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大泉洋&安藤裕子&染谷将太
『ぶどうのなみだ』
北海道を愛してもらいたい
『ぶどうのなみだ』大泉洋&安藤裕子&染谷将太 単独インタビュー

取材・文:進藤良彦 写真:杉映貴子

北海道・空知(そらち)のワイナリーを舞台に、年の離れた兄弟と彼らの前に現れた一人の女性との出会いをつづった映画『ぶどうのなみだ』。過去の心の傷を抱えた寡黙な兄・アオを地元・北海道をこよなく愛する大泉洋、そんな兄を静かに見守る弟・ロクを若手実力派の染谷将太、兄弟の生活に新風を吹き込む旅人の女性・エリカをシンガー・ソングライターの安藤裕子がそれぞれ演じている。同じく北海道が舞台の『しあわせのパン』でも三島有紀子監督と組んだ大泉、そして共演者の二人が、心温まる本作に込めた思いを語った。

■神経質でストイックな男

Q:この映画の出演オファーを受けて、どんな部分に惹(ひ)かれたのかをお聞かせください。大泉さんは、企画から関わっていらっしゃるんでしょうか?

大泉洋(以下、大泉):そうですね。もともと、事務所の社長(本作の企画者でもある鈴井亜由美)がプロデュースした映画なので、僕はずいぶん早い段階からこの企画について聞いていました。『しあわせのパン』でもご一緒した三島(有紀子)監督からメールが来まして、「今度の役はとてもストイックでナイーブな男なので、頑張ってください」と。『しあわせのパン』の時も、奥さんをずっと見守っている優しい寡黙な男でしたけど、「それよりもっと寡黙です」みたいなメールで(笑)、どんな人間なんだろうなと思ったのが第一印象です。アオのような神経質でストイックな男は今まであまり演じたことがなかったので、そこは魅力的でしたね。

Q:あまり演じてこなかった役柄であるとすれば、そこで不安は感じませんでしたか?

大泉:不安はなかったですね。それよりは、果たして(実年齢で19歳違う)染谷くんと兄弟に見えるのかなというのが、やや不安ではありました(笑)。

Q:安藤さんは、お芝居そのものが本当に久しぶりなんですよね。

安藤裕子(以下、安藤):こんなふうに演技をするのは、ほとんど初めてです。

Q:出演を迷われたりはしなかったですか?

安藤:ここ数年、自分の中でもいろんなことにチャレンジしたいなという心持ちになっていて、お声掛けいただいた時は、ぜひやりたいと思いました。もっと以前だったら、きっとおじけづいたり、「そんなの無理だよ」と言っていたと思うんですけど、死ぬまでにもっといろんなことをやってみたいなと思っていた時期だったんです。

Q:染谷さんはいかがでしたか?

染谷将太(以下、染谷):兄弟がいて、そこに一人の女性がやって来て物語が生まれるというその関係性が、まず面白くてすてきだなと思いました。北海道という土地があって、ワイン作りという土台があって、そんな環境の中で描かれる三人の関係がどんな映画になるのかが、自分でもとても楽しみだったんです。実際、演じていても先が読めない、何が起きるかわからなくて、それがすごく刺激的で面白かったですね。

■年の離れた兄弟が成立した理由

Q:それぞれのキャラクターを演じる上で、意識された点はどんなところでしたか?

大泉:アオは、とても独り善がりで勝手な男なので、ちゃんとそういう男に見えればいいなと思っていましたね。自分のやりたいことを一生懸命やっているんだけれども、自分一人で頑張って、自分一人で苦悩しているような男なので、他人の気持ちをあまり理解できない。独り善がりで乱暴な男でいいんだと思って演じていました。

Q:先ほど「兄弟に見えるかな」というお話もありましたが、その点について何か考えられましたか?

大泉:最終的には兄弟っぽく見えたような気がしましたけどね、僕は(笑)。

染谷:まあ、年齢の問題だったり造形の問題だったりは考えてどうにかできることではないので、僕はあまり気にせず、素直に「お兄さん」という気持ちで向かっていけば大丈夫かなと思っていました。この台本だったら普通に成立するだろうなという、根拠のない自信もありましたね(笑)。

大泉:染谷くんは年は若いんですけど、非常に内面が落ち着いているというか、現場で「若年寄」と呼ばれている人なので(笑)、彼の精神的な年齢の高さが、僕との距離をぐっと近づけてくれたのかなと思います。

安藤:むしろ追い越して(笑)。

大泉:そうそう。精神的な支えとしては、僕は染谷くんを兄のように慕っていましたから(笑)。アオという男はすごく子供じみたところもあるので、ロクのほうがよっぽど大人だなと思いましたね。

■染谷は殺人鬼の目をしている!?

Q:染谷さんは、ロクを演じる上で何か意識されたことはありましたか?

染谷:意識したというか……現場で洋さんによく言われたんですけど、例えば、酔っぱらったアオをロクが引きずっていくシーンがあるんですよ。その時に「自分で殺した死体を引きずっているようにしか見えない」とか。

安藤:(大笑い)

染谷:ふとしたシーンでも、僕が「兄さん!」って怒ると「殺される気がする」とか言われて。

安藤:「殺人鬼の目をしている」って(笑)。

染谷:生まれつきの顔なので、言われても困るんですけど(笑)。

大泉:染谷くんはそういう常軌を逸した役が多いんですよ。それがおかしくて、現場でいじって遊んでいましたね。ロクは最終的には俺たちを皆殺しにするんだろう、って(笑)。

安藤:きれいなぶどう畑が血まみれになって。

染谷:そんなふうによくいじられていたので、雑念を入れないように(笑)、純粋にロクという役を演じようと意識していました。

Q:安藤さんはいかがですか?

安藤:大泉さんも染谷くんも、普段皆さんが抱いているパブリックイメージとは真逆の役柄だったなと思うんですけど、わたしが演じたエリカもそうだったんですよね。大泉さんはいつもみんなを笑わせることに力を注いでいるイメージがあるけれども、アオは寡黙で男らしくて、大泉さんのイケメンっぷりが投影されている。染谷くんは今言ったみたいに殺人鬼のにおいがするし(笑)、大人っぽい印象だけど、ロクはすごくキュートで、染谷くんの年齢相応のかわいらしい一面がすごく出ている。三島監督が、二人のそういう違った一面をすごく上手に切り取っていると思うんです。普段のわたしはどちらかというとアオに近い性格かなと思っていて、割と偏屈だし、ものづくりをしているのでどうしても内へ内へ入り込んでしまうんですけど、エリカはもっと大きく構えていて、外へ外へ世界を広げていく。きちんと地に足を着けて立っている人なので、そういう全く違う自分になれたのは、とても楽しかったです。

■北海道の国王・大泉洋

Q:北海道の印象はいかがでしたか?

安藤:とにかく広い(笑)。ものすごい大都会の札幌から小一時間離れただけのところに、あんな大自然が広がっているなんて、何と振り幅の広い土地だろうと思いました。

染谷:僕は北海道に行くこと自体が初めてだったんですけど、景色はもちろんきれいですし、食べ物はおいしいし、人も温かくて、最高でしたね。最後は東京に帰るのが寂しかったです。

Q:大泉さんは『しあわせのパン』に続いて、この北海道発信の映画で主演されましたが、何か思うところはありますか?

大泉:『しあわせのパン』の時も舞台になった洞爺湖町の月浦の美しい風景だったり、かわいらしい小物とか、何より題材のパンを皆さんに愛していただいたわけですけれども、今回はそれが地元のワインということで、舞台になった空知地方には素晴らしいワイナリーが本当にたくさんあるんです。この10年で北海道のワインはどんどんおいしくなってきていますので、この映画を観た多くの人に北海道のワインを愛していただいて、北海道に行ってみたいと思ってくださる方がますます増えるといいな、という思いがあります。すてきな映画に出たい、すてきな役を演じたい、という気持ちはいつもあるんですけど、北海道で映画を撮ると、僕の場合はもう一つ、北海道を愛してもらいたいという気持ちがどうしても乗っかってしまうんですよね。

染谷:僕が初めての北海道で洋さんと一緒にいられたっていうのは、これはなかなかすごいことですよね。

大泉:なかなかいいことを言ってくれるじゃないか。

安藤:「大泉洋」のネームバリューで、いろんなことも体験できるもんね。

大泉:やっぱり、国王と一緒に過ごしたようなもんだから(笑)。

染谷:かなり自慢できる経験になりました。

大泉:まあ、そこまでのことじゃないとは思うけど(笑)。

映画『ぶどうのなみだ』は、現実と幻想の間をたゆたうような時間と空間を描いている。アオとロク、そしてエリカが、安藤の言う通り三人のパブリックイメージとはそれぞれ真逆の役柄であるとすれば、演じる大泉と染谷、安藤もまた自身の現実と役柄の幻想を巧みに行き来して、本作を成功に導いたのであろう。地元・北海道への思いを熱く語る大泉に、実は筆者が札幌出身であることを告げると、大泉は「じゃあ、ダメだ。僕が国王じゃないことバレてるわ」と笑った。

【大泉洋】ヘアメイク西岡達也(ビタミンズ) スタイリスト:九(Yolken)
【染谷将太】ヘアメイク:AMANO スタイリスト:清水奈緒美

(C) 2014『ぶどうのなみだ』製作委員会

映画『ぶどうのなみだ』は北海道先行公開中、10月11日より全国公開

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