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町山智浩、映画史上最高にして最悪!古典『國民の創生』をバッサリ(1/2)

町山智浩、映画史上最高にして最悪!古典『國民の創生』をバッサリ
さまざまな観点から『國民の創生』を解説した町山智浩

 映画評論家の町山智浩が30日、著書「最も危険なアメリカ映画/『國民の創生』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで」(集英社インターナショナル刊)の発売を記念して都内でライブ解説付き上映会を開催、本書でも取り上げている1915年の無声映画『國民の創生』を形成する“善”と“悪”の両極を、独自の切り口で徹底解剖した。

 アメリカ映画初の長編作品にして負の遺産とも言われる『國民の創生』は、巨匠D・W・グリフィスが監督・脚本を務めた歴史大作。南北戦争前後の動乱の中、敵対する北部と南部の2つの名家を軸に奴隷解放問題を描く。本作を題材に選んだ町山は、「映画史上最高にして最悪の作品」と評しているが、「最悪」とは、KKK(クー・クラックス・クランの略称、白人至上主義の米秘密結社)を正義として描いている点にある。

 本作が全米にKKKのリンチを復活させたという町山は、「すでに自然消滅していたため、ほとんどのアメリカ人がKKKを知らなかった。ところが、この映画を観た途端、『白人が襲われる!』という恐怖に駆られた」と分析。史実を歪め、黒人を「悪」と描いた本作では、ゲリラ的に白人を襲ったり、不正選挙で多数議員を獲得したり、白人女性に結婚を迫ったり、偏った差別描写でやりたい放題だ。

 この映画を真に受けた白人たちは、「KKKを復活させなければ」と決意し、劇中に登場するあの三角頭巾の白いコスチュームをそのまま採り入れ再結成させた。つまり、「この映画がなければ、KKKは復活していなかった!」と語気を強める町山。想像以上の影響力に驚いたグリフィス監督は、その後、遺憾の意を表明したという。著名な米映画評論家ロジャー・イーバートの言葉を引用しながら町山は、「グリフィスは自分のやったことを心から恥じていた。彼のその後の人生は『國民の創生』の贖罪」と振り返る。

 だが、その一方で、主演のリリアン・ギッシュから美を引き出すソフトフォーカスのクローズアップや、別々のシーンを同時進行させるサスペンスフルなクロスカッティング、手旗信号で演出を施したという超ロングショットのモブシーンなど、映像技術のさまざまな礎を作った本作は、全ての映画に大きな影響を与えた。『風と共に去りぬ』でさえ、誕生の源はこの作品だ。

 町山は、「もともと南部には貴族の血筋はないが、綿花で財を成した白人たちが憧れの貴族生活を送る姿が描かれている。このシーンに触発された作家のマーガレット・ミッチェルは、南部を舞台に華やかな舞踏会を盛り込んだ『風と共に去りぬ』を書く決心をした。つまり、本作を観なかったら、あの名作は生まれなかった」と奇跡の出会いに目を細める。そして、あの有名なアトランタ大炎上シーンは、『國民の創生』で使われたスクリーンプロセス(古典的な特撮技術)の映像が大きなヒントとなった。


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