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『燃えよ剣』岡田准一、ナンバー2キャラに魅力 土方歳三はいつか演じると思っていた

映画『燃えよ剣』で新選組副長・土方歳三を演じる岡田准一
映画『燃えよ剣』で新選組副長・土方歳三を演じる岡田准一 - (C) 2021「燃えよ剣」製作委員会

 公開中の映画『燃えよ剣』で、新選組副長として幕末期を駆け抜けた男・土方歳三の生きざまを見事に体現してみせた岡田准一。これまで豊臣秀吉に仕えた石田三成(『関ヶ原』)、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という3人の天下人に仕えた黒田官兵衛(NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」)など、ナンバー2役で真価を発揮してきた岡田が、本作でも盟友・近藤勇を支える第2のリーダーとして躍動する。自ら“俳優・岡田准一の集大成”と位置付けた土方役、そこに込められた思いとは?

豪華キャスト集結の『燃えよ剣』

 『関ヶ原』(2017)に続き司馬遼太郎(遼のしんにょうは点2つ)の同名ベストセラー小説を映画化した本作は、岡田と原田眞人監督が再びタッグを組んだ歴史スペクタクル。土方役の岡田をはじめ、新選組局長・近藤勇に鈴木亮平、一番隊組長・沖田総司に山田涼介、初代筆頭局長・芹沢鴨に伊藤英明、土方が思いを寄せる女性・お雪に柴咲コウと、主役級のキャストが集結。幕府の権力復活を目指す佐幕派と、天皇を中心に新政権を目指す討幕派の対立が深まる幕末期を駆け抜けた、新選組の志士たちを描く。

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土方歳三はいつか演じると思った唯一の人物

 岡田自身、あまり「こういう役をやりたい」と周囲にアピールするタイプではないそうだが、土方だけは「いつか自分が演じるだろうと思っていた唯一の人物」だと目を輝かせる。その理由について、「直感ですね。言葉ではとても説明できません」と本人にもわからない様子だが、ただ、これまで演じてきた歴史上の人物とある“共通点”があるという。「石田三成も、黒田官兵衛もそうですが、なぜかNO.2キャラを演じることが多いんですよね。自分が信じたリーダーのために人を動かし、計画を実行する……陰の実力者として土方はその最たる人物なので、そういう面で心のどこかで魅力を感じていたのかも知れません」

 そして奇跡は、『関ヶ原』撮影中の雑談から生まれた。「原田監督やプロデューサーの方々と雑談をしている時に、『次、何やりたい?』というような話になって、『土方歳三なんかいいんじゃない? 『燃えよ剣』やろうよ!』という流れになって盛り上がったんです。でも、こういう話って、その場のノリもありますし、口約束なので、ほとんど実現しないことが多いんです。ましてや、こういう本格的な時代劇をエンターテイメントとして製作するのがなかなか難しい時代。だから、この企画が通ったこと自体が奇跡に近いと思います。運命を感じますね。僕も含め、映画界全体が土方さんに呼ばれたのかもしれません」と笑顔を見せた。

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触れるものしか信じない土方の美学を追求

 岡田の演技やアクションに対するストイックさは誰もが知るところだが、その目的はあくまでも作品の完成度を上げるため。演者である自分が取り沙汰されるのは本意ではないと岡田は言う。「キャラクターが愛される、というところにこだわって作ってきたので、僕としては、役柄で作品を語られたい願望がすごく強いんです。今回は、土方が『男の一生は美しさをつくるためのものだ』という言葉を残しているように、その生きざまを通して彼の半生が美しく見えるかどうかが勝負。チャーミングだけれど、命知らずのところもある人物なので、そこがすごく難しかったですね」

 土方の中にある美しさ……それを表現するために岡田は、「触れられるものだけに愛情を注ぐ」という彼のブレない姿勢を裏テーマに置いた。「例えば、お雪の唇に触れて思いを伝えるとか、『歳だよ』と言って病床の沖田にそっと手を添えるとか、土方は見えるもの、触れられるもの、自分の手が届く範囲のものを愛し、それを守るために懸命に生きました。そこに僕は美しさを感じるんですよね」

 ちなみに、「触る」という行為は、時代劇の現場ではとてもデリケートなこと。「例えば、出来上がった髪に触れることは、本来なら御法度。『床山の芸術をなんだと思っているんだ!』と激怒されても仕方がない聖域なんです」と伝統の重みを語る岡田。「ただ今回は、『触れる』という行為がとても大事で、原田監督からも賛同を得ていましたが、海外でも活躍するメイクアップアーティストの渡辺典子さん(映画『沈黙 -サイレンス-』(2017)など)が入ってくださっていました。通常、1時間以上かかるところを、典子さんが提案した洋かつらだと、わずか15分で完成します。しかも、『こんなに触ってもいいの?』っていうくらいどんどん触れられるんです」と驚きの表情を見せる。今、スタッフの若い世代が進化を求めていて、彼女から新しい技術を学びたいという人も増えているのだとか。本作は、時代劇の制作現場にも変化をもたらす革新的な作品でもあるのだ。

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「時代劇といえば岡田」と言ってもらえるように

 岡田は、並々ならぬ覚悟で挑んだ映画『燃えよ剣』を、これまで築き上げてきた俳優としてのキャリアの“集大成”と位置付ける。「若いころ、ジャニーズのアイドルとして映画に携わった時、エンターテインメントの王道とも言えるアクション映画が意外と少なかったので、『自分がそこに入って盛り上げたい』と思ったのを今でも覚えています。特に時代劇は、『絶対世界に売れるコンテンツ』だと信じていたので、そこから基礎を勉強し始めたのですが、時を同じくして、原田監督も世界に向けて歴史大作を作りたいという思いで始動されていたので、うまくタイミングが合った感じですね」と述懐する。

 原田監督の『関ヶ原』をはじめ、大河ドラマ「軍師官兵衛」(2014)、『蜩ノ記(ひぐらしのき)』(2014)、『散り椿』(2018)、そして本作と、傑作揃いの時代劇で、岡田は日ごろ積み上げた努力の成果を爆発させる。「これまで何本もの本格時代劇を背負ってきましたが、『時代劇といえば岡田』と言っていただけるように頑張ってきましたし、いろいろなことを学んできました。『燃えよ剣』は長年にわたり培ってきた、その集大成。この作品で1つの時代が終わり、また新たな時代を始めるという覚悟のもと、今ある自分のすべてをこの作品に出し切ったと言えます」。覚悟を持って臨んだ岡田准一の結晶をしっかりと目に焼き付けたい。(取材・文:坂田正樹)

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