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禁句は愛、感動、衝撃、絆、笑いと涙!映画のキャッチコピーライター“惹句師”21年ぶりの洋画作品で明かす極意

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いよ~映画惹句師 ただ今参上! 関根忠郎氏
いよ~映画惹句師 ただ今参上! 関根忠郎氏

 かつての映画界には、作品の宣伝文句やキャッチコピーを作るコピーライター「惹句師(じゃっくし)」という呼び名があった。映画興行成績を左右するともいわれ、東映の時代劇全盛から任侠作品など担当した、唯一の名惹句師として知られた関根忠郎さん(78)が、洋画では21年ぶりに惹句を手掛けたジョニー・デップ主演作『ブラック・スキャンダル』(1月30日公開)。“惹句師”である関根さんに思いを聞いた。(取材・文:岩崎郁子)

「映画会社の求人」に飛びつく

 「子供の頃から外国映画のファンだった」という関根さん。高校3年のとき、「映画会社からの求人」に飛びつき、1956年東映に入社。洋画どころか、時代劇全盛の会社だったことを知り、「えらいところに入っちゃった」と。劇場の裏方を経験後、東京撮影所で宣伝担当になり。映画のポスターや広告などに載せる映画のコピーを書く仕事についたのがはじまりだった。

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21年ぶりに惹句を手掛けたジョニー・デップ主演作『ブラック・スキャンダル』(1月30日公開)

 「東映は古いタイプの人間が多くて、みんな、コピーのことを『惹句』と言っていた。『じゃっく』って何だと、辞書を引くと『人の心を惹く文句』とあって、なるほどなと思った」。その後、本社宣伝部へ異動。「そこに名惹句師がいて、私が勝手に師匠と言っていた。その人は歌舞伎に造詣が深く、時代劇作品などで七五調の惹句がぴったりはまっていた。師匠の惹句で韻を踏んだ心地よい言葉があるんだと知り、私は現代詩などを読んで勉強した」

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手がけた惹句は40年間で約4,000本

 60年代から退社する1997年まで、作品のパブリシティーも手がけながら惹句づくりを続け、手がけた惹句は週2本、年間約100本、約40年間で約4,000本にのぼる。『仁義なき戦い』シリーズや、高倉健主演作など話題作も多い。なかでも「断トツに記憶している」というのが、萬屋錦之介主演『柳生一族の陰謀』(1978年公開)の惹句「我(わし)につくも、敵に回るも心して決めい!」だ。
東映時代劇を盛り上げた錦之介がフリー後、久しぶりに東映に戻り、主演した作品だが、この惹句が大評判に。「錦之介さんがお宅に帰ると、幼いお子さんが木刀を持って、『……心して決めい!』と、このセリフで出迎えたって(笑)」
映画の大ヒット記念パーティーで、錦之介から「ヒットはあんたのおかげだ」と涙ながらに手を握られた思い出もある。

感動を押しつけない

 他社からも声がかかるようになり、アル・パチーノロバート・デ・ニーロ主演の『ヒート』(1995年公開)など洋画も手がけた。惹句の作り方は企業秘密だが、「なるべく使わないようにしている禁句集があるんです」と明かしてくれた。「まず愛、感動。衝撃、絆、笑いと涙……。『今世紀最大の感動巨編』とか一方通行、押しつけのコピーでなく、できるだけ映画の本質に沿った言葉にしたいからです」という。『ブラック・スキャンダル』は70年代にはじまる実話で、FBI捜査官、マフィアのボス、そして政治家の利害が一致し、欲望と権力、狂気に満ちた闇の世界が繰り広げられる。ジョニー・デップが実在した冷酷なギャング、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを演じ(本人に似せるため頭をそり上げ)極悪非道ぶりが圧巻。(この作品の新聞広告は1月23日付け、朝日新聞全国版朝刊広告に掲載)関根さんは『ヒート』以来21年ぶりに、洋画の惹句に取り組んだ。

 「実話実録、群像劇でもあり、『仁義なき戦い』を思い出した。メークや髪型を見ると、デップは松方弘樹だ、とかね」と作品を楽しみながら、惹句は作品説明に軸足を置くと「ギャング映画ではお客さんの気を惹くのは難しい」と、米国の問題を俯瞰し、「アメリカが正義を見失っていた」「アメリカは崩れかけている」といったものにしたという。今回の仕事を通じて、「惹句師として、まだまだ行けるなと思いました」と手応えを感じている関根さん。生き生きと楽しそうに語る顔には、「お楽しみはこれからだ」が溢れんばかり、いよ~映画惹句師 ただ今参上!なり。

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関根忠郎氏の略歴

1937年、東京生まれ。10歳の頃から映画を観はじめて、50年代からは外国映画一本槍のファンとなり、高校卒業までの6年間で750本のアメリカ映画、ヨーロッパ映画鑑を鑑賞。映画熱が高じて、大学受験を受けることなく、映画会社(東映株式会社)の入社試験に応募し合格。仕事は映画の宣伝材料としてのプレスシートやスタジオ通信に必要な宣伝文案の作成に従事。作品宣伝と併せて所属俳優の取材に付き添うパブリシティ業務も行ない、本社宣伝部に転勤を命じられて広告課に配属。数多くの東映娯楽作品群のコピーを書き続けて、ヒット・コピーを多く生み、映画界では「惹句師」と呼ばれるようになった。コピーというカタカナ職名より、日本字の「惹句師」という呼び名が、娯楽調濃厚な時代劇や任侠映画などにしっくりくる。定年後も惹句屋として仕事を続行。近年は日本映画では高倉健の遺作となった「あなたへ」、外国映画ではジョーニー・デップの「ブラック・スキャンダル」がある。

【代表的な作品】高倉健『昭和残侠伝』シリーズ、『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』『昭和残侠伝 破れ傘』など任侠作品、『あなたへ』菅原文太「仁義なき戦い』『新仁義なき戦い』『トラック野郎』全シリーズ、中村錦之助(萬屋錦之介)『柳生一族の陰謀』、仲代達矢『鬼龍院花子の生涯』、緒形拳『陽暉楼』、ロバート・デ・ニーロ&アル・パチーノ『ヒート』、著書「関根忠郎氏の映画惹句術」(著:関根忠郎・徳間書店刊)http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198634650

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