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アラン・ドロンの再来ラブストーリーに欠かせない2人最強のフランス男優

わかる人にはわかる! 極私的フランスのイケメン特集

ジェラール・ドパルデュージャン・レノから、古くはジャン・ポール=ベルモンドリノ・ヴァンチュラ……。目鼻立ちの整ったわかりやすい美形では全然物足りない! 味のある個性こそが重視されるのがフランス男優だ。もちろん、ジェラール・フィリップアラン・ドロンのような直球ハンサムの例外もいるが、俳優たるもの、才能で勝負しろというのがフランスの流儀。そこで新星からベテランまで、フランス映画通のライターが厳選した注目の男優5人の魅力を解説します!
 
文/冨永由紀

「アラン・ドロンの再来」と話題沸騰の新星

才能重視といいつつも観る側の要求はだんだん高くなるもので、「個性も大切だけど、やっぱり外見も大事だよね」と、最近注目を浴びているのが『黒いスーツを着た男』ラファエル・ペルソナーズだ。「アラン・ドロンの再来」といううたい文句で、本国でも女性誌で特集を組まれる彼は現在32歳。細身のスーツ姿で、将来を約束されながら罪を犯してしまった男の転落と葛藤を演じる。役柄も若き日のドロンが演じそうな設定だし、雑誌掲載のポートレートもあからさまにドロンを意識したポーズの連発で、ちょっと狙い過ぎな感もあるが、編集者やカメラマンが悪ノリしたくなる気持ちはよくわかる。映像で動く姿より、一瞬を捉えた写真のなりきり度は相当なレベルなのだ。

個人的には、美貌にほんのり品の悪さとアクの強さが漂うドロンの継承者としてはブノワ・マジメルギャスパー・ウリエルらがふさわしい気がする。ドロンの再来と呼ぶにはペルソナーズはちょっと育ちが良すぎというか、あまり危険な香りがしないのだ。アクが少ない分、どうにでも化けられるので、『恋のベビーカー大作戦』のようなラブコメの主人公もいい感じ。アパートの隣人の赤ちゃんを預かる設定で、即席イクメンの奮闘ぶりがほほ笑ましい。スターというより、職人肌のうまい役者なのかも。

ラファエル・ペルソナーズ

「アラン・ドロンの再来」と人気沸騰のラファエル・ペルソナーズ
Jeff Vespa/WireImage/Getty Images

『黒いスーツを着た男』

ラファエル主演の『黒いスーツを着た男』(8月31日公開)
©2012­Pyramide Productions­France&3 Cinéma

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フランス特有の濃密なラブストーリーに欠かせない2人

フランス映画といえば、濃密なラブストーリーの宝庫。女も男も、老いも若きも、誰もが情熱的に行動する。そんな愛に生き、恋に殉じる男がばっちりハマるのがルイ・ガレルだ。父親であるヌーベルバーグの名匠、フィリップ・ガレル監督作品(『灼熱の肌』『愛の残像』など)をはじめ、とにかくただ女を愛するだけといってもいい役柄で作品を引っ張れるのは、今年30歳という若さを思えば、大した力ではないか? 世界的に注目されるきっかけとなったベルナルド・ベルトルッチ『ドリーマーズ』は「五月革命に沸く1968年が舞台」「名付け親はジャン=ピエール・レオ」と21世紀の今もヌーベルバーグの空気を漂わせているのも彼の特徴。レオとは風貌もどこか似ていて、万人受けする二枚目ではないが、ボサボサ乱れ髪に憂いをたたえた瞳の色っぽさは格別だ。

女優と接する際の物腰が何ともこなれていて、普段もいかにもモテていそう、とつい妄想。『美しいひと』で演じたレア・セドゥふんする教え子を愛する教師役も魅力的だが、『灼熱の肌』のモニカ・ベルッチ、『これが私の肉体』のジェーン・バーキン、と場合によっては親子ほどの年の差がある女優との恋愛映画で本領を発揮する。実生活でも19歳年上のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ(サルコジ前仏大統領夫人、カーラ・ブルーニの姉)と長く交際していた(現在のパートナーは『彼女が消えた浜辺』のヒロインで、同い年のイラン人女優のゴルシフテ・ファラハニ)。これから30代を迎え、青年から大人の男性への変貌が楽しみだ。

恋に流される優柔不断な男が似合うのはジェレミー・エルカイム『わたしたちの宣戦布告』『ベルヴィル・トーキョー』ではヴァレリー・ドンゼッリを相手に、女の目線で遠慮なく描かれる男の本性を体現してみせる。俳優として駆け出しの頃に出会ったドンゼッリとは2人の子をもうけたものの事実婚は解消。だが仕事の上では今も良きパートナーという割り切りも、いかにもフランス人的。エルカイムの演技には、風刺の効いた客観性があって面白い。すぐバレるうそをつく、焦ると逆ギレ、変に夢見がち、という女にとって厄介な男の側面をドンとさらけ出す。情けない! と落胆させつつ、母性本能をくすぐる甘い笑顔で、何となく憎めない雰囲気に持っていくのはさすが。それに加えて、ヒロインの邪魔をしない、ほどよい存在感は貴重だ。

ルイ・ガレル

アンニュイで、大人の男の色気を漂わせるルイ・ガレル
Elisabetta A. Villa/WireImage/Getty Images

「灼熱の肌

「灼熱の肌」
価格:4,179円(税込み)
発売・販売元:パラマウント ジャパン

ジェレミー・エルカイム

元パートナーのヴァレリー・ドンゼッリとは事実婚を解消しているが、今年のカンヌ国際映画祭にはヴァレリーを伴って仲良く出席したジェレミー・エルカイム。元サヤに戻る可能性も!?
Ian Gavan/Getty Images

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「最強のフランス男優」の条件を兼ね備えたマチュー・アマルリック

最後に挙げるのは、10代の頃から40代になった現在に至るまで安定した活動を続け、ハリウッドや監督業へも進出するなど活躍の場を広げ、ベテランの域に入った2人。

まずは昨年のフランス映画祭で来日時には特集上映も組まれるなど、安定した人気を誇るメルヴィル・プポー。母親が映画宣伝をしていたことから、9歳でチリの鬼才、ラウル・ルイス監督の『海賊の町』(日本未公開)で主演デビュー。天使のような愛らしい顔で殺人もいとわない少年を演じて、「恐るべき子役」としてスタートを切った彼は、10代から20代にかけては繊細な心の悩める美少年・青年役がはまっていた。1990年代後半の初来日時は、本人もまさに思春期をこじらせたような雰囲気で、このままでは年を取ると苦労しそう……と心配していたのだが、実際はそんなヤワな人ではなかった。ミステリアスな男から普通のお父さんまで、だてに長いキャリアを積んでいない器用さで役の幅を広げ続けているのが頼もしい。ウォシャウスキー姉弟の現場を体験したいから、と『スピード・レーサー』に出演。面白そうな企画があれば、世界のどこへでも飛んでいくし、若手とも積極的に組む。新作『わたしはロランス』では、24歳のグザヴィエ・ドラン監督のもと、女性になりたいという願望を実現させる教師を演じた。プロ・ミュージシャンの兄とバンドを組んでライブ活動もすれば、写真、イラストもこなし、自ら短編・長編映画も監督。俳優という仕事を軸に好奇心の赴くままの多彩な活躍だ。

『潜水服は蝶の夢を見る』『キングス&クイーン』でフランスのアカデミー賞といわれるセザール賞主演男優賞に2度輝き、名優の誉れ高いマチュー・アマルリックは、小柄(身長168センチ)な体躯(たいく)とキョロッとした瞳に一度見たら忘れられないインパクトがある。元々はスタッフとして映画界入りして、俳優として起用されるようになったというが、あんな顔の青年がセットにいたら、絶対にカメラの前に立たせてみたくなるはずだ。その瞳は狂気も正気も、善良さも邪悪さも、何でも自在に映し出す。だからこそ、『潜水服は~』で演じた、病で左まぶたしか動かせなくなった男はこの上ない適役。一方、『クリスマス・ストーリー』では路上で直立不動のままバッタリ倒れてみせたり、身体的な演技でも魅せる。『007/慰めの報酬』をはじめ、国際派としても活躍中。デヴィッド・クローネンバーグ監督作『コズモポリス』で怪演を見せたのも記憶に新しい。「俳優なんて動物と同じ。アイデアとか、四の五の言うようなやつは殺した方がいい」(2010年の来日時の発言)という過激な哲学も、自身も映画監督である彼ならではの発想だ。主演を兼ねた監督作『さすらいの女神(ディーバ)たち』は第63回カンヌ国際映画祭監督賞に輝いている。フランス国立映画学校(La femis)で教鞭(きょうべん)を取り、後進の育成にも積極的。さらにロマン・ポランスキー監督の『ラ・ヴェヌス・ア・ラ・フーリュール(原題)/ La Venus a la Fourrure』ウェス・アンダーソン監督の『グランド・ブダペスト・ホテル(原題)/The Grand Budapest Hotel』など、俳優としても楽しみな新作が控えている。存在感と知性、才能。最強のフランス男優の典型は、この三拍子を兼ね備えているのだ。

メルヴィル・プポー

天才子役として脚光を浴びながら後にすさんで低迷していくスターが多い中、並外れた情熱と行動力で着実にキャリアを築き上げてきた努力家のメルヴィル・プポー
Foc Kan/WireImage/Getty Images

メルヴィル

24歳のカナダ人の監督がメガホンを取った『わたしはロランス』(9月7日公開)で、女性として生き始める教師という難役に挑んだメルヴィル

マチュー・アマルリック

ロマン・ポランスキー監督作『ラ・ヴェネス・ア・ラ・フーリュール(原題)/ La Venus a la fourrure』を引っ提げ、カンヌ国際映画祭に来場したマチュー・アマルリック。童顔&コケティッシュな魅力に惹き付けられます
Venturelli/WireImage/Getty Images

「潜水服は蝶の夢を見る」

「潜水服は蝶の夢を見る」※DVD
価格:1,890円(税込み)
発売元:アスミック
販売元:角川書店

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富永由紀プロフィール

映画ライター。小学生のとき、『悪魔が夜来る』でアルレッティの妖艶さにヤラれて以来、フランス映画が人生のお手本。国を問わず、人も映画もかっこいいのが好き。真っ暗な場所で大勢の人と一緒に大きなスクリーンを前にしないと、映画を観た気がしない。

アラン・ドロンの再来ラブストーリーに欠かせない2人最強のフランス男優
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