シネマトゥデイ

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映画短評

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  • あの日のオルガン
    あの時代に日本を戻してはならないと強く願う
    ★★★★★

     日本の敗戦が色濃くなってきた太平洋戦争末期、高まる空襲の危険から幼い子供たちを守るため、保育園ごと集団疎開をさせた若い保母たちの実話を描く。これが目から鱗だった。ほのぼのとした雰囲気の幕開けから一転、やがて戦前日本社会の封建的かつ権威主義的な風潮が物語に暗い影を落としていく。勇ましい言葉を叫ぶ愚かな愛国者が大手を振り、女性や子供などの弱者が虐げられる当時の日本にあって、若い保母たちの志がどれほど勇敢で、その試みがいかに過酷なものだったのか。あんな悪夢のような時代に日本を戻してはならないという、作り手の決意にも似た強い願いが如実に伝わってくる

  • ビール・ストリートの恋人たち
    理不尽な社会で家族や隣人の連帯に希望を見出す
    ★★★★

     オスカー受賞作『ムーンライト』に続くバリー・ジェンキンス監督の新作は、黒人であるがゆえに無実の罪で投獄された若者とその恋人の物語だ。愛し合う男女の前に立ちはだかる壁は高く、その運命はどこまでも厳しいが、しかしジェンキンス監督はその過酷な試練に晒された恋人たちの美しい愛情に焦点を当てていく。そればかりではない、彼らを救おうと奔走する家族たちの強い絆、そしてユダヤ系やイタリア系、ヒスパニック系などマイノリティの隣人たちの良心にも目を向け、弱者が互いに支えあう市井の風景を静かに見つめる。その辺りは来週末公開の『グリーンブック』と併せて見ることで、より一層理解を深めることが出来るだろう。

  • ヨーゼフ・ボイスは挑発する
    肉体に宿る思想を生々しく追体験する
    ★★★★

    「彼の死に悼みを感じているのは、彼の芸術愛好者よりも、西ドイツ社会を舞台にした政治・芸術的パフォーマンスの表現者としてのボイスに共感を抱き、喝采を送っていた人達である」――『月刊イメージフォーラム』86年4月号、ヨーゼフ・ボイス追悼特集における福沢啓臣氏のテキストから。本作の主題はこれに尽きる。ボイス自身の勇姿と肉声を差し出し、伝説の場から現在のリアルへと召喚する試み。彼の生の運動そのものが芸術の拡張の実践であり、筆者が少年の頃に見て薄ら記憶にあるスーパーニッカのCMもその一環だったわけだ。

    「社会彫刻」との魅力的な概念は永久革命の意思に接続するだろう。とりあえず岡本太郎ファンは必見かと。

  • ナディアの誓い−On Her Shoulders
    平和への闘争のロールモデル
    ★★★★

    ベストセラー本『THE LAST GIRL』 (まさに今読むべき一冊。『アンネの日記』に匹敵すると思う)を補完する大切な一本。ISISによるヤズィディ教徒蛮行の宗教・社会・政治的背景を踏まえ、重要なオピニオンとなった被害者=サバイバー、ナディア・ムラドの等身大の姿を追う。普通の「村娘」がジャンヌ・ダルクのごとく最前線に立つ事の重圧と使命感。

    声なき者が声をあげ始めた時代、困難も含めた活動現場のドキュメントとして姿勢が正される。先述の著作に素晴らしい序文を寄せた弁護士アマル・クルーニー(ご存じジョージ・クルーニーの妻でもある)の登場は、セレブと呼ばれる有力者の在り方を問う意味でも示唆的だろう。

  • 移動都市/モータル・エンジン
    出オチ感ハンパない“ピージャクの動く都市”
    ★★★★★

    “都市が都市を喰らう”オープニングのスケールのデカさに加え、スチームパンクな世界観に圧倒される。だが、そこからは失速しまくり。身内の裏切りやレジスタンスの存在など、既視感しかないジュブナイルSFが展開し、「“実写で『ハウルの動く城』”やってんじゃん!」な流れが続く。そして、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』オマージュにしか見えないクライマックスに突入! 孤高のヒロインと人造人間(ストーカー)の関係性や、ガジェットのデザインなどは興味深いものの、やはりヒューゴ・ウィーヴィング以外、しっかりスターオーラを放つキャストが不在で、129分の尺を引っ張るのは、かなり厳しかった。

  • アリータ:バトル・エンジェル
    あと15年早く実現してれば!!
    ★★★★★

    確かに原作愛を感じる脚色ではあるし、近年の3D映画の中でも遊び心たっぷりの特殊効果も用意されているが、『カイト/KITE』まで実写映画化されたご時世に、『ゴースト・イン・ザ・シェル』と同様、「せめて、あと15年早く実現してれば!!」という仕上がりだ。ピグマリオンコンプレックスのおっさん萌えという設定自体、かなり擦られすぎているうえ、異形サイボーグのヴィジュアル&バトルも既視感がありすぎる。ただ、当初は問題視されていた“デカ目”はそこまで気にならないし、ジョン・マクティアナン版『ローラーボール』の酷さを思い起こしてしまうほど、“モーターボール”の試合シーンは、見応えアリ!

  • 笑顔の向こうに
    主演・高杉真宙だから許される世界観
    ★★★★★

    歯科技工士といえば、『ハッシュ!』で片岡礼子が演じた孤独な女のイメージがあまりに強かったが、そこは日本歯科医師会が全面協力の本作。プロのお仕事として、偏見なく、しっかり描いている。彼らは直接、患者(ときには医師とも)と会うことがないといわれるだけに、丹古母鬼馬二演じる老人の義歯をめぐる噛み合わせと人間関係を絡めたエピソードは、多少強引な展開ながら納得。基本、いい人しか登場しない展開には不満が残り、世間一般のキラキラムービーと比べても、まったく狙いのないラブストーリーなど、主演が眩しいほどの清潔感・透明感を放つ高杉真宙だから許される世界観も、なかなか興味深い。

  • サムライマラソン
    お笑い系時代劇ではありませんよ
    ★★★★★

    タイトルからてっきり『超高速!参勤交代』系のコメディと思い込んでいたら、いい意味で裏切られた。外敵の襲来に備えて心身を鍛えようと意気込む殿様主導の遠足に臨む人々それぞれの思惑を描く中盤までは人情喜劇的なトーンで進むが、後半はアクション満載な時代劇に突入。るろ剣で磨いた鮮やかな剣技を再び披露する佐藤健はじめ、役者陣は適材適所。武士が戦う場面のカメラワークが見慣れた時代劇と一味違い、役者の動きをしっかり見せるのが気に入った。また小松菜奈ちゃんが演じるお姫様が独立心旺盛だったり、切り株映画っぽい演出がある点も現代風で、これはグローバル展開を目指す製作者J・トーマスの好みだろう。

  • 天国でまた会おう
    仮面はどれも悪夢のような美しさ
    ★★★★★

     何よりもストーリーの面白さを最優先する語り口。この話はいったいどこに向かうのか、観客を先の読めない展開で物語に引っ張り込み、しかも話がどんどん進む。そのストーリーに、ブラックな笑いとホラ話のテイストがプラスされているのも美味。
     加えて魅力なのが、副主人公エドゥアールが被る仮面の、悪夢のような美しさ。この人物が戦場で顔の下半分を失って常に仮面をつけているという設定だけでもオイシイが、さらに彼は画家で仮面は自作。気分に合わせて被る数々の仮面は、彼の"お高くとまった人々を愚弄するのが好き"という性格と独自の美学を反映して、華麗で装飾的で有毒。そのせいで物語がより幻想的に見えてくる。

  • ビール・ストリートの恋人たち
    恋物語が甘いからこそ、現実の厳しさが胸にグサリ
    ★★★★

    幸せの絶頂にいるカップルが恐ろしい偏見のせいで地獄に突き落とされる、と書くと悲恋のようだが、絶対に愛を諦めないヒロインの姿に胸打たれる。愛の力で輝き、次第にたくましくなるヒロイン役のキキ・レインはとても魅力的だ。
    『ムーンライト』でも感じたが、B・ジェンキンス監督はラブシーンの演出がとても巧みだ。ささいや仕草や視線の配り方だけで愛し合う男女の姿に説得力を持たせ、見ている側をメローな気持ちにさせる。二人の愛を濃厚でロマンティックに描き、現実の厳しさや醜さを際立たせるのも監督の狙い通り。ただ、二人に起きた悲劇が今この瞬間にもアメリカで起きていると考えると気持ちが重くなる。

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