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金熊賞なるか?日本唯一のコンペ出品作『キャタピラー』主演・大西信満【第60回ベルリン国際映画祭】

金熊賞なるか?日本唯一のコンペ出品作『キャタピラー』主演・大西信満
『キャタピラー』主演・大西信満 - Photo:Yukari Yamaguchi

 第60回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に選出されている『キャタピラー』の主演俳優、大西信満に結果発表を明後日に控えた2月18日に話を聞いた。

 戦争の悲惨さがこれでもかというほど強く打ち出される本作、賛否両論の評が出ている。大西は「ブラボーと諸手をあげて迎えられるような映画ではない。そうであったら、むしろおかしい」と評を受け止める。「当時の日本を見せることで、今の人に考えてもらう映画です」と問題を投げかける作品として、賛否両論は望むところのようだ。

 四肢を失い、顔にも火傷を負って戦場から戻る久蔵は、耳も聞こえず、しゃべれず、はいずるように動くことしかできない。その役作りの苦労は、身体的なことより、心理的なことだったという。当時の日本人の心情を理解しようと、資料を読み込み、「惨めな障害者というふうにはならないようにしました。当時の日本人としては誇れることだったんです。当時としては、日本のために戦って、あのような姿になると“軍神”とあがめられるような存在だった。今の人から見れば滑稽かもしれませんが、もちろん笑うようなものではありません」と語る大西は、まだ久蔵を体のどこかに抱え、その代弁をしているようだ。「もし当時に生きていたら、久蔵と同じようにしたでしょう。できなかったとしても、ああいうふうになろうとはしたと思います」と静かだが確固とした口調で話す。

 大西は、妻シゲ子を演じる寺島しのぶと、ほぼ出ずっぱりだ。その寺島を「以前にも、2人できつい現場を潜り抜けたことがあったんです。それで信頼して演じることができました」と称えた。『愛のコリーダ』と比較する人もいた、愛憎がにじむベッドシーンなど、激しいシーンの裏には、お互いの役者としての信頼感があったようだ。

 現地時間2月20日には、最優秀作品に与えられる金熊賞のほか、審査員賞、男優賞、女優賞、監督賞、音楽賞、芸術貢献賞の6つの銀熊賞が、コンペティション作品から選ばれる。金の熊はもちろん、困難なテーマに果敢にチャレンジした若松孝二監督、女性の怨念を演じきった寺島、久蔵が乗り移ったかのような大西が、銀の熊を手にすることも期待したい。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)


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