』一家の逆襲が始まる!殺人一家の家庭の事情

 1974年、米テキサス州の片田舎で若者たちを血祭りに上げる殺人鬼一家の狂気を描いた低予算ホラー映画『悪魔のいけにえ』が、米国で公開された。うだるようなテキサスの暑さと、死体の腐臭が伝わってくるかのような荒々しい映像、人間の皮でできたマスクをかぶった大男「レザーフェイス」の存在感、彼の振るうチェーンソーのうなりは人々を震撼(しんかん)させ、世界中でヒット。今や知らぬ者はいない、伝説のホラー映画となった。

 それから約40年、正式な続編となる3D映画『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』が日本公開を迎える。邦題でうたわれているように、本作では、1作目の事件の後に殺人一家に起こった出来事と、彼らの年月を経た復讐(ふくしゅう)が描かれる。そこで同作の日本公開を前に、ホラー映画に登場する、狂気と愛情に満ちあふれた、さまざまな家族たちの物語を追ってみたい。

近親相姦(そうかん)が生む呪われた絆!恐怖の狩人家族!

『クライモリ』シリーズ(2003年~)

 とある森の奥深くに入り込んだ若者たちが、世にも醜い人食いミュータント3兄弟に遭遇。次々と血祭りに上げられていくさまを、強烈に残虐描写した作品。ホラー小説の大家スティーヴン・キングが、その年の年間ベストワンムービーに挙げたことで一気に話題を呼び、ついには5作目を数えるほどの人気シリーズとなった。

 犠牲者を狙うのは、全員が強烈なビジュアルの奇形一家。近親相姦(そうかん)を繰り返して全員が奇形になってしまったという、倫理的にもアウトな設定となっている。中でも1作目で登場するトリオが非常に魅力的で、兄弟それぞれの個性を発揮して犠牲者を追い詰めていくさまが興味深い。森で暮らしているという設定故か、弓矢やオノなどを巧みに使って犠牲者を狩るさまは、レザーフェイスやジェイソンといった、力業だけの殺人鬼たちとはまた違った、一流のハンターの佇まいを醸し出している。

 シリーズを経ると家族も増え、下着姿の女の子をのぞいて興奮する男を、姉妹の女が「めっ!」と叱る、家族らしいほほ笑ましい場面も。ただしその後、殺した女の頭皮をかぶって、近親相姦(そうかん)に興じる二人のシーンを差し込むあたり、製作者たちは観客を最悪の気分にすることを常に忘れない。最新作『クライモリ デッド・パーティ』で一家は、ついに家族ではない連続殺人犯とまで手を組む。

 

最新作『クライモリ デッド・パーティ』より
DVD発売中 価格 1,490円(税込み)
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 

これが奇形一家だ! 最新作『クライモリ デッド・パーティ』より
DVD発売中 価格 1,490円(税込み)
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 

(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

漂う狂気と悲哀……哀愁漂う犯罪者一家

『マーダー・ライド・ショー』(2003年)

『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』(2005年)

 ヘビーメタル界の巨匠にして熱狂的なホラー映画マニアであるロブ・ゾンビの初監督作とその続編。1作目では、田舎町を舞台に、車が故障した2組のカップルが、殺人一家の住む家で遭遇する恐怖を描いた、まんま『悪魔のいけにえ』テイストのストーリーが展開する。

 奇抜なピエロのメイクを施した一家の長キャプテン・スポールディングをはじめ、家の中にさらってきたチアリーダーを飼うオーティス、キュートな笑顔とセクシーなボディーを併せ持ち、笑顔で殺人を犯しまくるベイビー・ファイアフライ(監督の妻シェリ・ムーン・ゾンビ)など、本作に登場する一家も、殺人嗜好(しこう)を隠そうともしない異常者集団。どこかなりわいとしての殺人を感じさせる『クライモリ』一家と比べると、見た目はマトモだが、狂いぶりはこちらに軍配が上がるといってもいいだろう。

 1作目の『悪魔のいけにえ』フォロワーといった印象の作品から、2作目ではガラリと作風をチェンジ。警官隊との銃撃戦から逃げ出したキャプテン、オーティス、ベイビーの逃避行を描いたロードムービー仕立ての作品となっており、アメリカン・ニューシネマの色が濃い。旅を通して彼らが行う非道は目を覆いたくなるほどだが、ラストに向かうにつれ、彼らの生きざまや家族愛に不思議な共感を覚え、ラストには哀愁さえ漂う一級のバイオレスアクションとなっている。

 

ロブ・ゾンビ監督と嫁のシェリ・ムーン・ゾンビ
Denise Truscello / WireImage

こちらは『デビルズ~』のポスター
デザインは「最後の晩餐」がベース!
Ethan Miller / Getty Images Entertainment / Getty Images

母さん、あいつらを殺して!母の愛が生んだ死の象徴!

『13日の金曜日』シリーズ(1980年~)

 スプラッターホラーの金字塔。クリスタル湖のキャンプ場を主な舞台に、ホッケーマスクの殺人鬼ジェイソンが、趣向を凝らしたパワフルな方法で若者たちを血祭りに上げる。殺人鬼・ジェイソンが大暴れするのは2作目からだが、そこでかぶるのは頭巾のような布。1982年の『13日の金曜日PART3』(3D映画!)からおなじみのホッケーマスクを装着する。

 記念すべき1作目で若者たちを殺していたのは、ジェイソンではなく彼の母親ヴォーヒーズ夫人というのは有名な話だ。夫人は、息子ジェイソンがクリスタル湖で溺れ死んだとき、湖の監視をさぼっていた監視員への恨みから狂気にとりつかれる。この作品でジェイソンが登場するのはラストシーンのみ。湖から醜くゆがんだ顔面のジェイソンが飛び出し、ボートに乗ったヒロインを引きずり込むショッキングな場面はあまりにも有名だ。

 ジェイソンを殺人に駆り立てるのは、殺された母親の敵討ちのためにも思える。つまり本シリーズのベースとなるのは、母と子による悲しくも狂った復讐(ふくしゅう)劇といえるだろう。しかし1作目でヴォーヒーズ夫人を演じたベッツィ・パルマーは、1作目で登場したジェイソンこそ彼女の息子であると捉えており、いくつかのインタビューでも「ホッケーマスクの怪人なんて知らないわ」という趣旨の発言が見受けられる。おそらく映画史上最も有名であろう殺人鬼は、愛する母にさえ認められない、悲しい存在だといえるのかも。もっとも当のジェイソン本人も、シリーズを重ねるごとに復讐(ふくしゅう)なんぞ関係ない、全てを超越した殺人マシーンの趣が強くなり、リメイクをされてもなおせっせと能天気な若者たちを殺しまくっている。


実はお母さんに嫌われている? ホッケーマスクのジェイソン
Warner Bros / Photofest / ゲッティ イメージズ

衝撃のラストシーン直前!
Kobal / PARAMOUNT / The Kobal Collection / WireImage.com

切り離された結合双生児!離れられぬ絆が生む悲劇!

『バスケット・ケース』(1982年)

 現在も一部に熱狂的なファンを持つカルトホラーの傑作。「シャム双生児」とも言われる、結合双生児として生まれ、後に切り離された兄と、彼をバスケット・ケースにしのばせる弟。奇妙な兄弟による復讐(ふくしゅう)の旅と、その絆がもたらす悲劇が描かれる。

 兄弟は、弟の脇腹から兄が生えた状態で生まれ、ショックで母親は死亡。父親は弟のドウエインを溺愛し、頭部と両腕だけの醜い兄・ベリアルには冷淡に接するという、複雑な環境で育った二人。ある日、強引な外科手術で切り離された兄はゴミ箱に捨てられるが、異常ともいえる絆を持つ二人はテレパシーでつながっており、ドウエインがベリアルを救出。手術を行った父と医者たちに血みどろの復讐(ふくしゅう)を果たしていく。

 溶けてツブれたコブのような、ショッキングな容姿故に弟の保護が必要な彼と、気が弱くその兄に服従しなければ生きられない弟。彼らの血まみれの復讐(ふくしゅう)劇は、弟がある女性と恋に落ちたことから、兄からの独立を図る弟の物語へと変化を見せる。その醜さゆえ誰からも愛されないベリアルが、やがて嫉妬からドゥエインの恋人を殺害、性器のない体でその女性を屍姦(しかん)するシーンは、B級テイスト満載のお下劣描写として笑い飛ばすことのできない、えも言われぬ悲哀に満ちている。


まさかのブルーレイ化も実現!
『バスケット・ケース』ブルーレイは発売中 価格:5,040円(税込み)
発売・販売元:キングレコード株式会社
(C)1981 The Basket Case Co. All rights reserved.

 

まさに凸凹兄弟のベリアルとドウエイン
(C)1981 The Basket Case Co. All rights reserved.

 

お兄ちゃんは怒ったぞ!
(C)1981 The Basket Case Co. All rights reserved.

チェーンソーが飛び出す!テキサス伝説の一家が帰ってきた!!

映画『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』(2013年)

 犠牲者の女性を椅子に縛り、人肉食の晩餐(ばんさん)会を催すなど、1作目からその異常性が際立っていた同シリーズの家族たち。正当な続編である同作では、彼ら家族に起きた悲劇と、隠されたレザーフェイスの血縁の秘密が描かれる。

 もちろん見どころは3Dで迫るチェーンソーによる容赦ない殺りくだが、今回レザーフェイスの暴力には、タイトルにもあるように一家の「逆襲」の意味合いも加わっている。前半こそバカンスの若者を襲う恐怖を追ったオーソドックスな物語が進行するが、後半は意外なほど血縁にフォーカスしたドラマが展開。往年のファンにとっては、長年の家族の秘密に触れる貴重な一本となるだろう。

 犠牲者の痛みに無頓着で、人を傷つけることに快楽さえ覚えるホラー映画の家族たち。その行いは決して許されるものではないが、異常なまでに親族を大切にする姿勢は、感動が売り物のファミリードラマよりも家族のつながりの強さを感じさせる。ホラー真っ盛り、そして実家への帰省シーズンでもある夏を迎え、ぜひ一連の作品で震え上がりながら、家族とは何なのかに、思いをめぐらせていただきたい。

映画『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』は7月13日より全国公開予定


伝説の映画、正統なる続編が誕生!
(C) 2013 TWISTED CHAINSAW PROPERTIES,INC. AND NU IMAGE,INC.

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(C) 2013 TWISTED CHAINSAW PROPERTIES,INC. AND NU IMAGE,INC.

文・構成:シネマトゥデイ編集部 入倉功一

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