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天国の門 (1981):映画短評

天国の門 (1981)

2013年10月5日公開 216分

天国の門
HEAVEN'S GATE (C) 2013 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
清水 節

「他者」にヘイトの叫びを上げる排他性の国の住人は今こそ必見だ

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 あきらかに当時は、作品評価よりも感情的拒絶だったのだろう。失敗作のレッテルが貼られた“呪われた映画”などという言葉で語り継ぐことに、もうピリオドを打つべきだ。
 
 ベトナム戦争の現実を直視した『ディア・ハンター』に次いでマイケル・チミノが選んだのは、19世紀末ワイオミングで起きたジョンソン群戦争だった。希望にあふれる時代の後に訪れた魔の刻。それは、富裕層が東欧系移民を粛正した酷たらしい事実だ。淡く流麗なヴィルモス・ジグモンドのキャメラが、陰惨な事件の背景を雄弁に語る。公開時1980年というアメリカの時代状況が、人間心理のはらわたから目を背けさせたのだ。30年以上の歳月を経て、チミノ監修による完全版によって、ようやく作品を受け容れられる者も多いはずだ。
 
 では、アメリカ成り立ちまでの黒歴史にすぎないのか。いや、決して対岸の火事ではない。土煙の中の凄絶な戦いは、過去のものですらない。内向きになり、「他者」にあらぬ疑いをかけてヘイトの叫びを上げる排他性が根絶しない限り、地獄への門はいつ何処でも開く。酒瓶片手に傍観するジョン・ハートにならぬために、我々も今まさに直視すべき作品である。

この短評にはネタバレを含んでいます
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