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ラロ保釈の余波か…災い転じて福となす!?

今週のベター・コール・ソウル

キム
第4話を監督したキム役のレイ・シーホーン。Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 怒涛の展開&茫然自失の第3話から一転、第4話「ピンチはチャンス(Hit and Run)」は本来のシリーズらしいスローペースで、表面的にはものがあまり動いていないようでもあり、コミカルなタッチもあり。しかし、水面下で進行しているあれやこれやの不穏さが全編に漂い、嵐の前の静けさのような印象もある回だ。このエピソードを監督したキム役のレイ・シーホーン。堅実な手腕を発揮してテレビドラマ監督デビューを飾った。(文・今祥枝)

※ご注意 この記事は「ベター・コール・ソウル」シーズン6についてのネタバレが含まれる内容となります。視聴後にお読みいただくことをおすすめします。

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今週のベター・コール・ソウル~シーズン6第4話

 意表をつくアバンタイトルは本シリーズの楽しみの一つだが、今回は The Dreamliners の「Best Things in Life」の陽気な楽曲に乗って、中年カップルのライマン(演じるカーク・ボヴィルジョニ・ボヴィルは実際に夫婦である)が自転車で美しい郊外の街を走るほのぼのムードで幕開け。いかにも平和的でよくいるタイプの彼らに似合わず、帰宅するとそこには複数のモニターの前に陣取る男の姿が。モニターには家の玄関の番地の1213が映し出されて、マフィアのボス・ガス(ジャンカルロ・エスポジート)の家を監視しているとわかる。

 このアバンタイトルは後に、サラマンカ・ファミリーのラロ(トニー・ダルトン)が暗殺されず生きていると確信するガスが報復に対する警戒態勢をMAXに引き上げ、部下たちを警護のため配置したものと判明する。ガスは防弾チョッキと足首にマジックテープで銃を固定するといった重装備で、地下トンネルを通って冒頭に登場したライマン夫妻の家へ。毎日18時間、2週間もラロを探しているが何も見つけられない、ガス以外は全員がラロは死んだと思っていると訴える元警官マイク(ジョナサン・バンクス)に向かって、ラロは生きていると断言するガス。もちろんラロは生きている。

ガス
ラロの報復を警戒するガス。Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 命をかけてナチョ(マイケル・マンド)が守り抜いた秘密(ラロ襲撃事件の黒幕がガスという証拠)を探しに行くと第1話で言ったきり、ラロは姿を見せていない。しかし、不在のラロの脅威は静かに不気味にいや増すばかりだ。ガスは「ブレイキング・バッド」に登場するのでこのシリーズを生きのびるわけだが、ラロは「ブレイキング・バッド」には登場しないことから、この2人のサドンデスはガスに利するところがある。問題は、どのようにしてラロはこの物語から退場するのか、この対決が前半の山場になるのか? 脚本家チームの腕の見せどころだろう。

 さて、前後するがタイトル明け、キムとジミー(ボブ・オデンカーク)が着々と進める敵対する弁護士ハワード(パトリック・ファビアン)を薬物中毒だと弁護士クリフ(エド・ベグリー・Jr)に信じ込ませる作戦の描写はコミカルで楽しい。特にハワードがセラピストのカウンセリングを受けている間に、第3話で仕掛けをした鍵でハワードの車ジャガーに乗ったジミーは不自然な日焼けに髪の色や歩き方の癖などハワードを完コピ! そして「ブレイキング・バッド」ファンにはおなじみのルートビア好きな娼婦ウェンディ(ジュリア・ミネシと合流し、オープンカフェでお茶をするキムとクリフの背後で一芝居を打つ。懐かしのウェンディと言えばやはり「ブレイキング・バッド」の主要キャラクターのジェシー・ピンクマン(アーロン・ポール)を連想するが、キムがエルカミーノ・ダイニングルーム(「エルカミーノ」はジェシーが主人公の映画のタイトル『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』)でクライアントと食事をとるシーンでもまたジェシーを思い出す。

ハワード
ジミー、キムと敵対する弁護士ハワード。Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 キムはこのシークエンスで2人の男性に尾行されていることに気づき追い払うが、マイクが接触してきたことで、ラロが死んでいないこと、キムとジミーを含むラロが接触しそうな人々を監視していること、マイクが裁判所の駐車場にいた係員でジミーと砂漠で一緒にいた相手であることなどを知る。マイクにジミーより肝が座っていると言われたキムも、この状況に動揺を隠せない

 第4話は「ブレイキング・バッド」への道筋がさらにぐっと近づいた回でもある。裁判所のスタッフはラロの保釈の件の反発としてジミーを冷遇する一方で、ラロのような刑事事件の弁護士を必要とするクライアントがジミーのもとにわんさと押しかけて来る。その中には「ブレイキング・バッド」のシーズン2に登場したジャンキーのスプージ(デヴィッド・ユリーの姿も(ここでもジェシーとの関連を思い出す)。ウェンディもスプージも、この時点では「ブレイキング・バッド」のときほどには落ちぶれた感はなく、だからこそこの後の展開が愉快なものではないことを思わずにはいられない。このくだりもコミカル色が強めだが、麻薬カルテルとの関係を認めて得たクライアントを前に喜々とするジミーの姿にどこかわびしさも覚える

ジミー
意外なことからジミーのもとにクライアントが押しかけることに。Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 ラストではジミーがキムをソウル・グッドマンの新たな弁護士事務所(そしてソウルの最後の事務所になる)として考えている物件に案内する。「ブレイキング・バッド」で見慣れた、あの事務所だ。もちろん、まだトレードマークの自由の女神のバルーンはないが、ジミーのソウルへの旅路もついにここまで来たかと思わせる幕切れだ。

Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

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