平沢 薫

平沢 薫

略歴: 映画ライター。視覚に訴えかけるビジュアルの派手な映画がお気に入り。「SCREEN」「SCREEN ONLINE」「Movie Walker」「日経エンタテインメント!」「DVD&動画配信でーた」「キネマ旬報」「SFマガジン」「映画.com」等で執筆。他に「キングスマン:ゴールデン・サークル」ノベライズ、「グレートウォール」ノベライズ、「X-ファイル 2016」ノベライズ、「フランケンウィーニー」ノベライズ、「「ターミネーター:新起動/ジェニシス ビジュアルガイド」翻訳など。ウェブで映画やTVドラマのニュースを追いかけ中

近況: 「トゥルー・ディテクティブ」シリーズ第4弾、ジョディ・フォスター出演の「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」@U-NEXTを視聴中。夜が続くアラスカの町。先住民たちの間の言い伝え。超常現象のように見える事件。これまでのシリーズとはまったく違う雰囲気が新鮮。

平沢 薫 さんの映画短評

全1,399件中1~5件を表示しています。 Next »
  • マッドマックス:フュリオサ
    アニャ・テイラー=ジョイの眼差しが強い
    ★★★★

     フュリオサを演じるアニャ・テイラー=ジョイの眼差しが激烈。彼女の周囲でさまざまな出来事が起きるが、その目が放つ光は決して緩むことがない。その眼光にシビレる。

     広大な赤い砂漠を、奇怪な風体の無法者たちが、派手に改造した自動車やオートバイで縦横無尽に走り回る光景が何度もスクリーンに溢れて、『マッドマックス』の原点を再確認させつつ、アクションシーンの強度とスピードはアップデート。激闘シーンはそれぞれ長く、ほとんどセリフがなく、複数の人間が何をして何が起きているのかが継ぎ目なく描かれて、気づくと息を止めている。前作から続投のジャンキーXLによる心臓の鼓動のような音楽が、高まる心拍数と同期する。

  • 関心領域
    音で語る。極端な演出法が強烈
    ★★★★★

     音で物語を描く、極端な演出が強烈。画面には優雅な生活をする一家が映し出され、隣のアウシュビッツ収容所で起きている忌まわしい出来事はすべて"音"でのみ描かれる。その音は、一瞬も途切れることがない。人々は常に全身がフレームに入るような離れた位置から捉えられ、一度も顔がアップにならないのは、これがある特定の個人を描くものではなく、人間というものを俯瞰的に捉えたものだからだろう。その光景が、徹底的に端正で清潔な光に満ちた映像で映し出される。

     そしてもちろん、見たくないものは見ず、聞きたくないものは聞かずに暮らす彼らの姿は、距離の差こそあれ、隣について同じ態度で生活する私たち自身の姿でもある。

  • シド・バレット 独りぼっちの狂気
    シド・バレットを悲劇的伝説から解き放つ試み
    ★★★★★

     これはシド・バレットを悲劇的な伝説から解き放つ試みなのではないか。ピンク・フロイドのアートワークも手掛けたヒプノシスの一員でバレットの旧友、ストーム・トーガソンが監督と聞き手を兼任し、学生時代の友人や恋人、妹など身近な人々の証言や記録映像を通して、彼の姿を浮かび上がらせる。

     美術学校時代からピンク・フロイド初期のバレットの目も眩む輝きは、従来の伝説通りだが、本作は彼の晩年の姿を悲痛なものとしては描かない。その様子を揶揄するマスコミ報道も登場するが、親しい人々は彼の静かな暮らしぶりを語り、彼がどんな気持ちだったのかは本人にしか分からないと言う。そこから見えてくる、新たな人物像が興味深い。

  • 猿の惑星/キングダム
    三部作の数世代後、世界はこうなっているかもしれない
    ★★★★★

     時代背景は、三部作の最終作『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の数世代後。その頃、こういう猿が出現し、世界はこのようになっているかもしれないという物語と、その世界の光景が興味深い。あの三部作の後日談となると、なぜその物語を描かなければならないのかという理由が欲しくなってしまうが、そこは観客各自の判断か。

    『メイズ・ランナー』シリーズのウェス・ボール監督によるアクションシーンが充実。前作の寒冷地とは全く違う、緑豊かな森での絶壁や大樹を活かした落下系アクションから、人間の建築物内の戦闘など、バリエーションも豊富。1968年のオリジナル映画『猿の惑星』へのオマージュもたっぷり。

  • ボブ・マーリー:ONE LOVE
    音楽が自然に発生する瞬間に立ち会える
    ★★★★★

    ボブ・マーリーが仲間たちとあるいは一人で、ゆるい感じで楽器を触っていると、そこから自然発生的に曲が姿を現していく、というシーンが何度かあり、まるで音楽の誕生に立ち会ったかのような興奮を与えてくれる。この映画は彼の音楽を、ステージではなく、発言でもなく、そういう形で描く。

     プロデュースにボブ・マーリーの息子や娘、妻が参加した「家族の目から見たボブ・マーリー」でもあり、仲間たちとサッカーをして走り回り、子供たちを抱きしめてひょいと持ち上げる姿が繰り返し描かれる。主演のキングズリー・ベン=アディルの身体の動きのそっくりぶりも驚異的。特にステージ上のトランス状態での動きに目を奪われる。

全1,399件中1~5件を表示しています。 Next »
[PR]
おすすめ特集
映画アクセスランキング
  • Loading...
»もっとランキングを見る«
スポンサード リンク