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オリヴァー・ストーン監督を独占取材!「ブッシュは人の痛みを理解できない人間!」

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オリヴァー・ストーン監督のプロダクション・オフィスにて
オリヴァー・ストーン監督のプロダクション・オフィスにて

 今週末に公開される映画『ブッシュ』のPRのためオリヴァー・ストーン監督がサンタモニカにある自身のプロダクション・オフィスで独占インタビューに応じてくれた。

映画『ブッシュ』

 少々お疲れモードの様子で現れたオリヴァー監督だったが、インタビュー用のカウチに腰かけると同時に、「自分の座り位置を見たいから、モニター見せてくれる?」とのリクエスト。さっすが大監督! 自分のインタビューのカメラ位置にも細心の注意を払うのである! インタビュー疲れしてないかと懸念しつつ始めたインタビューだったが、そんな心配は無用だった。しゃべるしゃべるオリヴァー監督。

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 まず、『ブッシュ』を製作するに至った理由を聞いてみた。「どうしても今作らなければ、と思ったんだ。ブッシュはまさに行き過ぎたことをしていたからね。今の経済危機だってブッシュ政権のたまものだよ。だけど、在職中の大統領を題材にした映画を作るのは非常に大変だった」

 オリヴァー監督が『ブッシュ』の製作に着手したときに、ブッシュ大統領は在職中だったばかりかアメリカ国民の非難の的になっていた。映画の資金繰りの際も、「そんな嫌われ者を扱った映画など、誰も観やしない」とアメリカのスタジオは非協力的で見向きもしなかったため、香港資本で製作されたのだという。「でも、この映画を作らなければならないと強く感じていたんだ。歴史はブッシュを忘れてしまうかもしれないけど、彼がこの国に及ぼした影響は残る。こんな男がわれわれの大統領になってしまったという過程をこの映画を通じて残したかった」

 映画の中でも主軸として扱われているが、ジョージ・W・ブッシュは40歳にしてキリスト教にめざめる。それまでは父親のパパ・ブッシュからさんざん小言を言われ酒にだらしなくスポーツもそこそこ、職に就いても長続きせずダメ男の見本のような人間だった。それがいきなりキリスト教再生派となるやいなやとハリキリ出す。

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 この件に関してオリヴァー監督は、「ブッシュは自分のことをキリスト教再生派などと言っているが、完全に履き違えている」と静かに怒りをあらわにした。「彼は結局はいつも、『自分は、自分は……』と言い続けている自分勝手な人間だ。そんなのはキリスト教者ではないはずだ」

 『ブッシュ』では、かなり皮肉タップリにキリスト教とブッシュの結びつきを描いている。「撮影は非常に宗教深いアメリカの地方で行なわれたんだけど、撮影中に『ブッシュ』が描き出すキリスト教に対して非常な反論にあってね」と感慨深げに語るオリヴァー監督。「とにかく実際に撮影が始まってみないとわからないことがたくさんあった。あと公開前に政治の状況がどう変わっていくのかわからないという事実も不安の要素だったね。経済やテロや、とにかく何があるかそれがこの映画にどんな影響をもたらすかがわからなかった。でも、どうしてもブッシュ政権が終わる前にこの映画を公開したかったんだ。この映画が実際の大統領選挙にどんな影響を及ぼしたかは別として、総選挙前には公開できたから良かった」

 ジョージ・W・ブッシュに関するたくさんの本やドキュメンタリーがあるものの、彼の人間としての内面を扱ったのは自分の映画が初めてだ、と語るオリヴァー監督。「(ブッシュは)、深く物事を考えず、毎朝起きて鏡を見ては、『よぉ、元気?』なんて自分に語りかけているような男だ。自分が行なったことに関してそれがどんな結果を招くか、他人にどんな痛みを及ぼすかまったく考えられない人間だよ。映画を作る前も嫌いだったけど、映画を作って増々嫌いになった。でも、そこはわたしもプロだから第三者的な見地にたって映画を製作したつもりだ」

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 どうやら、ジョージ・W・ブッシュを演じたジョシュ・ブローリンもブッシュに対しての悪感情はオリヴァー監督と同じだったようだ。「ジョシュはハリウッドでもリベラル(改革主義者)として名が通っている。だからわたしが彼にブッシュ役を勧めるためにアプローチしたときも、『冗談じゃない。ブッシュみたいな憎らしいヤツを演じるなんてイヤだ』と断られた。でもそのうちにブッシュの役というものに意義を見出してくれた。彼とは本当にいい仕事ができたと思っている。ジョシュのカウボーイ的な部分や彼の人好きする性格がブッシュの表面的な部分に反映されている」

 ここでオリヴァー監督はカウチから乗り出す。「でもね、実際のブッシュは父親の支持を渇望し続けて育った男だ。大統領の父親を持つことは決して簡単なこととは言えない。だけど、ブッシュはテキサス州知事として、そしてプロ野球チームのオーナーとして成功している。そこですべてが終わるべきだったんだ。だけど、そうはいかなかった。映画の第3幕ではブッシュがどのように大統領になりあがったかが描かれている。40歳になるまで父親から散々なことを言われて育った息子が、あっという間に大統領になり、すごいパワーを手にした。それまで父親から『やるな』と言われたことをすべてやってやるという気になったわけだ。イラク戦争がいい例だ。パパ・ブッシュが大統領のときに弱すぎて終わらせられなかったことに決着をつけて自分のすごさを証明してやる、というスタンスでブッシュはイラク戦争に着手したんだ。とにかくブッシュという人間を理解するうえで、父親に対しての引け目という感情は不可欠な要素だと思う」

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 「自分たちのリーダーを選ぶときには非常な注意を払わなければいけない」と語るオリヴァー監督。「リーダーは消えても、その爪跡は歴史に刻まれるからね。日本の若い映画ファンたちにもこの映画を観てほしい」と力説する。「ジョージ・W・ブッシュをよく知らなくてもこの映画を観て、政治というものがどのように動くのか、どうやって国のまつりごとがなされていくのかを知ることができる。そういったことを理解するのは非常に大切なことだ」

 アメリカの大統領システムと異なり、国の最高責任者を直接には選ばない総理大臣制の日本。われわれはアメリカのようにリーダー選びに直接関わらない分、往々にして自国の政治に無頓着になりがちである。だが、自分の国の政治に注意深い関心を払わないと、どんなダメ男が国のリーダーとして選ばれて、その結果としてどんなヒドイことになりえるか、『ブッシュ』を観て改めて考えてみるのもいいかもしれない。(取材・文:神津明美 / Addie Akemi Kohzu)

映画『ブッシュ』は5月16日より角川シネマ新宿ほかにて全国公開

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