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岡本太郎さんの壁画に福島第一原発事故を思わせる絵を描いたアート集団Chim↑Pom、撤去された絵について思うこと

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松江監督にインスピレーションを与えたアート集団Chim↑Pomの卯城竜太
松江監督にインスピレーションを与えたアート集団Chim↑Pomの卯城竜太

 16日、渋谷のユーロスペースで上映中の映画『トーキョードリフター』本編上映後に、緊急トークショー「3.11以後の表現をめぐって」が開催され、アート集団Chim↑Pomの卯城竜太が、岡本太郎さんの壁画にベニヤ板の絵を貼り付けた「LEVEL7 feat.明日の神話」が警察に撤去されたことを振り返り、「人間ってなくなったところを見て、想像するんですよね」とコメントした。この日はほかに松江哲明監督、建築家で作家の坂口恭平、音楽ライターの磯部涼らも出席した。

映画『トーキョードリフター』写真ギャラリー

 アート集団Chim↑Pomといえば、東京・渋谷駅の連絡通路に展示されている岡本太郎さんの巨大壁画「明日の神話」に、福島第一原発事故を思わせる絵を描いたベニヤ板を貼りつけたことで世間を大騒ぎさせたアート集団。プロジェクトのタイトルは「LEVEL7 feat.明日の神話」。壁画に直接絵を描くことはせずに、ベニヤ板を使用するといった配慮がなされていたため、壁画自体に損傷はなく、無傷であったが、彼らの行動に対しては「オリジナリティーがない」「単なるお騒がせ集団」といった意見が多数寄せられた。しかし、中には「快不快問わず、人の心を揺さぶることが芸術の本質なら、これは芸術なのでは?」という声もあったという。

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 そんなChim↑Pomは映像にも力を入れており、「LEVEL7 feat.明日の神話」においても、その過程を映像で記録している。卯城が「警察が(彼らが貼り付けたベニヤ板を)撤去する様子をメンバーが撮影しているんですけど、(節電の影響で画面が)超暗いんですよね。メンバーの林靖高くんが普通に編集した映像をパソコンで送ってくれたんですけど、観てみたら全然真っ暗で見えなかったんです。ですから色はいじりました」と切り出すと、松江監督もYouTubeでChim↑Pomの映像を観たことを振り返り「それを観たときに、渋谷の暗さが気になったんです。Chim↑Pomの映像は、絵をかける(過程を撮る)ことがメインで、その絵を持って渋谷を走っている場面があったんですが、僕は街の暗さが気になった。たぶんそれは、僕が震災の時に韓国にいて、東京にいなかったからなんですよね」とコメント。松江監督自身も、Chim↑Pomが投げかけた問題提起がきっかけとなり、本作のインスピレーションを刺激されたことを明かした。

 そんな本作の舞台は東日本大震災後、2011年5月の東京。街のネオンの灯りは姿をひそめ、ミュージシャン前野健太が、暗く沈む東京で歌いさすらう一夜を記録している。スクリーンには、現在とは違う顔の東京が映し出され、観客はあるはずの灯りを想像しながらスクリーンに対峙(たいじ)することとなる。本作を観たばかりだという卯城も「映画を観ながら、ここはどこなんだろうと考えてしまうんですよね。(居酒屋の)『金の蔵270円』という看板が写っているのを見つけて、ここは渋谷だと気づいたり」と切り出すと、「人間ってなくなったところを見て、想像するんですよね。(撤去された)『LEVEL7 feat. 明日の神話』も今は余白のようになっていて、そこが重要だと思うんです。その想像力ってすごい必要で、たとえば放射能って目に見えるわけではないから、想像するしかない。ただ、想像力ってわりと削がれちゃうというか。目に見えるものばかりが近くにあると、つい手元の明るさを見ちゃうけど、実はもっといろんなことを想像した方がいいんだと(映画を観て)考えましたね」と付け加えた。

 この日のトークショーでは、坂口、磯部も作品に対しての批判も辞さない、歯に衣着せぬコメントを連発する論客。そんな彼らの繰り広げる刺激的なトークに、会場の観客は熱心に耳を傾けていた。(取材・文:壬生智裕)

映画『トーキョードリフター』は渋谷のユーロスペースほかにて公開中

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