シネマトゥデイ

ダニエル・クレイグ
『007 スカイフォール』
ジェームズ・ボンドは最前線で戦う兵士であるべき
映画『007 スカイフォール』ダニエル・クレイグ 単独インタビュー

取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki

ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じるのはこれで3度目。2006年の映画『007/カジノ・ロワイヤル』に「007」シリーズ初の金髪ボンドとしてキャスティングされた際には批判の声が上がったものの、映画は見事に成功。今ではその陰影のある演技から最高のボンドという評価を受けるまでになった。そんなダニエルが『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督とタッグを組んだ新作について語った。

■ダニエルが考えるボンドのあるべき姿とは?

Q:「007」シリーズの原作者イアン・フレミングは、自身のふさぎ込んだ性格をジェームズ・ボンドというキャラクターに投影させていたと思いますか?

僕にとってジェームズ・ボンドは、そんなふさぎ込み、哀愁を漂わせるキャラクターだからこそいつも惹(ひ)き付けられるんだ。彼は従事した仕事に対してこれで良いのかと常に自問自答しているところがある。それは、生き方に誠実であることにもつながっていると思うんだ。ただ、このようなボンドのキャラクターが生まれたのも、イアン・フレミングが第2次世界大戦後の1950年代から1960年代にシリーズを執筆したからだろう。当時、イアン自身が世界に対して疑心暗鬼になっていたのかもしれない。

Q:イアン・フレミングの最初のボンド作品「007/カジノ・ロワイヤル」は、出版当時は内容が時期尚早として一般の人々には受け入れられませんでした。あなたも初め第6代ボンド役に決定したときは世間から批判されましたよね?

確かにそういう比較もできると思う。ただ、ショーン・コネリーが初代ボンドに決まったときでさえ批判はあったよね。イアンもショーンのことを「トラックの運転手のようだ」と言って、彼にボンドを演じてほしいとは思っていなかったそうだ。ただ、「007」シリーズが続くにつれてショーンはボンドになることを学んでいった。そして人々に受け入れられるようになったんだと思う。だから僕もそうするしかなかったよ……。

Q:ピアース・ブロスナンが演じていた第5代ボンドは、時代錯誤が否めないところがあります。それに対してあなたが演じるボンドとは?

それはピアース・ブロスナンがボンドを演じた最初の作品『007/ゴールデンアイ』の時代設定が冷戦が終わってまもなくで、今とは違った敵と対峙(たいじ)していたからだと思う。現在では、僕らは真実を知るためにテクノロジーに信頼を置いて情報を入手しているだろ? すると、スパイとして最前線で活躍するボンドのような人間の必要性がなくなってくるんだ。もちろん本作にはボンド作品特有の派手なアクションシーンもあるが、その一方でテクノロジーに支配されたリアルな世界が描かれている。個人的には、今でもボンドは古き良き時代の最前線で戦う兵士であるべきだと思っているけどね。

■作品に関わる魅力的な人々

Q:ハビエル・バルデムが演じた悪役シルヴァについて聞かせてください。

ハビエルとの共演は楽しかった。彼は面白くてリアルで怖い演技を、悪役を通してこなしていた。それにシルヴァがゲイであるか、はたまたストレートであるかもわからないという設定に個人的に興味を持ったんだ。シルヴァはもともとベレニス・マーロウ演じるセヴリンと一緒だったが、ボンドと出会った途端、彼にも惹(ひ)かれていくんだ。シルヴァはまるで甘やかされた子どものように、自分の欲しい物をだけを要求してくる悪役なんだよ。

Q:サム・メンデス監督も、あなたのように数多くの舞台作品をこなしてから映画界に入りました。そういった点でやりやすいといったことはありましたか?

舞台監督も1度映画を製作すればフィルムメーカーになってしまうから、それほど舞台と映画の違いは感じない。ただ舞台の場合は全員が無作為に役柄を模索しているときと演技に集中しているときが明確に分かれていて、特に俳優グループと共に仕事をするときはその過程が重要だ。サムは全ての俳優をその過程に徐々に入り込ませていくことができるから、彼とは自然と良い関係を保てたよ。それに彼は隠し事をして俳優にとって難しい環境を作ることもない。だから、撮影現場では俳優たちと監督が一つずつ問題を解決しながら仕事を進めていくことができたんだ。その点すごくやりやすかったね。

Q:本作へは歌手のアデルが楽曲提供をしていますよね。

彼女が楽曲を提供してくれて本当に良かった。特に、彼女の曲を使用したオープニングのクレジットシーンは、映画にはまっていてとても美しい。彼女の声はボンド作品に完璧にマッチしていると思う。彼女が歌ってくれたことはこれ以上ない喜びだったよ。

■ボンドが故郷スコットランドで戦う理由

Q:印象的なトルコのグランドバザールでの撮影について教えてください。

トルコ政府は僕たちの映画のためにグランドバザールのほとんどを閉店にして、撮影場所を提供してくれた。トルコの人たちはみんな温かかったよ。もっとも「007」シリーズはトルコにコネクションがあって、『007/ロシアより愛をこめて』などもトルコで撮影しているんだ。今回ボンドが戻って来られて良かったと思っているよ。劇中にはグランドバザールの屋根の上での素晴らしいバイクシーンがあって、僕自身も特別な思い入れがあるんだ。そういえば、そのシーンについてあるプレスは、僕たちがグランドバザールの一部を崩壊させたと書いていたけどそれは事実ではないよ。僕たちは用意したセットを誤って壊してしまっただけで、それは実際のグランドバザールではなかったんだ。だから、参加したみんなが平等に楽しむことができたと思うよ。

Q:本作の魅力はボンドが上司Mへの忠誠心を試され、さらに彼の過去へ回帰していく点にあると思います。

僕自身も本作がこの方向に向かうべきだったと思う。もちろんMを守るために、どこかボンドに有利で安全な場所に向かう必要があるというストーリーが理にかなっていなければいけないけれどね。クライマックスシーンまでは悪役のシルヴァがテクノロジーの面においてボンドよりも常に先行していて、彼の方が上手だった。だから最後にボンドが良く知る、故郷スコットランドで戦うことで、ボンドと敵が対等な関係になるよう図っている点がポイントなんだ。でも、孤児だったボンドにとって重要なのは現在で、彼は過去には依存していないんだよ。

これまでの「007」シリーズとは違ったダークな要素が含まれ、さらにボンドとMの関係が物語をより興味深いものにしている本作。インタビューでダニエルが時折見せる鋭い眼光は、まさに敵を凝視するボンドそのものだった。また、ダニエルは再び舞台に立ちたいと思っているらしく、3年前にヒュー・ジャックマンと舞台「ア・ステディー・レイン(原題) / A Steady Rain」で共演したことを振り返り、特にニューヨークでの舞台に喜びを感じると明かしていた。今後も映画と舞台を両立して活躍してほしいものだ。

(C) 2012 CTMG, Inc. All rights reserved.
Skyfall (C) 2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.

映画『007 スカイフォール』は12月1日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国公開

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