「火星の女王」にハリウッドSFを連想する声 最終話で壮大な謎が鮮やかに

スリ・リン、菅田将暉ら国際色豊かなキャストも話題のNHKドラマ「火星の女王」(NHK総合、BSP4Kで毎週土曜よる10時~11時29分、全3回)の最終話となる第3回が27日に放送され、人類の脅威ともなりうるエネルギーを秘めた“謎の物体”を巡る「誰が敵で味方なのかわからない」サスペンスフルな展開や、ハリウッド映画を彷彿とさせる火星の描写などが注目を浴びた(※一部ネタバレあり)。
「地図と拳」で直木賞を受賞した小川哲の小説を原作に、火星に10万人が移住した100年後の世界で、未知の力を持った謎の物体が現れたことで新たな時代が動き出すさまを描く本作。第3話では、火星を支配する「ISDA」の官僚であるファン総長(サンディ・チャン)、民間企業「ホエール社」のCEO・マディソン(デイェミ・オカンラウォン)ら“謎の物体”の利権を手に入れようとする者たちの争奪戦が展開。その中で“謎の物体”の驚くべき正体が、科学者のリキ・カワナベ (吉岡秀隆)らによって明かされていった。
冒頭は、主人公・リリ(スリ・リン)がISDAの地球帰還計画に隠された秘密を火星の住民たちにリークする場面からスタート。期限までに火星から撤退しない場合、生命維持装置を止められ死ぬことになるという恐ろしい事実だった。
第3話で特に注目を浴びた人物が、カワナベを通して謎の物体を手に入れたマディソン。ISDAに追われるリリを助けようとするも、早々から「マディソンは大丈夫なのか?」「一緒で大丈夫なのか?」「物体を奪うつもりなのでは?」と疑念を抱く視聴者が続出。カワナベの手から謎の物体が入ったケースを取ったり、カワナベの部下であるAJ(寛一郎)に「宇宙服なしで外に出たらどうなるか知ってるかい?」と物騒な話をし始めたり、とにかく怪しげな言動が目立ち、したたかな人となりも相まって「もう誰を信じていいのかわからない」「食えない奴」「マディソンは味方なのか、敵なのかよくわからなくなってきた」「マディソンの狙いがわからん」と視聴者を翻弄しまくった。
シーンとしてSNSを沸かせていたのが、カワナベがリリを連れて火星の地表を歩く下り。これまでも『ブレードランナー』『トータル・リコール』などのSF映画を連想する声が多く上がっていたが、二人が低酸素に陥りながら砂嵐の中をさまようなかで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『DUNE/デューン 砂の惑星』『オデッセイ』などのタイトルが上がっていた。
そして、驚くべきは謎の物体の正体。カワナベはリリがこの物体に何らかの影響を与えると見て、悲願の実験に挑戦。実験を危険視するマディソンと同様、「科学者ってほんとうにさぁ…」「実験ドキドキ…」とヒヤヒヤする声もあったが、やがてリリの声が物体を起動させること、火星と地球にある物体にワームホームが生じることで同時通信が可能になるという結論だった。映像としては特殊なCGなどが用いられることはなく、リリが地球にいる恋人のアオト(菅田将暉)と通信するロマンチックなシーンで「物体を通して会話してるw」「糸電話みたい」といった声もあった。
そのほか、22年前にタグレスのコミュニティーの創始者であるシュガー(ソウジ・アライ)が殺害された“宇宙港事件”の真相、シュガーの妹でリリを拉致したISDA火星副支局長・ガレ(シム・ウンギョン)の目的、火星にビラをバラまき住民を扇動した“もう一人のシュガー”の正体、ファン総長が謎の物体を手に入れようとする目的などが鮮やかに回収。リリが実の母であるエマ(UA)と同じ歌を弾き語るシーンでは「すごく綺麗」「まっすぐでいいなあ」「泣ける」「沁みる」「いい歌」と、視聴者を魅了していた。脚本はアニメ「けいおん!」や「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの吉田玲子、演出は「きれいのくに」(2021)、「17才の帝国」(2022)などの西村武五郎ら。
なお、本作を1話49分×6本に再編集したスペシャルエディションが来年、NHKBSとBS4Kで放送される。(石川友里恵)


