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R100 (2013):映画短評

R100 (2013)

2013年10月5日公開 100分

R100
(C) 吉本興業株式会社

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 2.7

なかざわひでゆき

もっと突き抜けるまで暴走すべきだった

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 昏睡状態の妻と幼い一人息子を抱える平凡なサラリーマンが、日頃のストレスを解消するがごとく秘密のSMクラブへ入会。様々なタイプの女王様から日常的に陵辱されることでマゾヒスティックな願望を満たすのだが、やがてプレイの内容はエスカレート。遂には国際的な秘密組織たるSMクラブとの全面戦争に突入する…という荒唐無稽な不条理コメディだ。

 なるほど、性的な快楽に現実逃避を求めてしまう男の哀しい性(さが)というのはよく分かる。そのことで家族にまで危険が及び、さながら戦隊ヒーローもの的なアクションへとなだれ込んでいくというハチャメチャな展開も面白い…のだが、どうも終始落ち着きのない居心地の悪さがつきまとう。それは、映画らしい映画を目指しながらもテレビ的なコントの呪縛から逃れきれず、結局は従来の笑いの概念を破壊するという目標が宙ぶらりんになってしまったことに起因するのだろう。

 さらに、途中から“ある設定”を追加することで作り手として弁明の余地を残してしまったため、かえって消化不良に陥ってしまったように思われる。たとえ収拾がつかなくなったとしても、ここは潔く突き抜けるまで暴走しまくるべきだった。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

批判をかわすための仕掛けは、むしろ痛ましさと憐れみを抱かせる

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 アナーキーな志は感じるが刺激は弱い。オーソドックスな物語に堕した『さや侍』の対極へ向かうこともなく、不条理なコントの集積のようなものは、結局のところ「映画」のフォーマットに屈服した不可解な時間であり、居心地の悪い奇妙な体験にすぎない。
 
 謎のSMクラブに入会し日常の中で不意の責め苦を受ける――設定自体、テレビで見受けるコントからイメージはさほど遠くはない。刹那の失笑を誘うシーンは少なくない。興奮を覚えた大森南朋の頬は紅潮しCGで盛り上がった顔面は、まるでソン・ガンホのようだ。女王様は女優の各キャラクターに準じ意外性は薄いが、片桐はいりの技だけは空恐ろしい。
 
 しかしセピア調に脱色された画面で恐怖を醸成させる狙いは純粋に映画的で、ハチャメチャ感とは裏腹の理性を感じさせる。マスコミやスタッフらしき人物を登場させ、意味不明な点を語らせるメタ化が批判をかわす逃げ道であるのは明白で、むしろ痛ましさと憐れみを抱かせる。それでも松本人志の才能に懸け、期待する者は絶えない。エンドロールで上がる製作首脳陣こそが、映画界では裸の王様であると知りながらも彼に付き従う最高の“ドM”に思えてくる。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

作品を通じて監督と俳優のSM関係を表現

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

 前作『さや侍』があまりにも「映画的」だったこともあり、その反動からデビュー作『大日本人』に近いノリ(本人曰く“メチャクチャ”)に戻ったのは喜ばしい。映画の方程式を壊してこそ、松本人志監督作なのだから! 
 いきなり目の前に現れては、大森南朋をシバいて去っていく女王様たちの姿は、まるで「笑ってはいけない」シリーズのゲストのようであり、気付けば大晦日の晩のように釘づけに…。また、ストーリー上、携帯電話がない時代設定にしたことで、匂い立つ昭和テイストは塚本晋也監督の『六月の蛇』にも似た不気味さを醸し出す。
 劇中、松本監督の分身といえるキャラを登場させるほか、本作を通じて監督と俳優のSMな関係を表現したこと、楽曲の使い方など、かなりのスキルアップも見られるが、モキュメンタリーとしても衝撃的だった『大日本人』越えとは正直言い難い。それにしても、SMクラブの名称が「ボンテージ」とはいかがなものか?

この短評にはネタバレを含んでいます
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