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性同一性障害の現代アーティストを彼から彼女になる8年間を『ウォーターボーイズ』俳優・松永大司監督が描く力作上映

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左が松永大司監督、右がピュ~ぴる
左が松永大司監督、右がピュ~ぴる - Photo:Harumi Nakayama

 性同一性障害の現代アーティスト・ピュ~ぴるの2001年~2008年の8年間を追ったドキュメンタリー映画『ピュ~ぴる』が、オランダで開催中の第40回ロッテルダム国際映画祭の特集上映「アウト・オブ・ファッション」のオープニング作品に選ばれ、現地時間27日、上映のほかピュ~ぴるのパフォーマンスが行われた。

 同作品は、クラブで目立つために独創的なファッションを自ら作成していたピュ~ぴるが、国際的アーティストへと羽ばたいていく姿を、長年の友人である松永大司監督がカメラに収めたもの。クラブ仲間だった2人が偶然再会した2001年当初、松永監督は映画『ウォーターボーイズ』(01)などで俳優として活躍する一方、映画監督も志していたという。それを知ったピュ~ぴるが「じゃ、私の生き様を撮って」と映画製作を依頼したことがきっかけだという。着地点の見えない中でスタートしたが、アーティスト・ピュ~ぴるの成長のみならず、去勢手術を受けて「彼」から「彼女」へと大きく変ぼうしていく過程や、そんなピュ~ぴるを見守る家族たちの葛藤なども赤裸々にカメラの前で明かされており、性同一障害に対する理解を深める上での貴重な記録となった。

 映画はすでに韓国・全州国際映画祭やフランスのパリ映画祭などでも上映されているが、松永監督とピュ~ぴるが2人揃って映画祭に参加するのは初めて。特にピュ~ぴるは、映画祭そのものが初参加とあって「上映中は、自分でパフォーマンスする時よりもドキドキしちゃった」という。しかし終わってみれば、オランダは同性結婚を認めているセクシャルマイノリティに寛大な国だけあって、温かい拍手に包まれた。

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 上映後の質疑応答で、映画の感想を聞かれたピュ~ぴるが「この8年間走り続けて来たので、忘れていた当時の気持ちを思い出し、自分のことながら涙を流してしまいました」と答えると、会場から「おぉ……」と同情のため息がもれた。さらに劇中、ピュ~ぴるが失恋を経験することから「今、彼氏はいますか?」という直球の質問が飛んだ。恥じらいながら「ハイ、います。今、幸せです」と答えると、良かった! と言わんばかりの拍手まで沸き起こった。

 松永監督は「カメラを回し始めたころは焦点も合ってないような映像だったけど、8年間で映画作りの勉強になったし、去勢手術の同意書にサインをするなど普通なら体験出来ないような経験もさせてもらった。何より、カメラの前でこれだけさらけ出してくらたピュ~ぴるに感謝したい。彼女の力なしでは、映画は成立しなかったと思う」としみじみ。一方、本作の上映に合わせて、ロッテルダム市内にあるボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館で作品も展示されているピュ~ぴるも「映画を撮って欲しいとは思ったけど、発表の場がこんな所になるとは思ってもみなかった。これからも死ぬまで、自分が生きた証を残せるよう、美しいモノを作り続けて行きたい」とアーティストとして新たな刺激を得たようだった。

 松永監督はすでに『ピュ~ぴる』の続編の製作に入っている。(取材・文:中山治美)

映画『ピュ~ぴる』は3月26日(土)よりユーロスペースにて公開

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