バーバラと心の巨人 (2017):映画短評
バーバラと心の巨人 (2017)ライター3人の平均評価: 3.7
巨人(ジャイアント)ハンターB
完全に“少女版『怪物はささやく』”(+ちょいと『ワンダー 君は太陽』)なのだが、グラフィックノベルの映画化だけに、ヒロインのルックなど、こちらの独創的なヴィジュアル・センスも決して負けていない。しかも、『死霊館』で一人勝ちしていたマディソン・ウルフが、本作でも圧倒的な芝居を魅せ、一見ブッ飛んだ話にしっかり説得力を持たせてくれる。また、本作ではデンマークの新人監督を抜擢し、『タルーラ~彼女たちの事情~』に続き、繊細なタッチで描く一筋縄ではいかない女性映画を生み出した“プロデューサー、クリス・コロンバス”。近年の仕事っぷりは、なかなか興味深い。
戦うウサギ耳の女の子、がんばれ!
ひとりで巨人と戦う女の子、バーバラにまつわる造形のすべてが愛らしい。まず、彼女自身が超キュート。大きなメガネにウサギ耳。少し大きなコートも、ストライプの長靴下も、色とデザインが可愛い。さらに彼女が肩から下げている小さなバッグ、彼女の部屋にある小物、彼女が描く手紙までが、同じ愛らしさで統一されている。彼女が戦う巨人まで、デザイン感覚は同じ。
そんな彼女が、最後にはウサギ耳を外して物語上はめでたしめでたしになるのだが、その時の彼女の容姿は変わっていて、その彼女よりも、ウサギ耳だった彼女の方が魅力的に見える。そこに監督の真の意図があるのではないか、そんな気持ちにさせられる。
多感な少女の心が生み出した巨人の正体に涙する
まるで『トランスフォーマー』か『パシフィック・リム』を彷彿とさせるUS版ポスターのデザインを、日本版で採用しなかったのは賢明だ。主人公は思春期の多感な少女バーバラ。家族にすら心を開かず自分の殻に閉じこもる彼女は、いつか必ず巨人が町に襲来すると信じており、それを止められるのは自分だけだと日々防衛策に余念がない。もちろん、その巨人が彼女の心が生んだ妄想の産物であることはすぐに観客も気付くのだが、しかしその原因はいったい何なのか。転校生の少女や新任教師との触れ合いを通して、孤独な少女の胸に秘めた痛みと哀しみをじっくりと描いていく。さながら『怪物はささやく』の少女版とも言えるだろう。