シネマトゥデイ

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映画短評

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  • 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
    夢幻鉄道のループ…ひと夏の冒険と儚い恋の記憶は希薄になった
    ★★★★★

     猫を消し去り、隕石落下をリセットする、川村元気P「もしも三部作」の趣も匂うが、企画性はキャッチーだ。だが、実写のアニメ変換は滑らかに運ばない。広瀬すずの物憂げな声を得てエロスは増したが、小学生の駆け落ちと花火の形状確認の旅を中学生に換えたことで、無邪気さや危うさは失われた。ギミックの設定でリープはロジカルに、作画によって夢幻は煌びやかになったものの、このジュブナイルにとって蛇足感は否めない。妄想充足度が高まった分、切実な願望は希薄になり、観客が拡げるイマジネーションの余地は狭められた。原作者と影響下の脚本家を招かず、物語性に縛られることのない、シャフトによる換骨奪胎Ver.を観てみたかった。

  • パターソン
    ジム・ジャームッシュ監督が帰ってきた。
    ★★★★★

     '80~'90年代のジャームッシュ監督作を思い出させる。自然にもっとも疲れない速度で歩いているようなリズムが同じ。昼の場面も多いのに、夜が印象に残るのも同じ。それは、監督が本作の発想を得たのが25年ほど前だったことと、関係があるかもしれない。そして、画面の触感はとても柔らかい。
     小さな町で、バスの運転手をしながらつねに詩を書いている男の、大きな出来事の起こらない毎日が描かれていく。男は詩を発表する予定もなく、それを読むのは彼の愛する妻くらいなのだが、男にはそれで問題ない。男がたゆまず詩を書き続けているので、積み重ねられていく日々の暮らしの底に、何かとても力強いものが静かに充ちている。

  • ベイビー・ドライバー
    『glee』風味の強盗映画は、ロマンティック?
    ★★★★

    逃走車ドライバーの“最後の仕事”というテーマは強盗映画にありがちだけど、主人公ベイビーの心情や状況にマッチする音楽が物語を盛り上げる。ドラマ『glee』同様、既存のヒット曲を使ったジュークボックス・ミュージカルなので「知ってる」な曲もたくさんでノリやすい。楽曲の使用パートやタイミングなどすべてE・ライト監督が脚本に書き込んでいたというから驚いた。観客心理まで考えての映画製作をあざといと思う人もいるかもだが、素直に楽しむが勝ち。主役アンセル君とL・ジェイムズとの相性がよく、ロマンティックな展開にも鼻白まない。しかも若手を取り巻いたオヤジ俳優がみな怪演。特にJ・フォックスのイカレっぷりは感動的だ。

  • ギフト 僕がきみに残せるもの
    さまざまな感情を呼び起こす生命のドキュメント
    ★★★★

    アイス・バケツ・チャレンジで格段に認知度が上がった難病ALSだが、実情を知る人は少ないだろう。元アメフト選手グリーソンが自身や愛妻、そして生まれてくる子供と向き合うために撮り始めたビデオ日記には病状の進行が一目瞭然で、辛い場面も多々。しかし、その時々の気持ちや心の揺れを隠すことなくカメラにさらけ出すグリーソンや家族の姿には嘘や偽りがなく、見ている側にさまざまな感情を呼び起こすはず。生々しい発言が多く、カメラマンへの信頼が絶大だったことも伝わってくる。本人が撮った映像など膨大なフッテージを丹念に編集し、死を前にした人間の内省ともいえる生命のドキュメントに仕上げた監督と編集者の手腕が素晴らしい。

  • トランスフォーマー/最後の騎士王
    ファンの期待を裏切らない新三部作の第一章
    ★★★★

     3作目のアポロ計画程度では物足りない!といわんばかりに、アーサー王伝説をも担ぎ出す。そんな大風呂敷的なストーリーに“らしさ”を感じるシリーズ最新作。

     VFXを活かしたトランスフォームあり、都市破壊のスペクタクルありで、いつもながらのマイケル・ベイ演出の豪快さを満喫できるので、それを期待するファンを裏切ることはない。加えて、今回はスクラップ置き場やストーンヘンジなどの平原での見せ場も多く、怪獣映画的な興奮も体感できる。

     シリーズを俯瞰するとメガトロンが甦り過ぎ…という気もしないでもないが、新三部作の第一弾としては手堅い作り。ウォールバーグの今後の活躍への期待込みで★一個おまけ。

  • ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章
    劇画に徹して“不良”を描いた三池節の妙
    ★★★★

     国民的ベストセラーコミックを、三池監督がどこに筆圧を置いて映画化するのか? 興味はそこにあったが、驚きを覚えつつ、なるほどと思わせる。

     最大の魅力は不良映画のテイスト。ワルの魅力はもちろん、付随するバンカラや男気の要素も色濃く、とりわけクライマックスの仗助と億泰の熱血セリフの応酬にそれを強く感じた。ある意味、ケンカの武器として“スタンド”を用いた『クローズZERO』とも言える。

     舞台の杜王町を再現したロケ地スペイン、シッチェスが意外にハマるのも、そんな劇画町のタッチゆえ。重たげな頭髪スタイルをキメたスタンド使いたちのビジュアルも含め、そこには絵的な興奮が確かに宿っている。

  • ギフト 僕がきみに残せるもの
    映像から体温が伝わるように「生きる力」がチャージされる
    ★★★★★

    ドキュメンタリー、との呼称さえ揺るがす。人生から直に立ち上がってきた映像の集積は「作品」と呼ぶ事すらためらわれるほど。息子に向け、自撮りから始めたS・グリーソンの闘病と日常の記録。綺麗事ではない現実と向き合う姿勢に、何ていい男なんだと思う。そして極めてパーソナルなものが「映画」として我々に届けられる、現在の映像環境の凄さを改めて思い知った。

    YouTubeで連続再生する動画アルバム的な感触は、エイミー・ワインハウスの『AMY』と重なる。心臓の鼓動がドクドク聴こえる親密な距離で、剥き出しの魂に直接タッチするような鑑賞体験だ。否応にも「映画」のリアリティの水準はどんどん更新・変容していくのだな。

  • 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
    26年経っても衰えぬ、観月ありさ人気!
    ★★★★★

    細田守監督の『時をかける少女』に見習い、若い世代に向け、名作をアニメでリブートする、いかにも川村元気案件。細田版『時かけ』の成功は、ヒロインのキャラなど、基本設定を大胆に変更した点だったが、今回は尾道を思わせる坂の町を舞台に、小学生を中学生に変えた程度。オリジナルの持つ危うさが消えるなか、名セリフやシーンが再現される。石井苗子(さげまん)が演じた母親の鬼の形相がなく、不安を覚えるなか、タイムリープ色強めのイマドキ展開に突入。プールじゃない、まさかのクライマックスなど、オリジナルのメイキング「少年たちは花火を横から見たかった」の裏話を踏まえた“補完”という意欲は買いたいが、観客には不親切すぎる。

  • エル ELLE
    歪んでいても、大丈夫
    ★★★★★

     歪んでいても、イタくない。本作のヒロインがそれを体現してくれる。
     ヒロインは、かなり常軌を逸した行動をする人物で、硬く厚い殻で徹底防御し、無慈悲に敵を攻撃をするのだが、それでいて美しく、仕事は有能で、親友も元夫も愛人もいて、娘は普通に育って孫も生まれる。歪んでいても大丈夫、普通の生活は送れると示してくれるのだ。途中で主人公の過去が描かれて、彼女の歪みが生き延びるためのものだと推測される。歪んでも、生き延びること。そうすれば大丈夫なこともある。
     そんな人物像に説得力があるのは、イザベル・ユペールが演じているから。彼女が演じる主人公が、怖ろしく美しく魅力的だ。

  • ローサは密告された
    ドキュメンタリータッチを超え、社会悪を再現し告発する強い意志
    ★★★★

     生きていくための麻薬売買。警察の公然とした腐敗ぶり。マニラのスラム街で常態化した光景に、手持ちキャメラが肉薄していく。ドキュメンタリータッチという言葉では収まりきらぬほど、社会構造の悪循環を再現する強烈な意志が見て取れる。我々はその場に立ち会わされ、当時者性さえ覚えてしまう。過激な手法で麻薬撲滅を進めるドゥテルテが大統領になった国の、愛だの正義だのと綺麗事を言っていられない危うい日常がここにある。権力の横暴に抗うことも出来ず、保釈金を用意するために奔走する家族の姿が痛ましい。サスペンスを味わわせるためではない。ブリランテ・メンドーサ監督は、負の連鎖を断ち切らんとして告発している。

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