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ニューヨークで『おくりびと』以上の評価!『歩いても 歩いても』の是枝裕和監督を直撃!

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是枝裕和監督
是枝裕和監督 - Photo:Nobuhiro Hosoki

 海外の映画祭や批評家に高い評価を得ている是枝裕和監督の映画『歩いても 歩いても』がトライベッカ映画祭(Tribeca Film Festival)に出品され、現地入りした是枝監督に話を聞いた。

映画『歩いても 歩いても』

 ちなみに優れたインディペンデント作品を見慣れたニューヨークの批評家は、この『歩いても 歩いても』を、『おくりびと』以上に優れた映画と評価している。

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 カンヌ国際映画祭のある視点部門に新作映画『空気人形』が選考されたばかりの、是枝監督。「カンヌ映画祭はやっぱり緊張しますね。1度目は映画『DISTANCE/ディスタンス』という作品で、それもコンペだったんですけれど、評価はイマイチで。まぁ、難しい映画という理由もあるかもしれません。カンヌ映画祭って、作品が埋もれてしまうと徹底的に無視されるんですよ。2度目に行ったときは、映画『誰も知らない』で、非常に評判が良く、取材も連日で。『DISTANCE/ディスタンス』のときは、まったく取材が入らなかったので、カンヌ映画祭ってこんなに暇なのかと思ったくらいでした。極端なので恐い映画祭ですよ」と体験を語ってくれた。

 『歩いても 歩いても』は、ロバート・レッドフォード監督の映画『普通の人々』を思い起こさせる作風だ。「言われてみると、『普通の人々』は僕の最も好きな映画ですね。ただし、今回の作品を作るにあたって、特別に参考にした映画はないんですよ。母親のキャラクターには、自分の亡くなった母親を重ねて描いたりしているのですが、かなりパーソナルな要素の強い映画なんです。過去の作品を思い浮かべて製作したわけではないですね」と語る。

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 自然体の演技で魅了するYOUについては「彼女の自然さもありますし、今回はほとんどアドリブはしてなくて、ほぼ脚本通りにやってくれていたんです。それでも自然な感じがして、見てて毎回ハラハラするし。樹木希林さんや原田芳雄さんなんかは、本当にプロのベテランですが、彼らと一緒のシーンでも、いい意味で手慣れないんですよ。それが新鮮ですね」と絶賛した。

 阿部寛については「あの主人公は、映画内で成長するわけでもないので、結構難しい役柄で、誰にするか一番悩みました。たまたまテレビのバラエティー番組に出ていた阿部さんを観て、これまでの彼はデフォルメされたお芝居を要求されることが多いと思うんですが、そのバラエティーでの素に近い阿部さんを見たとき『あっ、この人だ』と。翌日にはもうオファーしてました。演技以外の部分でひらめくことが多いですね」と直感が見事な配役に結びついたと語る。

 『歩いても 歩いても』というタイトルは、家族の縮まらない距離を表しているのだろうか。「そういう読み取り方は否定しません。ただ、一番最初は『ブルーライト・ヨコハマ』という曲を母親が好きだったので、劇中でも使おうと。タイトルはその曲の歌詞からいただいたんです。物語の前に、タイトルを付けたわけです。だから、家族の距離が縮まらない意図は、後付けですね(笑)」とタイトルの経緯を教えてくれた。

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 優れた音響の使い分けは脚本執筆時にあったのか? それとも編集段階で生まれたものなのかについても気になるところだが、是枝監督は、「現場で音をどう立体的にとるか、今見えていない空間で、どういう音を響かせるかという計画を立てていました。この映画は非常に限られた空間の中で進行していく物語なので、それが一元的にならないよう、立体的に、同時に何かが起きているということを、かなり計算しました」とこだわり聞かせてくれた。

 書き言葉ではないリアルなセリフが俳優から発せられているのが、本作の特徴でもある。「脚本の段階でリアルな言葉にこだわろうと思ったので、スタッフで読み合わせをやったんです。全部録音して、耳で聞いて、直していったんです。それから、役者が入って、実際に演じてもらって、不自然な部分は全部直したんですよ。そもそも日本語って、会話の中で主語を使わないじゃないですか? それを徹底的に省いたのと、固有名詞を使わないようにしましたね。英語だと必ず主語が付くけれど、日本語のあいまいな表現がうまく生かされたと思っています」と語る。

 作品ごとにアプローチが違うのは当然だが、映画『幻の光』から『空気人形』に至までにどのようなアプローチの変化があったのだろうか。「『幻の光』を撮ったときは、映画に向かって映画を作っていたところがあるんです。今は、こうすると映画になるとか、こうしないと映画じゃないとかを考えないように作っています」とのことだ。(取材・文:細木信宏 / Nobuhiro Hosoki)

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