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作品評:『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

マッドマックス 怒りのデス・ロード
作品賞、監督賞を含む10部門にノミネートされた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 『ロッキー』『スター・ウォーズ』など1970~80年代の大ヒット作が再登場した2015年、サプライズとなったのが『マッドマックス』の復活である。未来を舞台に蛮族がひたすら戦い続けるこのシリーズは、その過激さで話題を呼んだが、1990年代以降は熱狂的ファンの間で語り継がれてきた程度。良識派からの評価は低く、公開当時も本国オーストラリアやファンタスティック系を除けば、映画賞とあまり縁のない存在だった。(文・神武団四郎)

 ところが復帰作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、多くの評論家協会賞やナショナル・ボード・オブ・レビューで主要な賞を獲得、ゴールデン・グローブ賞では作品、監督賞にノミネートされるなど賞レースで大暴れ。アカデミー賞でも作品、監督賞を含む10部門にノミネートと大躍進を遂げた。

マッドマックス 怒りのデス・ロード
竿から竿へと飛び移りながら、マックス一行を追い掛けまくる敵陣の姿など、世界観が強烈!(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 『怒りのデス・ロード』は、核戦争で荒廃した未来世界で、流れ者のマックスが残忍な独裁者から逃亡中の女性たちを救う物語。設定やストーリーは極めてシンプル、全編にわたり異様なカスタムカーが激しいチェイスを繰り広げる、ストレートなバイオレンス・アクションである。低予算映画としてスタートした『マッドマックス』シリーズの売りは、スタントドライバーによる命懸けの危険なチェイス。30年の時を経て製作された今作も、お馴染みの迫真の映像群が大きな話題を呼んだ。

 スペクタクル描写でいえば、昨今のCG映像も作り物とは思えないリアリティーを誇っている。カーアクションに関しても、いまだ主流は実写による撮影だ。そんな中『怒りのデス・ロード』が特出していたのは、スタントマンを乗せたまま車輌がもんどり打つなど“過激”の質の高さ、車輌などの物質、時間のボリューム。CGスペクタクルを見慣れた観客を唸らせたのは、スクリーンを通して伝わってくる「どうだ!」と言いたげな限界突破の精神だろう。

マッドマックス 怒りのデス・ロード
『ハッピー フィート』(2006)でアカデミー賞長編アニメ賞を受賞したジョージ・ミラー監督が、監督賞に初ノミネート!(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 また車はもちろん、衣裳から装飾品、武器など小道具まで手が込んでいるのも本作の魅力。おかげで主な舞台が殺風景な大地であるにも関わらず、貧弱さを感じさせないどころか、贅沢な印象すら与える。

 そんな本作を監督したのが、過去3作を手掛けてきた生みの親ジョージ・ミラーだ。型破りの過激さ、危険度で注目を浴びる本シリーズだが、第一弾『マッドマックス』からミラーの演出は基本に忠実。カメラワークからカット割り、コマ落としやスローモーションなど特殊効果や音楽の使い方まで教科書的で、バイオレンスシーンも直接描写より、犠牲者の靴や目撃者の表情など細かいカットを重ねて描いてきた。また映像による状況やキャラクターの説明という、映画本来の手順を徹底しているのも彼の特長だ。それは『怒りのデス・ロード』も同様で、アクション演出の巧さはもちろん、例えば冒頭のマックスとフュリオサの格闘シーン一つにも各キャラの性格やトラックの仕掛けなど多くの情報が込められているのがよくわかる。マッドな世界を支えているのは、奇をてらわない正攻法なスタイルと高い演出力で、ミラーの監督賞ノミネートも当然なのだ。

マッドマックス 怒りのデス・ロード
おしくもノミネートは逃したが、丸刈り頭でぶっちぎりの存在感を放つフィリオサ役のシャーリーズ・セロン(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

 シャーリーズ・セロンが女優賞にノミネートされてもよかったのではと思うが、おおむね予想以上に票が集まった『怒りのデス・ロード』。この手の作品は、美術や音響効果など画や音に特化した部門でお茶を濁されることが多いのだが、本作はそれに終わらないスペックを持っているのは確か。2月29日の授賞式を期して待ちたい。

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は一部エリアにてリバイバル上映中 ブルーレイ&DVDセット(価格:3,990円+税)、3D&2Dブルーレイセット(価格:5,990円+税)発売中

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