松山ケンイチ、荻上直子監督の“スパルタ”に苦笑い「口に入れるものへのこだわりがすごい」
俳優の松山ケンイチが30日、新宿ピカデリーで行われた映画『川っぺりムコリッタ』のプレミア上映イベントに登壇。タッグを組んだ荻上直子監督の食事シーンのこだわりに驚いたことを明かした。イベントには共演者のムロツヨシ、満島ひかり、吉岡秀隆、荻上監督も出席した。
本作は、荻上監督が自身で執筆した長編小説を自ら映画化した人間ドラマ。人と関わらずに生きたいと思い北陸の小さな街にやってきた山田(松山)が、クセの強い隣人たちと過ごすことによって、友達でも家族でもない関係性のなかから、新たな「つながり」を見出していく姿が描かれる。
松山は自身が演じた山田という男について「生きていてもしょうがないという気持ちを持ちながら過ごしている人物」と位置付けるが「でも、ご飯を食べたら美味しいと思うし、みんなで食事をすると喜びがある」と普段意識しない身近な幸せを気づける映画だと述べる。
この言葉通り、劇中には食事のシーンが多数登場する。松山は「荻上監督は演技や会話のキャッチボールなどはあまり細かく演出される方ではないのですが、久しぶりにビールを飲むシーンで『うまいなー』みたいな感じでやっていたら『ビールってもっとうまくないですか? もう一回いきましょう』と言うんです」と苦笑い。
さらに、ご飯を食べるシーンでも「もっと盛りますよね」と細かい演出が入ったという。松山は「なんか監督は口に入るものはすごくこだわりがあるなと感じました」と笑うと、司会者からも「『かもめ食堂』など食に関わる作品もありましたね」と荻上監督のこだわりについて触れていた。
山田におせっかいを焼く島田を演じたムロは「いままでのムロツヨシを捨ててください」と荻上監督から言われたと明かす。「40超えて自分なりに役者というものに向き合ってきた人間にはっきり言うんです。人生の天敵現る、という感じ。でも荻上前、荻上後みたいに、役者としての考え方を大きく変えてくれる出会いでした」と感謝を口にした。
松山はそんなムロを見て「どんどんムロさんは静かになっていって、これまで見たことのないようなムロさんでした」と印象を明かす。「現場でもちょっと距離を取っていたんです。ロケの移動中にちょうどお昼の時間があって、二人で一緒に蕎麦屋に行ったんです。そこでサインをお願いされたので、サインと映画のタイトルを書いたのですが、ムロさんは『川っぺりムコリッタ』というところに『ムロリッタ』って書いたんです。よっぽど監督に何かあるんだなと思った」と裏話を披露する。
ムロは「よく“ムロツヨシ”って書いているので“ム”って書くとつい“ロ”って続けちゃうんですよ」とあくまでうっかりミスであることを強調するも、荻上監督は「図々しいよね」と笑いながら突っ込みを入れていた。
最後に松山は「この撮影はずいぶん前だったのですが、いろいろな方が亡くなった時期で、僕たちもどこか引っ張られるところがありました。コミュニケーションがとりづらく身動き取れない人も多いと思いますが、自分自身を救うのには一人では限界がある。山田も周囲のおせっかいで変わった人によって救われた。そういう人たちが実はセーフティーネットなのかもしれません」と視野を広く持つことの大切さを述べていた。(磯部正和)
映画『川っぺりムコリッタ』は9月16日より全国公開