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江口洋介&本木雅弘
『天空の蜂』
テーマが深過ぎて、話すとつい興奮してしまう
『天空の蜂』江口洋介&本木雅弘 単独インタビュー

取材・文:斉藤博昭 写真:金井尭子

自衛隊の巨大ヘリが何者かに奪われ、原子力発電所に落下する時が刻一刻と迫る! 日本全土が危機に陥るショッキングな設定で、1995年に発表された東野圭吾の小説「天空の蜂」がついに映画化された。ヘリの設計士で、息子がヘリ内に取り残される湯原を演じるのは江口洋介。そして発電所の設計士・三島役に本木雅弘。いかなる役でもカリスマ性を放ってきた彼らが、カウントダウンの危機に立ち向かう2人の男の壮絶な運命を熱演する。意外にも今回、初共演となった二人が、互いの演技や現場でのエピソード、本作のテーマを語った。

■「予言書」のような原作に驚いた

Q:作品のどんな部分に惹(ひ)かれて、出演を決意したのでしょうか?

江口洋介(以下、江口):3.11(東日本大震災)を経験する前と後では、捉え方が変わっていたと思います。脚本に出てくる「沈黙する群衆」や「原子炉は、人類に対してほほ笑むこともあれば、牙をむくこともある」といったセリフを読み、まさに蜂に刺されたような感覚になりましたね。

本木雅弘(以下、本木):あのセリフを、原作の東野圭吾さんは1995年に書いていたんですよね。まるで「予言書」です。恥ずかしながら、東野さんの作品はこれまで読んだことがなく、初めて読んだのが、文庫本で3.5センチも厚みもある「天空の蜂」で……(笑)。僕自身、何か大きな事件があると、自分の立ち位置を計りかねる「沈黙の群衆」だったことに気付かされたんです。だから自分への戒めも含め、本作に向き合おうと決意しました。

江口:1995年と現在を比べると、社会の状況は違うけれど、原作には普遍的テーマがある。この作品は、親子の物語に日本の原子力政策も絡むけど、アクション映画としても成り立っている。

本木:そう。堤(幸彦)監督が緊迫感のあるエンターテインメントに仕立ててくれました。

■表と裏の顔を使い分けている!?

Q:お二人が演じたキャラクターは対照的でしたね。

江口:湯原の役は誰でもできるけど、三島は、本木くんが演じてこそ、一つの形になったと思う。三島はどこか危うい部分があるから、そこを強調すると映画としても重くなり過ぎてしまうし……。

本木:いや、僕にしてみれば、湯原の方が絶対に難しい。三島はエキセントリックにしたり、淡々と演じたり、いろいろな危うさの表現が可能な役なので。湯原は、家族関係と素直に向き合い、懸命に過ちを償おうとする。そういう真っすぐさは、江口さんじゃないと無理。どんなに熱く演じてもリアリティーがあるんですよ。「このセリフ、江口洋介なら言うかも」って。

江口:そうかな。自分では客観的に判断できないけど……。

本木:だって江口さんは、普段から表の顔と裏の顔を使い分けていないでしょ?

江口:まぁ、使い分けていないかな(笑)。

本木:海や大自然とも向き合っている人だからね。僕はその勇気は一生、持てないと思う(笑)。俳優は自分をさらしてナンボの仕事だけど、身内に見せる顔でも、リアルなときと、作ったリアルがあるくらい。

江口:僕は家族にも仕事のことまで包み隠さず話しているからね。隠すことが、悪い影響を及ぼす気がしない? だから何でもオープンにしていますね。

本木:今回、そんな両極の二人が組めたのが作品にも有効だったんですよ。言ってみれば「黄金比」のごとく調和したと(笑)。

江口:確かに本木くんのシーンの捉え方にブレがなかったので、作ってきたものをぶつけ合うことができた。そんな現場は、すごくやりやすかった。

■監督の「大オッケー」がもらいたかった

Q:巨大ヘリが原子力発電所に落下するかもしれないという緊迫の展開です。タイムリミットが迫る攻防戦で演技に苦労は?

本木:そのあおられる中、専門用語が飛び交っているんです。それを一つ一つ間違えずに言うだけで精いっぱいでした(笑)。でもそんな状況で(共演者の)佐藤二朗さんなんて、滑舌がいい上に、演技にユーモアも盛り込んでいた。その余裕がうらやましかったですね。

江口:いやいや、本木くんと佐藤さんじゃ、キャラが違うでしょう?

本木:でも佐藤さんが演じた後、監督は「大オッケー」って言うんですよ。僕は「大」をつけてもらえなかった。「そんなに欲しいなら」と一度だけサービスでつけてもらったけど(笑)。そのくらいセリフが複雑でした。

江口:僕も「大オッケー」は言われていない(笑)。

■いつか子供たちとも本作を語り合いたい

Q:本作では親子の絆と突発的な大事件が絡んでいきます。ご自身の親子関係と重なる部分は? 本木さんは、長女の伽羅さんも女優として成長していますが……。

本木:義母(樹木希林)と共演した『あん』は、娘が積極的に出演したわけでもないんです。しかし、『天空の蜂』の物語のように、人生には思いがけない出来事は起こる。なるべくざまざまな経験をした方が、感受性も育つと思ってやってもらいました。

江口:4年前の原発の件は、うちの子供たちもニュースで見て、衝撃を受けていましたし、当時は彼らに明確な答えを提示できなくて、その葛藤が湯原の心境にも重なった。だから将来、子供たちがこの『天空の蜂』を観たとき、いろいろな話をしたい。普段そういう話はしないから、いい機会になるんじゃないかな。

本木:その意味では、今回、脚本の楠野一郎さんの言葉が思い出されます。「大人には真正面から観てもらい、子供には『怪獣映画』として楽しんでもらえれば」と。巨大ヘリも、原発も、人間の欲望が生み出し、暴走した「怪獣」的な要素がある。楠野さんは「ゴジラ」のテーマを聴きながら脚本を執筆したそうです。怪獣映画として感覚的に観た子供たちも、何年後かに、さまざまなテーマを理解するでしょうと。

Q:では最後に、本作で最も伝えたいテーマは?

江口:この国がどんな方向に向かうのか、今いろいろと論議されている。そんな時代に、家族にどういう希望を持たせられるかが伝わればいいですね。湯原のクライマックスのセリフには、そんな思いを込めました。

本木:原発そのものの是非を問うだけが本作のテーマじゃない。世の中、予期せぬことが起こる。それに人間は、いや自分はどう対処するのか? 誰かに責任を押し付けるのか? 人間が、自分が守るべきものは何なのか? ってすみません……テーマの話になると、つい興奮してあちこちに広がっちゃって。

江口:いやー、本木くんは実は熱いね。まぁ、そういう熱を現場で受け止めたから、僕も熱く演じられたんですけどね(笑)。

共に主役クラスで、ほぼ同世代。そんな二大スターが共演する場合、どちらかが相手に対して気兼ねをするパターンも多いが、江口洋介と本木雅弘の場合は、互いに自分とは違う個性を発見し、それを心から喜んでいる印象だった。性格や役へのアプローチもまったく対照的な二人。しかし、だからこそ本作には奇跡のような化学反応が起こったのかもしれない。それぞれが作品に秘めた熱い思いが、スクリーンから伝わってくるはずだ。

映画『天空の蜂』は9月12日より全国公開

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