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ウォールフラワー (2012):映画短評

ウォールフラワー (2012)

2013年11月22日公開 103分

ウォールフラワー
(C) 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

アウトロー高校生たちの瑞々しい青春模様

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 スクールカーストなどと呼ばれる以前から、歴然と存在してきた学校内の階級制度。いわゆる勝ち組の人気者グループと負け組の虐められっ子グループに大別されるわけだが、意外に見過ごされがちなのは、そのどちらにも属さないアウトローたちの存在だろう。学校社会を外野席から冷めた目で眺め、映画や音楽などの趣味も個性的。若さゆえの苦悩や疑問を抱えつつも、それなりに仲間同士で学園生活をエンジョイしている。筆者を含めた映画ファンの中には、そんな青春時代を過ごしたという人も多いに違いない。

 本作の主人公チャーリーは地味で内気な負け犬高校生。そんな彼が上級生の自由奔放な兄妹パトリックとサムに出会い、アウトロー高校生たちの輪の中へ入れてもらうことで、豊かな感受性を育み、淡い初恋を知り、青春の喜びも悲しみも学んでいく。

 キャストはどれも見事な当たり役だが、中でもエズラ・ミラーのエキセントリックな演技は最高に魅力的。全編に散りばめられた’80~’90年代UKロックの選曲も絶妙だ。見る者すべてを“あの頃”へと連れ戻し、思春期の夢と希望、不安と挫折を鮮やかに蘇らせてくれる珠玉の一本である。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

ザ・スミスと『ライ麦畑』――世代性も普遍性も強化

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

米国で1999年にMTVブックスから発売された原作小説は、邦訳が2001年に刊行された(訳・小西未来)。これが思春期男子の「中二病」的な自意識の発露といい、主観の告白調文体といい、J.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(小説内にも言及あり)のアップデートとして優れたものだった。

そして昨年になり、原作者のスティーヴン・チョボスキー自身が監督を務める形で映画化。全体の印象は、原作よりさらに彼の世代色(70年生まれ)が強くなったこと。時代設定は91~92年だが、80年代後半の学園模様と言った方がしっくりくる。例えば主人公のフェイバリット曲が、ザ・スミスの「アスリープ」なのは同じだが、映画では『ラウダー・ザン・ボム』(87年の米国編集盤)収録――というディテールが追加。ちなみに原作で記される“完璧な曲”は、デヴィッド・ボウイの「ヒーローズ」となった!

だが間口が狭くなったわけではない。むしろ世代性と共に私的な想いを濃厚に出すことで、普遍性も同時に強化されたはず。1951年に発表された『ライ麦~』の主人公ホールデン・コールフィールドが永遠の青春アイコンとなっているように。

この短評にはネタバレを含んでいます
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