ADVERTISEMENT

『箱の中の羊』撮影中に可愛いハプニング 是枝裕和監督「子どもはコントロールできないから面白い」

ヒューマノイド・翔(桑木里夢)と音々(綾瀬はるか)
ヒューマノイド・翔(桑木里夢)と音々(綾瀬はるか) - (C) 2026「箱の中の羊」製作委員会

 映画『万引き家族』がカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞するなど世界が注目する是枝裕和監督の新作『箱の中の羊』(公開中)は、近未来を舞台に亡き息子と同じ容姿のヒューマノイドを迎えた夫婦を描く物語。是枝監督はこれまでカンヌ国際映画祭にて史上最年少で最優秀男優賞に輝いた柳楽優弥をはじめ、城桧吏黒川想矢柊木陽太ら数々の子役を見いだしてきたが、本作でもまた10歳の桑木里夢(※「桑」の木の上は十と草冠が正式)をオーディションで抜擢した。作品の裏側について、桑木の演出を軸に聞いた。

【画像】かわいすぎる桑木里夢!綾瀬はるか、大悟と共にカンヌで撮影会

 物語の舞台は、テクノロジーが進み「事件や事故で家族を亡くした遺族に対し、最新型ヒューマノイドを無償でレンタルする」サービスも生まれた少し先の未来。息子の翔(かける)を亡くして2年、建築家の音々(おとね/綾瀬はるか)と工務店の二代目社長を務める健介(千鳥大悟)の甲本夫婦は、そのサービスを利用し、息子と同じ姿をしたヒューマノイドを迎え入れる。本作は、是枝監督にとってカンヌ国際映画祭コンペティション部門に8度目の選出となった。

ADVERTISEMENT

 映画では今よりもAIが生活に根付いた日本を描いているが、「AIの脅威からスタートしてはいない」という是枝監督。

 「使う人間側の問題だなと思ってはいますけど、人間がAIに支配されるようなよくあるディストピアを前提にしては書いてないです。ただ、母親が成長していく子供を理解できなくなることがあるように、主人公夫婦がヒューマノイドの中で何が起きているのかを理解できない瞬間っていうのは随所に書いているつもりで、そういう不気味さは残しています」

バッテリーが切れたヒューマノイド・翔

 ヒューマノイドの翔を演じる桑木は200人を超えるオーディションで選出されたが、是枝監督はこれまでとは違う基準で判断したという。オーディションは大悟を交えて行われ、桑木は本編の後半に使用されたシーンを演じた。ヒューマノイドは水に触れることができず、翔は入浴することができない。そんな彼が、父親の入浴中に現れ、ためらいながら湯船に浮かぶ木切れに触れる……というシチュエーションだ。

ADVERTISEMENT

 「その時、まだ他の候補者も残っていて、里夢くんに大悟さんとお風呂場のシーンを演じてもらって最終決定でした。重要だったのはヒューマノイドに見える瞬間です。もちろんメイクなどでも表現していますが、例えば翔が音々の仕事場で“ママは僕がいない方が幸せ?”と聞くシーン。いつもの本人のパーソナリティをふまえた選定基準で選ぶわけにはいかないと思ったので、そこは冷静に判断して、子どもらしい時とそうではない時との演じ分けというか、描きわけができる子を選ぼうと思っていました」

 しかし、撮影の際に桑木本人に「ヒューマノイドのように」など芝居の指針を伝えることはなく、基本的には桑木に任せ「動きを止める」など具体的な指示を部分的に伝えるのみだったという。

 「ヒューマノイドのように見えるかはこちら(作る側)の問題なので、セリフの言い方などについても特に僕が言うことはありませんでした。気持ちの説明も、どんな場合でも聞かれない限りはしません。里夢くんはしないタイプ。やっていくうちに飲み込むと自分でアレンジしてくるタイプだったし、修正もあまりかけていません。ただ、子どもってどうしても動いてしまうので“ここは目線を7秒間だけ動かさないで”“3秒だけ息を止めて”といったことは伝えました。里夢くんはそういうことも面白がってくれていましたね。お芝居に関しては、どちらかというと僕を介さずに綾瀬さんと大悟さんと3人で練習してもらって作っていく感じ。セリフはそんなに入ってないので現場で何度も何度もやってもらって、いい瞬間を切り取っています。それに綾瀬さん、大悟さんが辛抱強く全部付き合ってくれたので、とても感謝しています」

ADVERTISEMENT
水族館を訪れるヒューマノイド・翔、健介(大悟)

 撮影中には予期せぬハプニングもあったが、是枝監督はむしろそれを楽しんだようだ。

 「俳優の全てをコントロールしたいクリエイターもいるかもしれないけど、僕はそうではなくて。きっと“やばい! どうしよう、思い通りにならない”っていう方が楽しいんだと思います。現場を進めていく上でも、不確定要素があることで停滞しない。だから(子供の演出が)好きかもしれない。撮れる時間が限られているとか、普通だとネガティブに捉えられがちなことが意外とよくて。今回に関していえば里夢くんが撮影時に寝てしまって、どう揺すっても起きないなんてこともありました。はしゃぐ時は150パーぐらいではしゃぐものだから、“そんなにはしゃぐと後で眠くなるぞ”って言ってるのに、言うことを聞かず本番でぐーぐーって(笑)。そういうときは“しょうがない、1時間休憩!”と寝かせちゃう。それがスタッフにとってもいい休憩時間になるし、その1時間で僕は脚本のことを考えられるし、そういうのもいいんです(笑)」

ADVERTISEMENT

 「子役との信頼関係がとても大事で、子供が現場にいるといろんなことがごまかしがきかないから、より誠実であろうとするんだと思う」ともいう是枝監督。これまで『誰も知らない』『奇跡』『万引き家族』『怪物』など数々の作品で子どもを描き、子役の演出に定評があるが、「なぜ子どもを描き続けるのか」と問うと、こんな答えが返ってきた。

 「僕の意見ではないんだけど、僕の作品ではよく子供と死者が大切な要素として描かれていると言われていて。物語の内側から、物語や社会、世界、大人たちを批評するのが子供で、外側から批評するのが死者だと。この2つの目線によって物語というか登場人物が描かれていく構造を持っていると。今回に関しては、死者と子供が一体化して内側にいるという変化が起きているとの見方がありますが、結果的にそうなっただけであって別にそう意図して作ったわけではないんです。僕が子供を描く理由はもっと根深いんだと思う。自分でもよくわかっていません」

 音々と健介がヒューマノイドの翔とのお試し期間の生活を経て下す決断とは……? ちなみに、翔の部屋に描かれた電車の絵は桑木本人によるもの。そうした温もりあふれるディテールも作品に切なさをもたらしている。(取材・文:編集部 石井百合子)

映画館で上映中の最新映画がお得に楽しめるキャンペーン実施中!|U-NEXT

※このリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、リンク先での会員登録や購入などでの収益化を行う場合があります。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT