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Jホラーの巨匠に聞く、世界最恐の「日本の幽霊」Vol.2 中田秀夫(1/2)

最恐ヒロイン・貞子でおなじみの『リング』(1998)、泣けるホラーの傑作『仄暗い水の底から』(2001)がハリウッドでリメイクされ、一躍Jホラーを世界に知らしめた巨匠・中田秀夫監督が最新作『劇場霊』の公開を来月に控える中、「あまりにも怖過ぎる」と語り継がれる伝説の名作『女優霊』(1995)の誕生秘話から日本の幽霊が怖い映画ベスト3まで、恐怖の極意を語り尽くす!(構成:編集部 取材・文:イソガイマサト)

中田秀夫
中田秀夫監督

Q:「日本のいちばん怖い夜~Jホラー降臨」に『女優霊』が選出されて

『女優霊』はJホラー黎明期に僕がアイデアを出し、オリジナルビデオ作品の「本当にあった怖い話 呪死霊」(1999)で出会った高橋洋さんに脚本を書いてもらってできた作品です。今でこそカルト的に愛されて、Jホラーの一つの源泉的な扱いになっていますが、公開時の観客はかなり少なかったんですよね。でも、竹中直人さんや高嶋政伸さんを中心とした俳優さんたちの間で評判になり、その噂が映画のプロデューサーたちの間にも広がっていって、僕が『リング』(1998)を撮るきっかけにもなったわけです。あと『リング』を撮る前に高橋さんと一緒に黒沢清監督の『CURE キュア』の試写を観に行って、“ものすごく怖い映画を観た”と思っていたのですが、高橋さんから『心霊』というタイトルだったときの『女優霊』の脚本を読まれた黒沢さんが「これは僕が監督したかった」とおっしゃっていたという話を聞いたので、『リング』は『CURE』のあのイヤ~な恐怖を超えるものを目指したんです。そういった意味でも、今回、『CURE』と一緒に『女優霊』が上映されるのは感慨深いものがありますね。

Q:作品の着想

『女優霊』のオリジナルタイトルは『ジャンクされた女優』だったんですけど、シノプシスを書くときに富士フイルムに「フイルムを廃棄するときは切り刻むんですか?」って聞いたら、「ただ焼くだけです」と言われたことが大きく影響していて。しかもライブラリーに残しておけないような映画も同じようにどんどん焼かれると聞いて、1本の映画にクレジットされた名もなき女優の映画への思いが、呪いのパワーみたいなものを生むというような話を考えられないだろうかと思ったんです。

女優霊
『女優霊』より(C)1995 WOWOW/バンダイビジュアル

Q:謎の女幽霊が誕生したきっかけ

タイトルは『女優霊』ですが、あれは女優(の霊)ではないんですよね。女優未満というか、魔物に近いもの。衣裳はやっぱり白い方がいいだろうと。あとは谷崎潤一郎の「人面疽」という怖い短編小説の中に出てくる、女優さんの膝小僧にできた男の顔が笑って、サイレント映画なのにヒ~ヒ~ヒ~って声が聞こえてくる描写をやりたいというのもありました。その際に、笑うんだけど歯は見えないようにしたかったから、お歯黒にして。幽霊画も参考にしながらヘアメイクさんには「なるだけ髪の長いカツラを用意してください」と言いましたけど、そういったものが合体して、(『リング』の)貞子の原型とも言える幽霊が誕生したんです。

Q:『女優霊』の最恐ポイント

僕が監督ではなくて、『女優霊』を純粋に観たら、やっぱりロケバスに乗っている幽霊が一番怖いですよね。あれもカメラマンの浜田毅さんがレンズにつけた偏光フィルターをまわしながら撮影したんですけど、薄暗い車内が明るくなってきたところで幽霊が見える。しかも、撮影クルーはバスの進行方向を向いてお弁当を食べたりしているんだけど、幽霊だけはカメラの方を向いて座っている。柳憂怜(※当時は柳ユーレイ)さん演じる映画監督に向かって女優が手を振るくだりでは、女優の頭上に見えるバスの窓ガラスに不意を突くかのように幽霊が映るのでギョッとするんじゃないかと。

劇場霊
『劇場霊』より(C)2015「劇場霊」製作委員会

Q:20世紀から21世紀にかけての恐怖描写の変化は?

最新作の『劇場霊』では、Jホラーの定番的な表現をすると「またやっているよ」って思われてしまうので、人形の中に霊魂が宿っているという設定にしました。これはハリウッド映画の『チャイルド・プレイ』(1988)も同じ設定ですが、いないはずのものが背後に立っているから怖いというものではなく、(いるはずのないものではなく)”実体”があるのに怖い、動かないはずの人形が動き出したり、こっちを見たり、血を流したりすることで生まれる恐怖を目指したんです。それはJホラーで作り上げた恐怖の応用編みたいなところがあって、決して革命的な恐怖演出ではないです。ただ、今回も前作の『クロユリ団地』(2013)と同様、オリジナルのストーリーですし、過去のJホラーたちにひれ伏すだけでは終われない虚仮の一念のようなものもある。ホラー映画の監督として、どこまでいけるのか頑張ったつもりなので、新たな恐怖もお届けできると思います。

Q:技術が進化したことによるメリットとデメリット

例えば『女優霊』では白島靖代さんの演じた女優の背後に幽霊がふっと浮かび上がるシーンは、カメラの前にハーフミラーを置いて、暗い照明が明るくなると実際にはカメラの真横にいる幽霊役の女性が映り込むようにしました。今なら別撮りして合成すればいい話なんですけど、当時は技術的にも予算的にも、そうやってライブでやるしかなかったんです。そういうふうに制約があってキツい状況の方が人間、知恵が出るというのはありますよね(笑)。それから『リング』『リング2』『怪談』と徐々に予算は増えていきましたが、だからといってラクになることは決してないです。

Q:『女優霊』を初めて観る人へ

『女優霊』を撮った日活撮影所には実際に幽霊譚があるんですけど、それをリサーチして映画人が身近に感じる幽霊を描いた作品です。同時に、これが僕の劇映画のデビュー作なので、カーッと意気込んでいた当時の熱気みたいなものも感じていただけたらうれしいですね。それにこれは本当に偶然ですけど、謎の映像を観た人が祟られる展開やテーマが、後に自分が撮る『リング』と近接していて。『女優霊』が『リング』の下敷きになったとは言わないですけど、『リング』を観ている方はそういったことも意識しながら観ると面白いと思います。

次ページは中田秀夫監督が選ぶ日本の幽霊が怖い映画ベスト3

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