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『パラサイト』の作品賞受賞はハリウッドに大衝撃!世界に開いたオスカーの扉

第92回アカデミー賞

オスカー作品賞受賞で喜びに沸く『パラサイト 半地下の家族』チーム
オスカー作品賞受賞で喜びに沸く『パラサイト 半地下の家族』チーム - Matt Petit - Handout / A.M.P.A.S. via Getty Images

 予想通りに進行した今年のアカデミー賞授賞式は、最後に、予想外のことが起こった。とは言っても、完全にありえないことが起こったわけではない。こうあるべきだとみんなが思い、でも無理だろうと諦めていたことが起こったのである。『パラサイト 半地下の家族』の作品賞受賞が、それだ。(Yuki Saruwatari/猿渡由紀)

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 外国語の映画が作品賞にノミネートされること自体があまりないことで、その数少ない過去の作品も、受賞からはほど遠かった。また韓国映画に関しては、『パラサイト 半地下の家族』まで作品賞はおろか、国際長編映画賞(旧:外国語映画賞)にすらノミネートされたことがなかったのである。昨年5月のカンヌ国際映画祭でパルムドールを取って以来、興行成績でも全世界で大成功を収めてきた同作が、国際長編映画賞を取ることを疑う人は、全くいなかった。だが、過去にもそうだったように、『パラサイト 半地下の家族』も外国映画なんだからそれをもらえれば満足だろう、という結果に終わるのではないかと、多くが予想していたのだ。

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 しかし、果たしてそれは正しいのか? オスカーはアメリカ映画のためにあるもので、花形の賞は、それゆえアメリカ映画に与えられなければいけないのか? 授賞式が近づくにつれて、アワードエキスパートや批評家の間では、オスカーの定義、あるべき姿というものについての論議が強まっていった。そんな中、組合関係の賞の最後、オスカーの1週間前に行われる全米脚本家組合賞(WGA)が『パラサイト 半地下の家族』に授与され、国際長編映画賞以外の受賞にも道が拓ける。その頃には、監督賞をポン・ジュノが取るのではないかと予想するエキスパートもかなり出てきた。オスカー監督賞と受賞者が9割以上の確率で一致する全米監督組合賞(DGA)を『1917 命をかけた伝令』のサム・メンデスが取っていたにもかかわらず、彼らはあえてそう予想していたのである。

ポン・ジュノ
『パラサイト』は最多4部門で受賞! - ポン・ジュノ監督 - Jeff Lipsky / (c) A.M.P.A.S.

 しかし、それらの人たちも、作品賞を含む4部門での受賞は、さすがに望みが高すぎると考えていた。『パラサイト 半地下の家族』をずっと押してきた賞レース専門家のグレン・ウィップも、オスカー当日のロサンゼルス・タイムズ紙で、「僕の中には、同作は作品賞を取らないだろうと悲観的に見る自分がいる。そして、それは仕方がないと受け止めてもいる」と書いていたのである。文字通り歴史を変えたこの出来事は、そこまでのマグニチュードをもつ大衝撃だったのだ。

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 この最後の大逆転のおかげで、演技部門の受賞者が予想通り全員白人になってしまったことへの批判は、まるで聞かれなくなってしまった。実は、それも『パラサイト 半地下の家族』の快挙に関係している可能性はある。先月の全米映画俳優組合賞(SAG)でも個別の賞は全く同じ4人が受賞したが、トリの作品賞にあたるキャスト賞は『パラサイト 半地下の家族』がサプライズ受賞している。SAGは以前からオスカーよりもリベラルで多様性を強調してきており、この団体らしい結果に見えたが、同じことがオスカーでも起こったわけだ。

 この受賞結果は、世界に対してアカデミーの新しい姿を見せつけることになった。この4年間、アカデミーは、白人の高齢者ばかりの団体から、世界中から多様な人々が集まる団体に変わろうと努力をしてきている。そして今年はついに、一見、最もオスカーらしい映画である白人キャストの戦争映画(『1917 命をかけた伝令』)でなく、ダークなユーモアのある韓国のスリラーが勝ち取ることになったのだ。固く閉ざされていた門は、今、開いた。これからは、どんな国の、どんな映画も、オスカーへの夢をもつことが許される。オスカーは今、世界中の人たちにとって、もっと身近で、もっと大切で、もっと気になるものへと変化を遂げたのだ。

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