深夜の銭湯で人殺し…低予算サスペンス『メランコリック』に絶賛の声
深夜に風呂場を「人を殺す場所」として貸し出す銭湯でバイトを始めた男を描いた低予算映画『メランコリック』。無名の新人監督による自主制作映画にもかかわらず、著名人たちから絶賛の声を集めている。
本作は、これが長編初作品となる田中征爾(せいじ)監督がオリジナル脚本を手掛けたサスペンスコメディー。東京大学を卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた主人公・和彦(皆川暢二)は、たまたま訪れた銭湯でバイトを始めることになるが、その銭湯は閉店後の深夜、風呂場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る。さらに、同僚の松本は殺し屋だったことが明らかになり……。
昨年の東京国際映画祭では、日本映画スプラッシュ部門(独創性とチャレンジ精神にあふれる作品を監督のキャリアを問わず紹介する部門)に出品され、監督賞を受賞。昨年、日本で公開されて大ヒットする前の『カメラを止めるな!』が上映され、観客賞第2位を獲得したことでも注目されるイタリアのウディネ・ファーイースト映画祭では、ホワイト・マルベリー賞(新人監督作品賞)に輝いた。
お笑い芸人で漫画家の矢部太郎は「銭湯という場所に行くたびに僕はなんとも言えない違和感を感じます。日常の中にある異常。その違和感がどんどん広がっていって、怖くて、かっこよくて、面白い、素晴らしい映画になっていました!」と称賛。
『勝手にふるえてろ』の大九明子監督は「登場人物が全員、絶えず魅力的。松本が金髪揺らして『仕事』するときの所作なんか超色っぽい。プロデューサー・監督・俳優という三者の、映画作りたい、作りたい、作りたい! が沸騰した末、良い湯加減になったのでしょうね」とコメントした。
昨年の東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ部門の審査委員を務めた『SR サイタマノラッパー』などの入江悠監督は「東京国際映画祭での審査会の席、『この監督には確かな力量とビジョンがある』と、監督賞の受賞が満場一致で決まりました。突拍子もなさそうな設定でも飄々(ひょうひょう)と観るものをからめとってしまう田中征爾監督、末恐ろしい!」と驚嘆。
東京国際映画祭のプログラミングディレクターを担当する矢田部吉彦氏は「サプライズ満載! 殺しと愛、友情と家族に関するとびきりオリジナルな物語。僕は終盤に落涙してしまいました。新たなストーリーテラーの誕生に刮目せよ!」と日本映画界に現れた新たな才能をアピールした。(編集部・中山雄一朗)
映画『メランコリック』は8月3日(土)よりアップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、イオンシネマ港北ニュータウンほか全国順次公開