シネマトゥデイ

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 世界中のゲームファンから熱狂的な支持を集める大ヒットゲーム「メタルギア ソリッド」(KONAMI)シリーズの小島秀夫監督が絶大な影響を受けた伝説のアクション映画『マッドマックス』。シリーズの生みの親にして、小島監督が「神」とまで呼ぶジョージ・ミラー監督が、最新作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を引っ提げ来日! 対面を果たしたゲームと映画界の“神”同士が、多大なリスペクトを込めながら、『マッドマックス』を語った。(取材・文:入倉功一/Irikura Koichi)

■小島秀夫『怒りのデス・ロード』に涙!

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小島秀夫監督

Q:お二人は今回が初対面になりますね。

小島秀夫監督(以下、小島監督):もう、僕の神ですよ!

ジョージ・ミラー監督(以下、ミラー監督):あなただって、神様でしょう!

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ジョージ・ミラー監督

小島監督:いやいや(笑)、もう、興奮しています。僕は高校1年生のときに『マッドマックス』を、そして高校3年生で『マッドマックス2』を観たんです。中でも『マッドマックス2』は特別で、オールタイムベスト5に常に入るほど大好きな映画。僕のゲームもジョージ・ミラー監督からいろいろな遺伝子を受け継いで作られているんです。ミラー監督がいたから僕がいるというか。なので、もう見つめられたらしゃべれないですね。

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車に乗った侍映画のような『マッドマックス』©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

ミラー監督:うれしいですね! 実は当時、『マッドマックス』を世界で最初に認めてくれた国は日本だったんです。わたしにとっても最初の映画で、どう受け入れてもらえるかわからなくて心配ばかりしていたのですが、日本は『マッドマックス』を、車が登場する侍映画のように捉えてくれました。

小島監督:確かに、『マッドマックス2』は『七人の侍』などの黒澤明監督の映画に近かったですね。

ミラー監督:その通り。もっと言えば『用心棒』に似ているんです。当時はDVDなんてないわけで、(ミラー監督の母国)オーストラリアで黒澤作品を観るには、映画祭に行くしかなかった。そんな状況でも数々の黒澤映画を観て、『マッドマックス』というのは、まさに侍映画のようなものだと自分でも感じました。さらに、この物語は、さまざまな形で世界中に伝わっている普遍的な物語、アーキタイプ・元型のような物だということに気が付きました。

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ミラー監督が『マッドマックス2』のパンフにサイン!「V8」の文字が!

Q:小島監督は公開当時のパンフレットを持ってこられていましたよね。

ミラー監督:(パンフレットを見ながら)これは素晴らしい、美しいね!

小島監督:『マッドマックス2』が公開されたのが高校3年生の年末で大学受験があって、映画好きの友達やクラスの連中に「映画なんて行けるか」! と言われて。一人で観に行ったのを覚えています。

ミラー監督:本当ですか(笑)? ちゃんと受験には受かった?

小島監督:大丈夫でした! でもそれから、年に何回も『マッドマックス2』は観ています。なので、この映画を超えるものはないと思っていたんですけど、ミラー監督が『怒りのデス・ロード』で自ら超えていったという感じでしたね。

ミラー監督:うれしいことを言ってくれるね!

小島監督:ショットガンが不発だったりオルゴールが出てきたりといった、『マッドマックス2』を思わせるギミックも効いているものだから、観ていて涙が出てきましたよ!

■『マッドマックス』と小島作品の共通項

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©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

Q:ご自身の元型ともいえる『マッドマックス』は、小島監督の作品にどのような影響を与えたのでしょう。

小島監督:たくさんありますけど、一つはカメラワークですね。ゲームは自分でプレイをするものなので、あまりに客観的なカメラワークだと、映画と違ってプレイヤーが作品から離れてしまうんです。だけどミラー監督のカメラは観客と一体になるというか。『マッドマックス2』でいえば、石油精製所を眺めているマックスのシーンで、カメラがマックスの向こう側に行かない。マックス側からとのぞいている望遠鏡からの景色で見せるカットなんかがすごく上手かったので、ゲームにも取り入れています。

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カメラワークについて解説するミラー監督

ミラー監督:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』もいろいろな視点から撮っているのですが、今回はそのために、エッジ・アーム・システムというカメラシステムを使用しました。これは四輪駆動のトラックにカメラ付きのクレーンを搭載したもので、3人のオペレーターが搭乗するんです。一人は有能な運転手で一人はクレーンの操縦者、そしてもう一人はカメラオペレーター。わたしはその後ろでモニターを見ているわけですが、それこそビデオゲームを操っているような感覚でしたね。地上数センチの砂ぼこりの中から一気に空まで昇ったかと思うと、車の中にカメラが入りこむ。まるでアフリカの砂漠が舞台のビデオゲームをプレイしているようでしたよ!

■セリフなしでもOK!強烈なキャラクターたち!

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シルエットだけで伝わるキャラ作りも『マッドマックス』の魅力

小島監督:あと僕が『マッドマックス』で好きなのはキャラクターですね。『怒りのデス・ロード』もそうですが、セリフはなくてもシルエットや服装、装備品、動きだけでキャラが立っているのが素晴らしい。これもゲーム創りにおいて、すごく参考にさせてもらっている部分です。

ミラー監督:わたしは『マッドマックス』を、いわば“ビジュアルミュージック”のようなものだと捉えているんですよ。セリフがとても少ないだけでなく、イメージをつなげていくことで観客が映画に入り込める作品になるように意識した。だからこそ、カメラワークの感覚もゲームに近いものだと思っているんです。

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『マッドマックス』の魅力を力説する小島監督

小島監督:砂漠が舞台で、登場人物はみんな砂まみれ。カラフルな衣装なんて着ていないのに、カメラが引いても、体格や姿勢だけで誰だかわかるほどキャラが立っている。これは本当にすごいことです。さらに、そのキャラの全てをセリフで説明するようなダメな映画も多いですが(笑)、『マッドマックス』はしゃべらなくても、その人物の背景や特徴が出ていますからね。

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音が無くても楽しめるなら、音アリなら魅力は倍増する ©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

ミラー監督: わたしの好きな言葉に、アルフレッド・ヒッチコック監督が遺した「できるだけ字幕を追わないで楽しめる映画を作りたい」(良い映画なら、音を消しても、観衆は何が起こっているか、はっきりと思い描くことが出来るだろう)というものがあります。映画はビジュアル(視覚的)のメディアなわけですから。いちいち説明なんていらないんですよね。

Q:『怒りのデス・ロード』には、まるでサイレント映画のようだ、という評価もありますよね。

ミラー監督:実は編集のマーガレット・シクセルは、この作品を最初、サイレント映画として編集したんです。無声映画として成立する作品を作ることができれば、音楽とセリフを入れることでもっと迫力のあるものになる。わたしは、映画作りとは、“目で聞いて、耳で観る”ものだと考えているんですよ。

小島監督:その点も、ゲーム作りで『マッドマックス』を参考にしている部分ですね。ゲームは、プレイヤーが操作をしているときは、主人公以外の人物しかしゃべることができないんです。カットシーンでダイアローグを付けたりはできますが、プレイ中はプレイヤーと一体になるため話さない。そのため、セリフに頼らず、いかにキャラクターを特徴付けるかというのが、ゲームの難しい部分なので。

■小島監督、『マッドマックス』ゲーム化を熱望!

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©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

Q: ちなみに小島監督は以前、『マッドマックス』をゲーム化したいと語っていましたよね。

ミラー監督:それは面白い! 『怒りのデス・ロード』のゲームはアバランチ・スタジオズというメーカーが作っているのだけれど、いつか一緒にやりたいね!

小島監督:いやもう、めっちゃ面白いものになりますよ(笑)。

ミラー監督:わかっているよ! 実は、わたしの19歳と15歳の息子たちが「メタルギア ソリッド」をプレイしていて、本当に大好きなんだ。

小島監督:9月には新作(「メタルギア ソリッド Vファントムペイン」)が発売されます。

Q:「ファントムペイン」に登場する主人公ヴェノム・スネークは、すごくマックスに重なる部分が多いですよね。

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©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

小島監督:偶然ですけど、(シャーリーズ・セロン演じる女戦士)フュリオサみたいに義手も着けていますし。

ミラー監督:(ヴェノム・スネークのフィギュアを手渡され)おお、確かにすごく『マッドマックス』っぽいね! このスネークが眼帯をしているのがいい。CGキャラクターの場合、両目が見えているとどうしても違和感が出てしまうので、片目の方がリアルに見えるんです。小島監督はクレバーな選択をしたと思います。

小島監督:さすがCGのプロならではの観点ですね。(2006年のCGアニメーション)『ハッピー フィート』を作られただけあるというか。

■ファミリー映画から『マッドマックス』への帰還

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家族映画を経て、最高に「マッド」な映画を作り上げた!©2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

ミラー監督:あれを作るのは、苦労をしましたから……。

小島監督:『ハッピー フィート』から『怒りのデス・ロード』を撮れる人なんて、普通はいないですよ!

ミラー監督:1970年代に『マッドマックス』を撮ったときは子供がいなかったものでね。その後、子供ができてファミリー映画ばかり観るようになって、『ハッピー フィート』や『ベイブ/都会へ行く』といった映画を作ったんです。ただ、もう子供も十分に育った。だから『マッドマックス』に戻ってきたというわけですよ!

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将来のコラボを願い、ガッチリと握手!

Q:70代にして『怒りのデス・ロード』を作るミラー監督も、50代で「ファントムペイン」を作る小島監督も、狂気に近い創作意欲を持っていると思います。

小島監督:『怒りのデス・ロード』の製作には、15年くらいかかったんですよね?

ミラー監督:脚本を書き終わって準備ができたときが2001年だったのですが、そこで911全米同時多発テロが起こりました。そのため製作が遅れ、10年の月日が経ってしまった。それからもさまざまなことがあって、時間が掛かってしまったんです。

小島監督:僕も「ファントムペイン」は、ゲームエンジンの開発を含めると7年もかかっています。他の作品と並行してですけど。

ミラー監督:それはすごいな! でも大丈夫、小島監督はまだまだとても若いじゃないですか!

小島監督:いやいや、そんなことないですよ!

Q:ミラー監督の影響を受けた小島監督が名作ゲームを生み、そのゲームで育った世代が生まれているというのはとても興味深いことですね。

ミラー監督:その通り、まさに文化の起こす革命ですよ!

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全編ノンストップのハードアクションが展開する『怒りのデス・ロード』とは裏腹に、温和な笑顔と紳士的な態度が印象的だったミラー監督。一方。『マッドマックス2』に登場する暴走族の首領ヒューマンガスのTシャツで対談に臨んだ小島監督のテンションは、無邪気な映画少年そのもの! ミラー監督による「V8」のサインが描かれた『マッドマックス2』のパンフレットを手に、「また会いましょう」と語る笑顔は、ファンも願ってやまないであろう。二人のコラボレーションを予感させた。

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は全国公開中
オフィシャルサイト

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