黒人と警察の大暴動 史実をドキュメントタッチで描いた『ハート・ロッカー』監督の新作
映画『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー監督の新作『デトロイト(原題) / Detroit』について、キャストのウィル・ポールター、アルギー・スミス、ジョセフ・デビッド=ジョーンズが8月1日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催イベントで語った。
本作は1967年7月にミシガン州デトロイトにある黒人客中心の無免許酒場に警察が踏み込み、黒人と警察の間で起きた大規模な暴動を題材にした作品。モーテルの宿泊客の一人が暴動中に銃を乱発させたことを狙撃手の発砲と勘違いした警察は、同モーテルの宿泊客らを壁に並べて捜査を開始するが、そこに居合わせた警備員は恐怖の現場を目撃する。脚本はビグロー監督作の常連脚本家マーク・ボールが執筆した。
キャスティングの過程についてウィルは「僕の役は人種や警察に関連しているから、オーディションでは映画『セルピコ』や『ミシシッピー・バーニング』にあるシーンを監督の前で演じたんだ。今作を観たらわかると思うんだけど、ドキュメンタリー調で描いていることもあって、オーディションでは脚本は渡されなかったんだ。中には(必要部分だけ渡され)脚本全体を最後まで渡されなかった俳優もいたんだよ。もっとも(出演決定後に)僕が脚本全部を読めたのは、僕の役がこの無秩序な中で警察を指揮するため、全体を読む必要があったからだね」と答えた。
近年も、ミズーリ州ファーガソンで白人警官による黒人青年射殺事件に対する抗議行動が起きるなど似た事件が起きているが、本作での役どころについてジョセフは「この映画のような予期できぬ事態や、現在の不安定な社会状況を含めて考えると、とても意味深い役だったよ。史実を描いたものということでも役の重みが増すしね。実際にこの暴動で犠牲になった人たちに対して、僕らもしっかり向き合う必要があったんだ」と語った。
ラリー役のアルギーは本人に会ったという。「撮影終了近くになってからだったけど、僕は幸運にもラリーに会えたんだ。もし前に会っていたら、彼の動きや振りを真似していただろうね。だからキャスリンはあえて最後の方になってから彼に会わせてくれたんだと思うよ。ラリーは今でもエネルギッシュで、自信に満ちあふれていて……先日のプレミアではステージの上で踊っていたよ! 彼とは3時間くらい話して、彼が警察に殴られた箇所や当時の写真を見せてくれたんだ」と明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)