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中国映画業界で生き残る秘訣とは?巨匠ジャ・ジャンクー監督が語る

中国映画業界で生き残る秘訣とは?巨匠ジャ・ジャンクー監督が語る
巨匠ジャ・ジャンクー監督と公私ともに監督の「ミューズ」である女優チャオ・タオ

 『長江哀歌(エレジー)』『罪の手ざわり』など中国社会の変化を題材にした作品で、世界の映画祭で高い評価を得てきたジャ・ジャンクー監督。最新作『山河ノスタルジア』では「社会の急激な変化が人の心に与える影響を描きたかった」と語る。映画は、過去、現在、未来の三つのパートに分かれて展開し、四半世紀にわたる時代の変化と、人々の変わる心・変わらない心を映し出す。

 これまでのジャ監督作品と比較すると、2000年の『プラットホーム』以来、公私ともに監督の「ミューズ」として活躍してきた女優チャオ・タオ演じる主人公の存在感が際立つ。「全編にわたり、女性主人公を中心に据えた作品はこれが初めてです。急速に発展する社会において、人は富や権力を追い求め、生活の本質をないがしろにしがち。でも、女性というのは、変わらない生活を維持することに長けています。それで知らず知らずのうちに、女性を中心に据えた物語を書いていた気がします」とジャ監督は語る。

 登場人物の心情も、過去のどの作品よりも深く描かれている印象を受けるが、「今回チャオ・タオの貢献がとても大きかった」と監督は振り返る。「彼女は、主人公タオの25歳から50歳までを正確に演じるために、脚本をさらに豊かに肉付けしてくれました。正直、彼女にここまでの能力があるとは予想していなかった。事前にキャラクターを細かく分析し、たくさんの疑問を投げかけてくれたんです。例えば、『タオの母親はなぜ出てこないの? 亡くなったの? 離婚したの?』という、私が考えもしなかったことまで(笑)。でも、それは俳優にとってとても大事なこと。彼女とは『四川のうた』から『罪の手ざわり』までの間、約5年間ほとんど一緒に仕事をしていない時期があるのですが、その間に、海外の作品に出演するなどして、自分なりの完璧な仕事の仕方を身につけたのだと感じました」。

 そう評価されたチャオも、監督と一緒に脚本を検討する時間が持てたことにとても満足している様子。「この脚本を読んだとき一番頭を抱えたのは、監督の書き方が断片的だったことなんです。自分の想像力を総動員して、ピースを埋めなければいけなかった。そのためにたくさん質問しました。監督も私とのそんなやり取りの時間をとても気に入ってくれたみたいで、投げた疑問にはすべて答えをくれました。実は今まで、こういうやり取りをしたことがなかったんです。『長江哀歌』のときは急いで撮らないと街がどんどん取り壊されていくし……。脚本を読み込んで、じっくりキャラクターの気持ちをイメージする時間を持てるようになったのは、『罪の手ざわり』のときが初めて。私はこうした仕事の仕方をすごく楽しんでいます」。

キャスト
『山河ノスタルジア』より - (C) Bandai Visual, Bitters End, Office Kitano

 検閲の関係で2013年の『罪の手ざわり』の公開が見送られたジャ監督にとって、『山河ノスタルジア』は、『長江哀歌』以来9年ぶりに中国で一般公開にこぎつけた劇映画となる。9年前はひっそりと公開され、中国での上映期間はあっという間に終了してしまったが、今回は全国20都市で大がかりなプロモーション活動を展開した。監督はその感想を「各地でそれぞれ最低8回はファンミーティングを開きました。私の映画の主な観客層は30代以上だと予想していたのですが、若い人が多くて驚きました」と嬉しそうに振り返った。

 近年の中国映画業界といえば、CGを多用したアクション映画やライトなコメディー映画が人気を集めている。そこで生き残っていくために必要なのは、「若者と触れあうこと」だとジャ監督は言う。「創作において何かを変えるわけではありません。でも、若い人に私の作品を観たいと思ってもらうことが大事。そこで彼らを引きつけるのは、最終的に美的センスだという気がします。結局、言葉を尽くして語っても役に立たない。アートフィルムにはアートフィルムの美があるので、それを理解してもらいたいと思っています」。

 そんな美的センスを発揮する上でも、チャオの貢献は大きいようで、最後に“妻としてのチャオ・タオの魅力”を問うと、ジャ監督はこの取材一番の明るい声でこう答えた。「彼女には、私にはない力があるんです。大自然や動物たちと交流できたり、自由な時間を上手く作り出して習字をしたり。ちょっと大昔の人のようなところがありますね。それに、私がちゃんとした生活を送れるように手助けしてくれます。映画監督の生活は時々まともじゃないですから(笑)」。

 すると横で聞いていたチャオも、「私の方が生活能力は高いわね(笑)」と一言。「時々、彼を自然の中に連れ出したりします。すると、たくさんの美しいものに触れてもらうことができる。彼に素晴らしいものを気づかせる力が、私にはあるのかもしれませんね」。チャオ・タオは正真正銘、ジャ・ジャンクー監督にとって「ミューズ」だった。(新田理恵)

映画『山河ノスタルジア』は4月23日より公開


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