シネマトゥデイ

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小島監督

■アメリカ生まれの特撮ヒーロー!「フジヤマイチバン」の撮影現場に潜入!

 日本の特撮の流れをくむ『フジヤマイチバン』というインデペンデント映画が、米ロサンゼルスで製作された。日本の特撮物はアメリカでも人気が高く、これまで、「パワーレンジャー」シリーズや、「仮面ライダー」を基にした「マスクド・ライダー」といった番組が、大手ネットワークで製作されてきた。しかし、それがインディーズ作品として製作されるというのは聞いたことがない。撮影現場を訪ねた。(取材・文:細谷佳史)

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現場はインディー映画らしく、数人の役者と数人のスタッフのみで撮影が進められていた。役者がスタッフを兼任したり、ハリウッドの大作と違い、みんなで作品を作っているといった雰囲気が伝わってきた。

 ロケ場所はロサンゼルス空港の南、日系企業が数多く集まっているトーランス市にある日系の幼稚園の駐車場だった。しかし、その場所に近づいても、撮影現場でよく目にするトレーラーやトラックなどが見当たらず、本当に撮影が行われているのか少々不安に。指定された駐車場に車を停め、幼稚園の裏に人影を見つけて近づくと、なんと、日本の戦隊物などでもおなじみの、マスクとスーツで武装したヒーローの姿を発見。本当にロサンゼルスで、アメリカの特撮インディーズ作品が作られていたのだ。本作のクリエイターで、監督をはじめ、製作、脚本、出演と、一人でいくつもの仕事を兼任し大忙しのミチ・ヤマト監督に、撮影の合間を縫って、『フジヤマイチバン』とは何なのか、ストーリーや製作に至る経緯などを聞いた。

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監督のミチさん自らドリーを押す場面も。ちなみにこのドリーもハンドメイドだそうだ。by細谷

■『フジヤマイチバン』が生まれた経緯

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太陽の戦士、フジヤマイチバン。マスクやスーツのデザインは日本の鎧をベースにしている。

 もともと、日本で大野剣友会というアクションチームに所属していたヤマト監督。大野剣友会といえば、「仮面ライダー」「ゴレンジャー」などのアクションを手掛けた殺陣集団だ。そこでの経験を経てアメリカに渡ったヤマト監督は、ハリウッド版「仮面ライダー」の「マスクド・ライダー」のオーディションに受かったことを皮切りに、東映系の作品を基にした番組を中心に、およそ100話分の撮影にアクション監督として関わった。

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ミチ・ヤマト監督「アメリカに来て大変だったことは、やっぱり文化や言葉の違いですね。僕は3日で英語を覚えられると思って来ましたけど、大間違いでした(笑)」by細谷

 その後は、ハリウッド映画『ウルヴァリン:SAMURAI』『バベル』『硫黄島からの手紙』『スピード・レーサー』『47RONIN』などにボイスオーバー俳優として参加。「そして、しばらくたってからヒーロー物をハリウッドでやらないかという話が出てきたんです。でも、『仮面ライダー』のようなものはすでにやっていましたし、同じものをやっても面白くないなと感じていました。それで日本文化を伝承できるヒーローをやろうということになり、(デザイン的に)よろいをベースにしたヒーローを立ち上げようと決めました」と振り返った。

■映像作品の前に雑誌からプロジェクトをスタート!

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フジヤマイチバンと一緒に悪と戦うニンジャイチバン。by細谷

 映像作品を作るにあたり、助走期間が必要だと考えたというヤマト監督。そのために最初は雑誌を出版し、スポンサー探しに奔走した。「2011年の12月に、その1巻目を自社で1万部ぐらい、日系の幼稚園、学校、お店向けに出版しました。僕自身が日本で、『てれびくん』という雑誌で編集ライターをしていたことも役立ちましたね。次にヒーローたちのコスチュームを製作し、日系のストアなどでステージショーをやることにしたのですが、去年の12月に『フジヤマイチバン・フェスティバル』というショーを日系のホテルでやった時に1,000人ぐらいのファンが来てくれた。それで、もともとの狙いだった映画をやることに決めたんです」

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フジヤマイチバンとサクライチバン。by細谷

 映画は90分ほどのボリュームになるといい、監督は「8分ごとにストーリーが決まっていて、毎週、1話8分のストーリーをウェブにアップしていき、3か月続けて1シーズンになる、というスタイルです。その後、それらのストーリーを1本にまとめ、新しいシーンなどを足して映画版を作る予定にしています」と意気込む。

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ニンジャイチバンに変身するエリック役のハージー・ガン(画面左)、サクライチバンに変身するサクラ役のユウキ・ヤマギワ(画面中央)、主人公フジヤマイチバンに変身するサン役のアダム・フォレスト(画面右)。by細谷

■万国共通の悪が敵!

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悪役ダーク・ハングリー

 作品のターゲットは、全世界の3歳から7歳の子供たちと特撮ファン。ヤマト監督は「そういったことを踏まえ、世界万国共通の悪とは何か考えて、ストーリーを作っていきました。今の世の中は何が善くて何が悪いかといったことがとてもあやふやですよね。テロリストは悪だけど、彼らにも思想があるわけです。ヒーロー物はまず悪から考えないと生まれません。そして、今の世の中で一番の悪を考えたら、やはり自然破壊しかないんです。自然破壊が悪なら、それを守る人がヒーローという考えですね」と語る。

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悪役ダーク・エング(中央)とロックメンたち。

 その上で「そういったことを宇宙的に考えると、ダーク・マターという暗黒物質があるのがわかって。本当に現存するかもしれないといわれている物質なんですよ。ダーク・マターは光を反射しない物質ですが、必要不可欠なもので、あっては困るけど、ないと宇宙が滅びるというもの。それでその物質が悪意を持ち、宇宙を覆うという設定を作り、それを敵にしました。彼らは光を反射しないので、それが地球を覆ったら地球が滅びてしまうんですね。暗黒になってしまいますから。そうなると究極の悪です。そしてそれを倒すのが太陽や光というものになり、フジヤマイチバンを太陽の戦士にしました」

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フジヤマイチバンVSダーク・ハングリー

■作品に日本人らしさを反映!

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ミチ・ヤマト監督(中央)自身もツルギ先生役で出演

 そんなヤマト監督が、作品づくりで外せないのは、「日本人であるということ」だと語る。「僕は、西洋圏にアピールできるものは、ニンジャ、サムライ、ゲイシャだと思っています。20年間アメリカに住んで、そのことを確信しました。日本人は意識していませんが、海外の人がリスペクトしているのは日本の武士道なんです。死の中に生があるといった神秘的なものが個性になるわけです。ステレオタイプは駄目だと言う人もいますが、僕はそれが必殺技だと思っています。だからそれを持ったヒーローしかないと思いました。それで武士道の精神を持った太陽の戦士が、悪意を持ったダーク・マターと戦うという物語が生まれたわけです。こういった発想は、僕が日本にいたら絶対に出てこなかったものですね」

■特撮ヒーロー物は日本文化の象徴!

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フジヤマイチバンVSロックメン

 さらに「『秘密戦隊ゴレンジャー』もそうでしたが、こういったヒーロー物は、歌舞伎が基になっているんです」というヤマト監督。「フジヤマイチバンの変身は、 (中村錦之助主演『源氏九郎颯爽記』3部作の)二刀流の構えから来ていますしね。西洋にはこういった仮面をかぶったヒーローはあまりいません。そういった特徴は、能や人形浄瑠璃から来ている。『仮面ライダー』の精神も武士道や自己犠牲なんです。人から称賛されないにもかかわらず、仮面をかぶって良いことをするというのはね。そしてアクションはチャンバラ、殺陣なんです。日本のヒーロー物はまさに日本文化の権化。そういったことをこちらでやれたらと思って、僕はアメリカに来ました。日本語だと日本でしかやれないですが、英語でやれば世界中の人に向けてやることができますしね」と真摯(しんし)に語った。

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グリーンスクリーンを使った特撮シーンも見所だ

 映像イベントを経て、いよいよウェブでの配信がスタートした『フジヤマイチバン』。ミチ・ヤマト監督は、今後この作品をパイロット版とし、アメリカのネットワークに売り込むことも視野に入れているという。日本人にしか作れないアメリカ発の新たな戦隊ヒーロー物が、今後世界にどう広がっていくか、大いに注目したい。


『フジヤマイチバン』 オフィシャルサイト
『フジヤマイチバン』ウェブエピソード

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