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妻夫木聡&蒼井優
『家族はつらいよ』
キスに至らない二人の距離が感じいい
『家族はつらいよ』妻夫木聡&蒼井優 単独インタビュー

取材・文:高山亜紀 写真:斉藤美春

国民的映画『男はつらいよ』シリーズの終了から20年。山田洋次監督が久々に手掛けた喜劇『家族はつらいよ』には、なんと『東京家族』で一家を演じた8人の出演者全員がそのまま再集結した。前作に引き続き、次男と結婚間近の恋人を演じたのは妻夫木聡と蒼井優。知り合って約10年。長年の共演者らしい息の合ったコンビぶりを発揮した二人が、山田組でしか味わえない現場の空気や独特な演出方法など、巨匠ならではのエピソードを明かした。

■『東京家族』の撮影現場から生まれた物語

Q:企画を聞いた時はどう思いましたか。

妻夫木聡(以下、妻夫木):山田さんが久しぶりに喜劇に戻ってくれたこと、それに現場で、冗談で話していたことが形になったこともうれしかったです。『東京家族』の現場で「続編を」みたいなことをふざけながら、みんなで話していたんです。優ちゃんの知り合いの家族の話をしていたら、監督がツボにハマったみたいで、それを起点に話が膨らんでいって、1カット撮るごとに「こういうのはどうだい?」って(笑)。

蒼井優(以下、蒼井):みんなで話を付け足していって、ストーリーを繋げて……。『東京家族』の時はただの楽しみでした。それを最終的に山田さんがまとめて、脚本に書き上げてくれたんです。お仕事させていただいた監督にまたオファーをもらえるのはうれしいことだけど、8人でもらえる経験って私にはなくて、「このメンバーでまたやりましょう」ってことが私はうれしかったです。自分だけ、代えられていてもすごく嫌だもん(笑)。

妻夫木:そうだよね。役柄は死んでないのに呼ばれてないとかね(笑)。

Q:それだけ、『東京家族』は特別だったんでしょうね。

妻夫木:もちろん特別じゃない現場は存在しませんが、山田さんの作品に出演できることは、それだけで嬉しいし光栄なこと。それがまたこうやって同じキャストで題材を変えて、違う映画を作るって監督が思ってくださったことが何より幸せです。

■意外!喜劇の現場は緊張感が増した

Q:今回は喜劇ですが、現場の雰囲気は違いましたか。

妻夫木:山田さんの作品は常にいい緊張感のなかでやれてはいますけど、笑いって本当に表現が難しいと思うんです。山田さんのなかにある計算式で、僕たちは答えをはっきり出していかないといけない。たぶん、ちょっとのズレで笑えるものも笑えなくなってしまうし、僕らが「これ面白いんじゃないの?」って感じで、なんとなくやっても、絶対に面白いものには仕上がらない。山田さんの求めることにいつでも的確に応えられるようにモチベーションを保たないといけませんでした。

Q:コメディーではなく喜劇という難しさもあるのでしょうか。

妻夫木:その違いはよくわからないけど、僕が思う、山田さんの喜劇は、「人間が実際に生活していくなかで、起こり得ることを映画で表現することによって、笑いを与えるもの」だと思うんです。だから、どこか心に温かみみたいなものを生んでくれる。寅さんもそうだけど、「バカだなぁ。だから、憎めないんだよな」となる、愛のある笑い。だから、山田さんの喜劇には多くの人が共感してくれるんだろうなって、思います。

蒼井:山田作品の笑いって、その役者さんが面白いのではなく、役が面白いというのが特徴だと思っていて、だからこそ、今回は特に一つの駒になることを徹底して求められていたような気がします。厳しくて、なかなかOKが出なくて、現場は前回より緊張感が増しました。映画のトーンとは全然違う空気です。それでも、山田さんの喜劇の現場に立ち会えたっていうのはすごいこと。こうやってこんな空気のなかで、山田さんの笑いって作り出されているんだなって、感動していました。

Q:蒼井さんは三作目ですが、もう慣れましたか。

蒼井:カットの部分しか撮影しないから、感情的に泣くシーンでも、「用意、はい」で、泣かなきゃならないんです。最初の『おとうと』の時はそんな山田組の撮り方に慣れなくて、「あんなに出たかった山田さんの作品なのに、もう二度と呼ばれないな」ってすごく落ち込みました。そしたら『東京家族』が来て、心構えができました。今回はこんな、いい子の役。ほかではオファーされないような役柄だから、山田さんの私のイメージはそのままでいてほしいなと思いますね。『おとうと』の時は照れがあったのですが、だんだんとなじめるようになってきました。

妻夫木:『おとうと』から観ていると、嘘の度合いが増えている気がする。だんだん、おしとやかな健気な女になってきているよね。「ごきげんよう」とか言っちゃいそうだもん(笑)。

蒼井:言いたい! 次の作品では書いてもらおう。「ごめんあそばせ」とか(笑)。

■キスも結婚もご法度 二人の限界はおでこ合わせ

Q:『東京家族』とは微妙に違いますが、次男が彼女を両親に紹介するなど、シチュエーションは同じですね。

妻夫木:僕たち、特に優ちゃんは、「なんか感じがいいんだよね」って言われているんです。『東京家族』の台詞にもあるくらいなんですが、「感じがいい」っていうのはすごく大切なこと。みんなが見て、祝福してあげたくなるような二人を象徴的に描きたいのかな。今回の『家族はつらいよ』でも、そういうにおいがしました。子どもっぽくはないし、大人過ぎもしない、なんか応援したくなる感じ。

蒼井:30歳と35歳の初々しさ(笑)。でも、結婚させてはもらえないんだよね。山田さんの作品では。

妻夫木:そうそう。何回もプロポーズしてるのに。確か、最初の台本には「キスする」って書いてあったんですよ。手をつなぐとか、後ろから抱きしめるとか、抱き合うとかなら、いっぱいあるんだけど、ついにキスかと思ってたら、やっぱりなくなりました。あんまりくっつき過ぎると、未来が見えすぎて初々しさがなくなるんでしょうね。

蒼井:こんなに共演しているのに、一番近かったのがおでこをくっつける(笑)。

Q:それが「感じがいい」秘訣なんでしょうね。

妻夫木:でも、優ちゃんだから何も気を遣わず、できていることもあり、かなり、助けられてはいます。人と人との距離感って監督が作ってくれるから、どうにでもなる気はするけど、優ちゃんに至っては何年も一緒にいるような感覚がしてる。楽というと変ですけど、本当に何も構えなくていいんです。

蒼井:妻夫木君とお芝居するときは「あ、今回はこんな感じなんだ」って、一緒に楽しめるんです。役者同士の距離感はどうしても芝居では埋められない。埋めようとしても、「初めまして」の妻夫木君とお芝居するのと、いまの付き合いの長さで芝居するのとでは、絶対にいまの方がシード権、取ってますから。

Q:山田組以外で違う関係の役柄になったら、どうなるんでしょう。

妻夫木:それこそ、『失楽園』みたいな役をやることになったら、俺、できるのかな、そんな大人な恋(笑)。

蒼井:ちょっとずつ、笑いをこらえて、また喜劇になっちゃいそうだね。

Q:改めて、家族について思うことはありましたか。

妻夫木:日頃から考えているので、特にないんですが、ここで描かれている家族ってガタガタなんです。だから、面白くもあり、気づかされることもある。みんなそうだと思うんだけど、完璧な家族はいない。うちもガタガタでいいんだなって、ほっとさせてくれる映画です。

蒼井:自分が家族に腹が立っていることでも、他人に言われるとカチンとくるみたいな、「わかる、わかる」っていう家族あるあるが、この作品にはたくさんあります。私も毎日、家族のことを考えているから、改めてどうということはないけれど、このタイトルにすべてが詰め込まれていると思います。本当に大好きでどれだけ仲のいい家族でも、あるいはそうでなくても、家族はつらいですよ。観た人はきっと、楽になれると思います。

スチール撮影中もにこやかに言葉を交わし、山田監督のいう「感じがいい」という表現がぴったりだった二人。近づき過ぎず、離れ過ぎず、周囲も安心して見ていられる、お似合い具合。微笑ましいような初々しさは、まさに『家族はつらいよ』のカップルそのものである。とはいえ、この関係がいつまでも続くことを願う一方、演技派の二人だけにイメージをがらりと変える、全然違った間柄も見てみたいような気がしてくるから悩ましい。

映画『家族はつらいよ』は3月12日より全国公開

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