2020年 第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門18作品紹介

第77回ベネチア国際映画祭

第77回ベネチア国際映画祭ポスター
Original design Lorenzo Mattotti, graphic design Designwork Courtesy La Biennale di Venezia

 9月2日~12日(現地時間)に開催される第77回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門18作品を紹介(コンペティション外を除く)。今年の審査委員長は、『アイム・ノット・ゼア』『ブルージャスミン』などのオスカー女優ケイト・ブランシェット。日本からは蒼井優高橋一生共演・黒沢清監督の『スパイの妻』(10月16日公開)が出品。その他『ザ・ライダー』のクロエ・ジャオ監督とオスカー女優のフランシス・マクドーマンドが組んだ新作『ノマドランド』や、第70回本映画祭で金獅子賞を獲得したジャンフランコ・ロージ監督のドキュメンタリー作品など、さまざまなジャンルの作品がそろった。その後の賞レースにも影響を及ぼす金獅子賞、今年は誰の手に! なお、受賞結果は最終日に発表される予定。(文:岩永めぐみ/平野敦子/本間綾香)

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<金獅子賞(最優秀作品賞)>『ノマドランド』

ノマドランド

製作国:アメリカ
監督:クロエ・ジャオ
キャスト:フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン

【ストーリー】
ネバダ州に暮らす60代の女性ファーンは、長らく続く景気低迷によって全てを失ってしまう。意を決した彼女は車に荷物をまとめて、広大なアメリカ西部の大地を巡る気ままなノマド(遊牧民)として放浪の旅に出る。

【ここに注目】
作家ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション小説をもとに、中国出身のクロエ・ジャオが監督したエモーショナルなロードムービー。『スリー・ビルボード』で2度目のアカデミー賞主演女優賞に輝いたフランシス・マクドーマンドが主演・製作を務めた。ジャオ監督は、若きカウボーイの再生を描いた西部劇『ザ・ライダー』が第28回ゴッサム・インディペンデント映画賞作品賞に輝き、マーベル映画『ジ・エターナルズ(原題) / The Eternals』の監督に抜てきされた、今もっとも目が離せない女性監督の1人だ。

<銀獅子賞(最優秀監督賞)>黒沢清監督『スパイの妻』

製作国:日本
監督:黒沢清
キャスト:蒼井優、高橋一生

【ストーリー】
太平洋戦争前夜、貿易商の優作は仕事で赴いた満州で恐ろしい国家機密を知り、正義のため公表しようとするが反逆者とみなされる。一方、聡子はスパイの妻とののしられようと、愛する優作を信じてともに生きることを心に誓う。

【ここに注目】
カンヌ国際映画祭で高く評価された『トウキョウソナタ』『岸辺の旅』で知られる、黒沢清監督によるNHKドラマの劇場版。映画『ロマンスドール』で夫婦を演じた高橋一生と蒼井優が、本作で再び運命に翻弄される夫婦、優作と聡子を熱演した。ほかに東出昌大坂東龍汰恒松祐里みのすけ玄理笹野高史らが出演。黒沢監督にとって、ベネチア国際映画祭のコンペティション部門出品はこれが初となる。

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<銀獅子賞(審査員大賞)>『ヌエボ・オルデン(原題) / Nuevo Orden』

ヌエボ・オルデン

製作国:メキシコ、フランス
監督:ミシェル・フランコ
キャスト:ネイアン・ゴンザレス・ノルビンドディエゴ・ボネータ

【ストーリー】
メキシコの上流階級のカップルの結婚式に貧困層の集団が乱入。招かれざる客たちが式で騒ぎを巻き起こす。

【ここに注目】
或る終焉』で第68回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したメキシコの異才、ミシェル・フランコ監督が手掛けるディストピア映画。近未来のメキシコを舞台に、経済や社会的な格差、コミュニティーにおける根源的な恐怖を掘り下げる。『ターミネーター:ニュー・フェイト』などのディエゴ・ボネータや『バベル』などのモニカ・デル・カルメンらが出演。コンペティション部門唯一のラテンアメリカ作品。

<最優秀男優賞>ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ『パドレノストロ(原題) / Padrenostro』

製作国:イタリア
監督:クラウディオ・ノーチェ
キャスト:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノマッティア・ガラチ

【ストーリー】
1976年、想像力豊かな10歳の少年ヴァレリオは、ローマで暮らしていた。彼の父親・アルフォンソがテロリストに襲撃をされる現場を目撃して以来、ヴァレリオの世界は一変する。家族全員がおびえながら日々を過ごす中、ヴァレリオは周囲に溶け込めない、反抗的で生意気なクリスチャンと出会い、忘れられない夏を過ごすことになる。

【ここに注目】
『アイス・フォレスト』などのクラウディオ・ノーチェ監督がメガホンをとって贈るヒューマンドラマ。『シチリアーノ 裏切りの美学』などのピエルフランチェスコ・ファヴィーノや、『甘き人生』などのバルバラ・ロンキらが共演し、困難な日々の中、ふたりの少年が友情を育んでいく様子を描写する。第62回本映画祭で最優秀短編賞に輝いたものの、長編作品では未だ無冠の監督が、自国の映画祭で最高の栄誉を目指す。

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<最優秀女優賞>ヴァネッサ・カービー『ピーシズ・オブ・ア・ウーマン(原題) / Pieces of a Woman』

ピーシズ・オブ・ア・ウーマン

製作国:カナダ、ハンガリー
監督:コルネル・ムンドルッツォ
キャスト:ヴァネッサ・カービーシャイア・ラブーフ

【ストーリー】
自宅で出産しようとして思いがけない不運に見舞われ、子供を亡くしてしまった女性。喪失の深い悲しみと必死で向き合おうとする彼女は、同時に自身の夫や、疎遠になっている母親との関係をも見つめ直すことになる。

【ここに注目】
ドラマ「ザ・クラウン」で脚光を浴び、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』などアクション映画でも活躍する女優ヴァネッサ・カービーと、自伝的作品『ハニーボーイ』で脚本家デビューを果たしたシャイア・ラブーフが主演した。監督は、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』で第67回カンヌ国際映画祭である視点部門グランプリを獲得したハンガリーの俊英コルネル・ムンドルッツォ。

<最優秀脚本賞>チャイタニヤ・タームハネー監督『ザ・ディサイプル(原題) / The Disciple』

ザ・ディサイプル

製作国:インド
監督:チャイタニヤ・タームハネー
キャスト:アディティア・モダックアルン・ドラヴィッド

【ストーリー】
インドの伝統音楽の歌手になることを目指すシャラド・ネルルカーは、その道の大家であり父親でもある師のもとで修行し、人生を捧げてきた。しかし、年月が経つにつれ、求めるレベルに達することができないのではないかと思い始める。

【ここに注目】
デビュー作『裁き』が第71回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、オリゾンティ部門作品賞と優れた新人監督に贈られるルイジ・デ・ラウレンティス賞をダブル受賞したインド人監督のチャイタニヤ・タームハネー監督。待望の2作目は、インドの伝統音楽の歌手を目指す主人公を描くドラマ。製作総指揮に『ゼロ・グラビティ』や『ROMA/ローマ』などのアルフォンソ・キュアロンが名を連ねている。

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<審査員特別賞>『ディア・コムラーツ(英題) / Dear Comrades』

ディア・コムラーツ

製作国:ロシア
監督:アンドレイ・コンチャロフスキー
キャスト:ユリア・ヴィソツカヤウラジスラフ・コマロフ

【ストーリー】
1962年、ロシア南部の都市ノヴォチェルカッスクで、工場労働者たちによる大規模なストライキが起きる。やがてそれは賃上げと食料品の値下げを求める労働者たちによるデモに発展し、市街地には蜂起した人々が集まり始める。政府は鎮圧のために同市への軍隊の派遣を決め、軍は武器を持たない罪のない市民に銃を向ける。

【ここに注目】
作家のセルゲイ・ミハルコフを父に持ち、弟のニキータ・ミハルコフも映画監督というサラブレッド一家に生まれた、アンドレイ・コンチャロフスキー監督の最新作。1962年に実際に起きた「ノヴォチェルカッスクの虐殺」をベースに、丸腰のデモ参加者たちにソ連軍が発砲し、多数の死者を出した歴史的事件の真相に迫る。『パラダイス』では第73回本映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)に輝いた、実力派監督の躍進に期待がかかる。

<マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)>ルーホッラー・ザマニ『サン・チルドレン(英題) / Sun Children』

サン・チルドレン

製作国:イラン
監督:マジッド・マジディ
キャスト:アリ・ナシリアンジャヴァド・エザティ

【ストーリー】
貧しい家庭に生まれた12歳のアリと3人の仲間たちは、家計を少しでも助けるために、ガレージでの仕事をこなしながら身を粉にして日々働いている。だが、どれだけ必死に働いても、幼い子供たちが手にする賃金は雀の涙ほどしかなかった。やがて追い詰められた彼らは、ささいな犯罪に手を染めることになる。

【ここに注目】
俳優として多くの作品に出演した後、監督に転身したマジッド・マジディが、児童労働をテーマに描く社会派ドラマ。監督は幼い子供たちが、家族を養うために働かざるを得ない現在の状況に警鐘を鳴らす。1997年に『運動靴と赤い金魚』、1999年に『太陽は、ぼくの瞳』、2001年に『少女の髪どめ』で3度モントリオール世界映画祭でグランプリに輝いた、イランの名匠による問題提議に注目。

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