インタビュー

第2弾:渡辺謙

警視庁暴力団対策課の敏腕刑事・片桐役

TOKYO VICE: 渡辺謙

Q:「TOKYO VICE」という作品のどこに興味を持ったのでしょうか?

ヤクザ絡みの警察の話という設定は、最初はありきたりかなと思ったんです。でも、本作はそこに“外国人の新聞記者の視点”という新しさが入っている。

そして、90年代はアナログからデジタルへの過渡期でもありました。テクノロジーだけじゃなくて、社会構造や人間のマインドそのものが変わりゆく、というね。その時代感と視点に、非常に面白さを感じたんです。

TOKYO VICE: 渡辺謙

Q:監督とエグゼクティブ・プロデューサーを務めた巨匠マイケル・マンの印象は?

ロサンゼルスで『コラテラル』(2004・マイケル・マン監督作)を撮影中だったトム(・クルーズ)のトレーラーにお邪魔した時に、マイケル・マンと遭遇したのですが、もう、嵐のような人だったんですよね(笑)。

トムのトレーラーにダーッと来て、前日に撮影したものをダーッと見せて「コレとコレとコレとコレ!」みたいな、僕には判別できないような英語でしゃべって、5分くらいで立ち去っていったんですよ(笑)。「あれはマイケル・マンだったのか……?」みたいな(笑)。

その印象が強かったのでちょっと不安だったのですが、一緒に仕事をすると、誰もが彼に魅了される理由というものがすごくよくわかりましたね。

彼はどこまでもリアリズムを追求し、ディテールにこだわる。そういう中で、作品が持っているテーマが自然とあぶり出されてくるというか……。実際に一緒に仕事をしてみて、身をもって体験できたのはよかったと思います。

Q:マン監督のこだわりは、どういったところで感じられたのでしょうか?

例えば、最後の最後まで、片桐のネクタイはどれにするか? というのも彼が選んでいるんですよ。

ネクタイを20本くらい持ってこさせて、「コレじゃない、コレじゃない」と5本くらいに絞って、最終的に現場の雰囲気と、僕の衣装と僕の背負っているキャラクターに合わせるようにして最後の1本を選んで「コレ!」と。そんなことを現場でやるって、なかなか珍しい監督ですよね。

ネクタイ1本にしてもそうなので、衣装や小道具の方々は本当に大変だったと思います。「寝る時間もないくらい大変だったけど、すっごく楽しかったからまたやりたい」とみんな言っていますね。ま、実際やるとなったら考え込むでしょうけど(笑)。本当に大変だったはずだから(笑)。

TOKYO VICE: 渡辺謙

Q:片桐というキャラクターのどういったところに魅力を感じましたか?

片桐が相対するのはアンダーグラウンドの連中なので、彼自身、どうしてもグレーにならざるを得ないところがあると思うんですよ。でも回を重ねるごとに、彼はそれでも自分の使命というものをちゃんと持ち続けているということがわかってくる。

その中でジェイクと出会って、彼の師というか、brotherというか、彼を導いていく存在になっていくのが魅力だと思います。

Q:ジェイク役のアンセル・エルゴートは、日本語をかなり頑張って勉強していたと聞きました。

これって本当に大変なことなんですよ。僕らが英語をしゃべるよりも、彼らが日本語をしゃべる方が大変な気がします。語感も違うし、ただカタコトでしゃべればいいっていうわけでもない。

ドラマとしてすっと入ってくるところまでレベルを上げるというのは本当に大変なことなので、だからダメな時はダメってはっきり言いました。「これは無理だから、英語でやろう?」と言ったりとか。

もちろん彼も頑張ってそこまで高めてきたので、行けるところは日本語で行くし、ダメなところはダメ。その辺をきっちり、腹を割って話しました。

Q:本作で映し出されるのは、ジェイクの目線で見た東京なわけですよね?

今までも『ブラック・レイン』(1989)とか「え、これ日本なの?」みたいな映画っていくつかあったと思うんですよ。

でもやっぱり、マイケル(・マン監督)が第1話でメガホンを取ったことで、すごくリアリティーを持った日本という前提での切り取り方が可能になった気がするんです。だからこそ、非常にリアルでありながら斬新なドラマになっているんじゃないかなと思います。

そして、やっぱりすごいと思うのは、J.T.(ロジャース)の脚本の構成力。それぞれのキャラクターが背負うものをちゃんと作っていて、それをキャスト皆が背負って来ているから、“役の人間”として見えてくるんですよね。

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Q:撮影で一番印象に残っていることは何でしょう?

それはやっぱりシーズン1の最後でしょう。あれはちょっとやっぱり……脚本を読んでもショックだったし、現場でも非常に揺さぶられるシークエンスになりました。

Q:“シーズン1”ということは、まだ続く感じなんですか?

いや、「どうすんの!?」って感じ(笑)。「どうすんのこれ!? いいのこれ!?」みたいな(笑)。

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Q:最後に、全8話の本作の一番の見どころを教えてください。

8本すべてが、見どころです。まさに全話で一つの作品なんだと思いますよ。本当にダイナミックなうねりがあって、つまりジェイクがさまざまなことを体験し、それを潜り抜けるのか、叩き潰されるのか……といろんなことがありながらの8本なので、もう見どころは「8本」です(笑)。

《photo:TOWA/makeup and hairstyling:Tomomi Tsutsui/stylist:Junko Baba/衣装提供:BRUNELLO CUCINELLI》

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