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Jホラーの巨匠に聞く、世界最恐の「日本の幽霊」Vol.3 清水崇(1/2)

清水崇監督が自らメガホンを取り、『呪怨』をハリウッドリメイクした『THE JUON/呪怨』(2004)が、日本人監督として初めて全米興行成績ナンバーワンを獲得。そのヒットを受けてハリウッド、日本両国で続編が製作されるなどJホラーのジャンルを決定付けた清水監督が、幽霊親子・伽椰子&俊雄の誕生秘話、追求し続けた「本当に怖い恐怖描写」、そして日本の幽霊が怖い映画ベスト3まで、ホラー映画の真髄に迫る!(構成:編集部 取材・文:イソガイマサト)

清水崇
清水崇監督

Q:「日本のいちばん怖い夜~Jホラー降臨」に『呪怨』が選出されて

光栄ですね。『CURE キュア』の黒沢清監督は僕が助監督をしながら通っていた映画美学校の講師でしたし、『女優霊』(1995)の中田秀夫監督も僕の一回りぐらい先輩で。しかも『呪怨』は、中田さんの『リング』(1998)の成功で商業映画でホラーがいけるぞ、という流れができたところで、「何でもいいから怖いものを作って!」いう感じで僕に話がきたような側面もありますからね。そんな縁があるので、お二人の作品と並ばせていただけるのはとてもうれしいです。

Q:作品の着想

オリジナルビデオ版の『呪怨』は、初めて長編を撮らせてもらえるチャンスだったので「今やりたいことを全部吐き出しておかないと次はもうないかもしれない」という思いで撮ったんです。僕はポーランドの巨匠として知られるクシシュトフ・キェシロフスキが撮った10時間もあるテレビシリーズ「デカローグ」(1989~90)が大好きなんですけど、その作品の構成を使えば、短いストーリーを交差させながら長編を作れるかもしれない、ということで一軒の家をモチーフにした大筋を立てたんですね。短いエピソードの組み合わせで長編にできないか? という考えが功を奏したのではないかと思っています。最初に書いていた台本はサイコサスペンスみたいなもので、ある教師が家庭訪問に行ったらその家に子供しかいなくて。で、隠れたところに傷がある。母親とも連絡がとれないし、帰ってこない。どうもヘンな雰囲気で、2階に母親の死体があるかもしれないと思い始める……といった構成のもので。大学生のときに書いた台本だったんですけど、改稿を重ねるうちに、2階でガサガサ音がして、死んでいるのを確認したはずの母親が亡霊と化して階段を下りてきたら怖いかもしれない、という考えが閃いたんです。そこから急きょホラーに書き直したものが『呪怨』の基になりました。

Q:母子の幽霊、伽椰子と俊雄が誕生したきっかけ

透明な幽霊はもはや技術と記号ですよね。「あなたの知らない世界」のころは怖かったけど、それを、10数年経ってから僕がまたやるのもどうなのかな? って思いましたし、陰でひっそりたたずんでいるとか、背景の一部にまぎれているというような、いわゆる心霊写真的な描写は鶴田法男監督と脚本家の小中千昭さん(※『ほんとにあった怖い話』の監督&脚本コンビ)が確立していました。黒沢監督や中田監督、高橋洋(脚本家)さんたちもそれを踏襲されていたので、一回り下の世代の自分は新しいことをやらないと、『リング』ブームに乗っかったホラー映画として埋もれてしまう気もしていて。ここは笑われてもいいから堂々とやろうと思い、オーディションで選んだ子役を全身白く塗ったんです。ヒントは大駱駝艦(だいらくだかん)(※麿赤兒を中心に結成された舞踏集団)などの暗黒舞踏ですね。大駱駝艦の人たちの動きって、普通の動きじゃないし、人間ではないようなものを感じさせる神秘性と怖さ、美しさを持っているんです。高橋さんしかり黒沢さんしかり、ホラーに携わる人たちは「これはヤバい、これは人じゃない!」と感じさせるもの撮ることを目指していると思うんですけど、僕もそうです。そういうことを考えていたときに、暗黒舞踏の動きを取り入れてみたらどうだろうという考えが浮かんだんです。それともう一つ。僕らが普段カラーで観ている風景や人の中に、色のない白黒の人間が突然現れたらどうだろうと。その二つの発想が一つになったので、これは笑われてもいいからやってみようと。「笑われても」というのは、裏の側面に志村けんさんの「バカ殿」があったから(笑)。それを承知の上で、紙一重だなと思いながらやったんです。伽椰子の蜘蛛のような動きは、『呪怨』の中におばあちゃんを介護する話があるんですけど、その介護されるはずのおばあちゃんが放っておかれて、床ずれしたりするのを、現実に起こっているイジメとか虐待とか、そういう社会的な問題と絡めて考えていたときに“人ならざる動き”と絡めて思いついた気がします。

呪怨
『呪怨 劇場版』(C)「呪怨」製作委員会

Q:『呪怨』(オリジナルビデオ版&劇場版)の最恐ポイント

オリジナルビデオ版はあごのない娘の顔を見て、お母さんが絶叫するところ。『呪怨』シリーズを通して、一番のスクリーム(叫び)はあれだと思っています。お母さんを演じた、吉行由実さんの叫び方がすばらしかったんですよね。溜めに溜めて、限りなくリアルな感覚で叫んでくれました。いまだにあれはスゴかったなと思っています。あごがないとか血がいっぱい出るバイオレンス描写は、言い方は悪いですけど、誰にでも撮れる。で、そうじゃない部分に黒沢さんも中田さんも、僕や高橋洋さんも挑戦していると思うんですけど、あのリアクションの叫びはそういった表現の成功例ですよね。劇場版は、奥菜恵さんが演じている主人公が、最後の方で手で顔を隠して指の隙間から見ると、目の前まで迫ってきていた女幽霊の顔が自分に見えるというカットを編集で交ぜているところがあるんです。そこは描写として怖いわけじゃないんですけど、あれが実は、僕の中では外せない裏テーマだったんですよね。「本当に怖いものって何だろう?」と考えたときに、その正体が自分自身だとしたら……という発想に行き着いて。

Q:技術が進化したことによるメリットとデメリット

CGや合成が入れば入るほど、リアルな肌で感じる怖さからは離れていきますよね。やっぱり、VFXの進化に頼っちゃっているものには怖さは感じないですよ。

Q:『呪怨』を初めて観る人へ

劇場版の『呪怨』を作ってから10年以上経って、その後の僕の真似をした作品群を先に観ている人もいると思います。だから、笑っちゃうかもしれないけど、『呪怨』を初めて観たクリエイターや映画監督を目指している若い人が、「俺の方が面白いものを作れる!」と触発されて、何か面白いものを打ち出すきっかけになればうれしいですね。

次ページは清水崇監督が選ぶ日本の幽霊が怖い映画ベスト3

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