シネマトゥデイ

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今週のクローズアップ ディズニー・アニメーション90年の歴史【前編】

 2013年に創立90周年を迎えたディズニー。最新作『アナと雪の女王』はもちろんのこと、『白雪姫』『シンデレラ』といった作品は今なお多くのファンの心をつかんでいる。
 ここでは、これまでにディズニーが手掛けてきた長編アニメーション全53作品の歴史を振り返るとともに、それぞれの先進性や位置付けをたっぷり紹介し、連綿と受け継がれているディズニーの伝統に迫った。

草創期:長編アニメーションへの挑戦(1937~1949)

 ディズニーが創業したころ、1920年から1930年代にかけては、「アニメ」といえば短編が当たり前だった。それを証明するのが、アカデミー賞におけるアニメーション作品の扱いだろう。意外に思われるかもしれないが、短編アニメ映画賞は1931年度の第5回から創設されている。これは「助演男優・女優賞」よりも早く、このことからも当時の映画界におけるアニメーション作品の位置がうかがえる。(ちなみに長編アニメ映画賞は、現存する賞の中では最も遅い2001年に創設。この時期はちょうど、ディズニーの低迷期と重なっており、ディズニー・アニメーション・スタジオの作品は長らく受賞に恵まれなかった)

 

ウォルト・ディズニー
Alfred Eisenstaedt. / Time & Life Pictures / Getty Images

 「アニメ=短編」という意識はディズニー、そして同社創業者のウォルト・ディズニーにとっても例外ではなく、草創期の業績は「短編アニメ」によって築かれた。同社が製作した短編作品には、おなじみのキャラクターによるギャグ作品「ミッキーマウス」シリーズ、反対に特定の主人公を設定せずに世界観を重視した「シリー・シンフォニー」シリーズという2本柱があった。創設直後の第5回アカデミー短編アニメ映画賞では「ミッキーマウス」シリーズから「ミッキーの子沢山」が、「シリー・シンフォニー」からは「花と木」がノミネートされ、「花と木」が受賞。記念すべき第1回の受賞作品となっている。

 そのように短編映画で業績を積み上げていたディズニーだが、短編では採算がとれず、1934年より世界初のカラー長編アニメーション映画となる『白雪姫』の製作に着手する。紆余(うよ)曲折を経て完成した同作は1937年に公開され、爆発的なヒットを記録。その後のディズニーは短編映画に加え、長編映画製作にも力を注いでいくことになる。

 

映画『花と木』より
Walt Disney Pictures / Photofest / Zeta Image

 ここで、当時のディズニーを振り返ってみよう。1930年には30人しかいなかったスタッフは、『花と木』が作られた1932年~1933年には100名を超えた。スタッフの数はその後も増え続け、『白雪姫』が公開された1937年には800名超になったという記録が残っている。当時のアニメーションスタジオとしては間違いなく最大規模といえるだろう。

 

映画『白雪姫』より
Walt Disney / Photofest / MediaVast Japan

 『白雪姫』の成功、そして制作スタッフに恵まれた状況もあってか、ウォルトは1938年、今後は年1作ペースで長編アニメーションを製作していくことを宣言。1940年2月に長編第2作となる『ピノキオ』を、同年11月に『ファンタジア』を、1941年10月に『ダンボ』を、1942年に『バンビ』を公開する。低予算で製作された『ダンボ』を除けば、そのいずれもがアニメーションの技術的に当時の最高水準のものだったが、興行収入では『白雪姫』を超えることができず、ビジネス的には失敗作とされた。(余談だが、『バンビ』の失敗によって「動物ものはヒットしない」というイメージがディズニーにはまとわりつくことになる。実際には「動物もの」のヒット作もそれなりにある)

 ここから状況は好転の気配を見せず、また1939年にはヨーロッパで第2次世界大戦が開戦したこともあり、海外市場が打撃を受けてしまう。その後、アメリカが戦争に参戦したこともあり、長編アニメーション映画の製作はストップ。戦中から戦後にかけてはオムニバス・シリーズが6作製作された。そのため、純粋な長編アニメーション作品の発表は、1950年の『シンデレラ』まで待つことになる。

 

映画『白雪姫』より
Walt Disney / Photofest / MediaVast Japan

ディズニー・アニメーション全作紹介PART1(1937~1949)

『白雪姫』(1937年)

 全てはここから始まったディズニーの長編アニメーション。今観ても、そのクオリティーが古びていないのがわかるだろう。それは、本作がディズニー社の掲げる「キャラクターアニメーション」の理想を体現しているからだ。日本語で「キャラクター」というと「登場人物」を指すためにわかりにくいが、ここでの「キャラクター」とは「登場人物やその個性、性格なども含めた本質」のこと。つまり、「キャラクターアニメーション」とは、そのキャラクターの命を感じさせるアニメーション表現のことだ。本作ではそれぞれが特徴づけられた7人のこびとが登場しており、その見事な描き分けにディズニーならではのキャラクターアニメーションを見ることができる。

 
 

『ピノキオ』(1940年)

 『白雪姫』同様、もともとあった童話にオリジナル要素を加えた作品として1937年前後に製作が開始された。だが、一度はアニメーション制作をスタートさせたにもかかわらず、1938年にはストーリーの練り直しのため、製作が中断された。ここに、ディズニー・アニメーションにおけるストーリーの重要性が表れている。キャラクターアニメーションを重視する以上、そのキャラクターを掘り下げるストーリーにも同様の労力を注がなければいけないという哲学が垣間見えているのだ。そのストーリーの改変も出来事の順序を入れ替えるという生易しいものではなく、物語を根底から変えるものが多かった。例を挙げると、『白雪姫』では当初、こびとの一人である「ドーピー(おとぼけ)」はおらず、『ピノキオ』でも主要キャラクターの一人である、コオロギのジミニー・クリケットは後に付け足されたキャラクターだ。

 
 

『ファンタジア』(1940年)

 アニメーションと音楽の融合をこれ以上ないレベルで実現させたディズニー草創期の代表作。せりふはほとんどなく、キャラクターの動き、そして音楽だけでストーリーを語るという、ディズニーのキャラクターアニメーションの理想を『白雪姫』とはまた違う方向性で達成した。世界初のステレオ音声作品としても知られており、技術的な意味でも映画史に残る作品だろう。ちなみに、本作の製作時期は『ピノキオ』とほぼ重なっている。

 
 

『ダンボ』(1941年)

 『白雪姫』『ピノキオ』に代表される童話を基にした作品群と共に、後のディズニーの大きな柱になる「動物もの」初の長編アニメーション作品。ただし、本作はもともとは短編として構想されており、これまでの作品に比べると製作期間・製作費の点でスケールダウンしている。例えば製作費でいうと、『白雪姫』の150万ドル(1億5,000万円)に対して、『ダンボ』は95万ドル(9,500万円)となっている(Box Office Mojo調べ)。その影響は随所に出ており、最もわかりやすいのは、キャラクター・背景の絵作りは共にシンプルになっている点だろう。一説には費用削減のための施策といわれるが、逆にそのことでアニメーターはキャラクターアニメーションに集中できたともいわれており、キャラクターの演技(アニメーション)に対する評価は高い。けたたましいおばちゃん象たちの、人をいらいらさせる演技は忘れ難い。(1ドル100円計算)

 
 

『バンビ』(1942年)

 『ダンボ』に続く「動物もの」の長編アニメーション作品だが、実は製作開始は1938年と『ダンボ』よりも早いため、こちらが初の「動物もの」長編作品ともいえる。『白雪姫』にも動物は出てきていたが、『バンビ』ではよりリアルに、そして感情的に描くことが目標として掲げられた。そのため、専門家による講義を行ったり、スタッフが動物園に行ったりしたのはもちろん、それだけでは飽き足らず、スタジオ内に小さな動物園を建設して、アニメーターたちに本物の動物を観察する機会が与えられた。また、テストアニメーションを含め、アニメーション制作だけで3年以上が費やされており、キャラクターとしての動物に命を吹き込む作業には多くの時間が割かれた。その成果は作品で見事に結実している。この『バンビ』の時に蓄積された動物を描くためのノウハウは、この後のディズニー作品に大きな影響を与えることになる。

 
 

○オムニバスシリーズ 1942年~1949年

 『ラテン・アメリカの旅』(1942年)とその続編の『三人の騎士』(1944年)、『メイク・マイン・ミュージック』(1946年)、『子ぐま物語』(1947年)、『メロディー・タイム』(1948年)、『イカボードとトード氏』(1949年)のこと。長編アニメーションに数えられてはいるものの、この6作はいわゆるオムニバスシリーズとして制作されており、複数の短編で構成されている。戦時中という時代背景、ならびに『バンビ』の興行的失敗による財政苦難が理由となって、大幅なコストダウンが図られているものも多い。例えば、『ラテン・アメリカの旅』は実写パートとアニメーションパートが組み合わせられているが、これはコストダウン対策の一環だ。とはいえ、後の『メリー・ポピンズ』につながるかのような実写とアニメーションを組み合わせた作品や、クラシック音楽を主題にした『ファンタジア』と同路線ではあるものの、今度はポピュラーミュージックとアニメーションを融合させた作品など、実験的な作品が多く含まれているのが特徴といえる。ただし日本では、劇場未公開だったり、現在でも観るのが難しいものがあったり、知名度が高いとはいえない。


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【関連リンク】
『アナと雪の女王』劇場公開 記念キャンペーンページ

【参考文献・資料】
「ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 - The Illusion of Life -」フランク・トーマス、オーリー・ジョンストン 翻訳:スタジオジブリ 日本語版監修:高畑勲、大塚康生、邦子・大久保・トーマス 徳間書店(2002年)
「創造の狂気 ウォルト・ディズニー」ニール・ゲイブラー 翻訳:中谷和男 ダイヤモンド社(2007年)
「DISNEY THE FIRST 100 YEARS - ディズニークロニクル1901-2001」デイヴ・スミス、スティーヴン・クラーク 翻訳:唐沢則幸 講談社(2001年)
「Disney A to Z/The Official Encyclopedia オフィシャル百科事典」デイヴ・スミス ぴあ(2008)
「ディズニーの芸術 - The Art of Walt Disney -」クリストファー・フィンチ 翻訳:前田三恵子 講談社(2001年)

(C)2014 Disney

文・構成:編集部 福田麗


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