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10月の5つ星映画5作品はこれだ!【第77回:今月の5つ星】

 夏の暑さが落ち着いた10月は、芸術をゆっくりと堪能するのにはもってこいのひと月。黒沢清監督が日本人で初めてカンヌ国際映画祭ある視点部門の監督賞を受賞した『岸辺の旅』や、同映画祭で脚本賞を受賞したロシア映画『裁かれるは善人のみ』大根仁監督による『バクマン。』、ピーターパンの実写化『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』、そして、キアヌ・リーヴスがキレる『ジョン・ウィック』の激アツぶりも要チェック。

岸辺の旅
(C) 2015「岸辺の旅」製作委員会/COMME DES CINEMAS

夫婦の愛を通して描かれる「死者と共に生きること」のいとおしさ

『岸辺の旅』

 「俺、死んだよ」。そう告げるのは、ある日突然帰宅した3年間行方不明だった夫。その設定だけでも心をくすぐられる本作は、幽霊になった夫と旅をするという超自然的な要素を通して夫婦の愛と魂の旅路を活写した究極のラブストーリー。第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門で日本人初となる監督賞に輝いたことでも話題になっている。死者と生者が等しく存在する、幻想的でありながらどこか身近な世界というのは、数多くのホラー作品を手掛けてきた黒沢清監督の得意とするところ。生きていながら死者を思わせるほどの透明感を放つ妻役の深津絵里、幽霊であるにもかかわらず言動に温かさを感じさせる夫役の浅野忠信の演技は、生と死の境界線が曖昧な本作の世界観にぴったりはまっている。そんな二人が旅するこの世とあの世を分かつ岸辺。その岸辺はわれわれが生きている現実世界そのものであり、優しいまなざしで描かれた「死者と共に生きること」のいとおしさが胸に染み入る。(編集部・吉田唯)

映画『岸辺の旅』は10月1日より公開

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バクマン。
(C) 2015 映画「バクマン。」製作委員会

こだわり満載! 漫画への愛にあふれた青春ドラマ

『バクマン。』

 大場つぐみ小畑健による同名漫画を原作に、週刊少年ジャンプでの連載を目指す2人の高校生の奮闘を描いた青春ドラマ。主人公・真城最高(佐藤健)と高木秋人(神木隆之介)、ヒロイン・亜豆美保(小松菜奈)をメインに、山田孝之新井浩文桐谷健太などの実力派俳優を加えて、個性が際立ったキャラクターたちが繰り広げる群像劇の側面も持っている。サカナクションが手掛ける音楽やCGを駆使した漫画家同士のバトルシーン、プロジェクションマッピングを使った撮影、原作者による劇中の原稿といったさまざまな試みやこだわりが随所に表れている。情熱と現実のはざまでもがく若者を劇的に描く一方で、ジャンプ編集部をよりリアルな形で「再現」している本作。その中でも、編集長・佐々木役のリリー・フランキーが持ち前のドライなまなざしで、“熱血がインフレ気味”の空気を引き締めている。熱烈なジャンプファンでなくとも好きな作品が一つでもあれば懐かしくなってしまうエンドロールなど、漫画に対する愛情にあふれた作品で、鑑賞後、無性に漫画が読みたくなること請け合いだ。(編集部・那須本康)

映画『バクマン。』は10月3日より公開

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ジョン・ウィック
(C) 2014 PPNY, Inc.All Rights Reserved.

キアヌがまた歴史を作った!

『ジョン・ウィック』

 公園のベンチで一人寂しく食事する姿や激太り騒動など、映画とは別のところで話題を集めていたキアヌ・リーヴスが、スターとして完全復活を遂げた新作アクション。見た目は若々しいが、実はすでに51歳となったキアヌが、『ハートブルー』『スピード』のころのキレを取り戻したかのような身のこなしでスタイリッシュアクションに挑んだ。『マトリックス』でカンフーを身に付け、その魅力を世界中に広めたキアヌは今回、カンフーと銃(ガン)さばきを融合させた新たな武器“ガン・フー”を駆使して、これまで以上の殺人マシンぶりを発揮。時間をかけ、緻密に組み立てられたことが見て取れる殺陣で、次々と敵を殺していくキアヌの姿は実に美しい。『マトリックス』がそうだったように、アクション映画の歴史に新たな流れを生んだ一本として、長く語り継がれていく作品であることは間違いない。殺し屋稼業を引退していたジョン(キアヌ)が、「病気で死んだ妻が贈ってくれた犬を殺されたから」という理由でロシアン・マフィアへの復讐(ふくしゅう)に乗り出す、下手に凝らないシンプルな物語も魅力的だ。(編集部・入倉功一)

映画『ジョン・ウィック』は10月16日より公開

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PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~
(C) 2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

ピーターパンがピーターパンになる前の物語

『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』

 本作のピーターパンは、まだ自分が何者なのか気が付いておらず、ママに会いたいと望む孤児のピーター少年だ。突然海賊たちに連れ去られたネバーランドで、ママの行方を捜すことになるのだが、仲間になったのはまさかのフック船長。しかもそのフック船長は部族のプリンセスのタイガー・リリーといい雰囲気に……。斬新な設定もさることながら、予想外の配役にも驚かされる。悪役黒ひげにふんするのは、ハリウッド屈指のナイスガイとして知られるヒュー・ジャックマン。極悪非道なキャラクターをヒューが演じること自体新鮮だが、注目すべきはすこぶる不細工な見た目。白塗りで目は充血しクマだらけ、さらにはヅラ疑惑まであり、そのビジュアル的な衝撃に要注意だ。独自の解釈で本作を描いたのは、『プライドと偏見』『つぐない』『アンナ・カレーニナ』ジョー・ライト監督。数々の文芸映画を手掛けてきた監督だけに、観る者を物語の世界に引き込む演出はお手の物。人魚やティンカー・ベルといった期待通りの夢の国の住人を登場させつつ、ピーターの出生の秘密が明かされるなど、新たな展開も盛り込まれている。ネバーランドにどっぷり浸って、魔法をかけられたような気分を味わえる作品だ。(編集部・香取亜希)

映画『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』は10月31日より公開

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裁かれるは善人のみ
(C) 2014 Pyramide / LM

想像が膨らむ解毒ムービー

『裁かれるは善人のみ』

 世界三大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した人間ドラマ。ロシアの田舎にある大切な家と土地を腹黒い市長に奪われる危機にひんしたおじさんの奮闘を、妻、実子、旧友との複雑な関係を交えながら描いている。受賞の要因として挙げられるのが、美しさと醜さやセリフの緩急などのコントラストから、窮地に立たされた人間の心情や落胆を静かに映し出したこと。また、整備されていない凸凹道を車で走り、画面が上下するという演出で待ち受ける苦難を示した表現力も豊か。人間誰にでも毒はあり、さらなる悪を目の当たりにすることで観る者の心を浄化させる作用さえ感じる哲学的な面もある。主人公のおじさんは、酒飲みだけど悪人ではない。そんなおじさんに不幸が重なっていく姿を見ていると切なくて仕方ないが、ラストに謎を残して想像をかき立てる面白さがこの映画にはある。(編集部・小松芙未)

映画『裁かれるは善人のみ』は10月31日より公開

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