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ジブリ新作、津波シーンを残したワケ(1/2)

ジブリ新作、津波シーンを残したワケ
『レッドタートル ある島の物語』より

 無人島に漂着した男のその後の人生を壮大なスケールで描き上げたスタジオジブリ最新作『レッドタートル ある島の物語』。美しくも厳しい自然本来の姿に真正面から対峙した本作には、島ごと呑み込んでしまいそうな津波の猛威もしっかりと描かれている。東日本大震災以前からの企画とはいえ、「津波を入れるべきか自問自答した」というマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督が、鈴木敏夫プロデューサーを交えながら当時の葛藤を語った。

 本作は、『岸辺のふたり』で第73回アカデミー賞短編アニメ映画賞を受賞したヴィット監督がスタジオジブリとタッグを組んで製作した自身初の長編アニメーション映画。吹き荒れる嵐の中、海に投げ出された男が見知らぬ無人島に流れ着く。彼は何度も力を振り絞り島から脱出しようとするが、そのたびに見えない“何か”に操られるように島へと引き戻される。そして、万策尽きた男の前に、一匹の赤いカメが姿を現す。

 シナリオが完成したのは、東日本大震災が起きる2年前。そこには、物語の大切なファクターとして、津波のシーンも描かれていた。「わたしがこの作品で一番伝えたかったのは、人間が自然と真剣に向き合い、尊重する心を持つ、ということ。それを南の島に漂流した男の人生に重ね合わせたかった」と振り返るヴィット監督。「津波は残酷な一面もありますが、自然現象としてある種の美しさも感じていたので、作品にとって不可欠なものでした。ところが2011年、東日本大震災が起こり、わたしの心は激しく動揺しました」と顔を曇らせる。

画像テキスト
自問自答の日々を送ったというヴィット監督

 果たして津波のシーンを残すべきなのだろうか……ヴィット監督は自問自答の日々を送ったそうだが、最終的にその迷いを打ち消し、背中を押してくれたのは、ほかでもないスタジオジブリのスタッフ陣だった。「確かにデリケートな問題ではあるけれど、この映画は自然対人間を描くものではなく、『人間は自然の一部なのだ』ということをテーマにしているので、残すべきだと言っていただいて。この言葉で決心がつきましたね」と述懐する。

 これに対して鈴木は「自然は美しいものでもあり、怖いものでもある。作品に普遍性が求められる以上、その両面をしっかりと描くべきだと思っています。ただ今回は実際に津波が起きて、甚大な被害が出たので、配慮の問題は相当悩みましたが、マイケルは自然現象として尊厳を持ってきちんと描いていた。作品にとっても必要不可欠なシーンだったので、最終的にカットすべきではないという結論に達しました」と説明。


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