辻一弘が明かす!ゲイリー・オールドマンがチャーチルになるまで

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
オスカーに輝いた辻一弘さん

 映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で第90回アカデミー賞メイク・ヘアスタイリング賞に輝いた辻一弘が、主演のゲイリー・オールドマンをどのようにして英国首相ウィンストン・チャーチルに変身させたのか、そのプロセスとこだわりを語った。

ゲイリー・オールドマンがチャーチル姿でダンス!【映像】

 本作は第2次世界大戦下のヨーロッパを舞台に、苦渋の選択を迫られるウィンストン・チャーチルの英国首相就任からダンケルクの戦いまでの27日間を描いた歴史ドラマ。素顔ではチャーチルに似ても似つかないゲイリーが、本作に必要不可欠な一人として、直々にオファーをしたのが、映画界を引退していた辻だ。このタッグがまぎれもなく最強であったことは、劇中写真や予告編映像などが披露された際の、人々のリアクションが証明していた。

[PR]

 「メイクがメイクとわからないことをやりたかったんです」と辻は語っていたが、その言葉通り、ゲイリーのチャーチル姿は、どこからどこまでがメイクなのかもわからないほど。実際には「鼻の形を変えるために鼻と、顎、ほっぺた、首にも人工装具、あとは本人の毛を剃ってカツラをかぶせています。それと、プラスチックのピースを耳の後ろにつけて、耳たぶを押し上げています。ボディースーツも着ています」と大がかりなものだ。「写真と顔型に、スキャンもとって、集めたチャーチルの写真や映像でゲイリーさんの顔と比べて、何が必要かデザインを考えていくんです。2人はかなり目鼻の位置が違ったので、単純にチャーチルの顔をゲイリーさんに彫刻しても、それらしく見えないんですね。マスクをかぶっているようにしか見えなくなってしまう。そこで足し算、引き算の感じで、どこをどう足せばより近くなって、どこをどう引けばという感じでした」。

 もちろん、似せるということのほかに、映画である以上、表情が出るようにも機能させなくてはいけない。「人の肌って非常に複雑なのでそれと同じように動かないんです。0から100までの表情の変化があったとして、もし人工皮膚のピースを100に合わせてつくってしまったら0は表現できないので、どの状態でつくっていくのかが大事なんです。そのときに、チャーチルがどういう人で、物事をどういう風に考えて、どういう気持ちでいたのかというのを想像しながら、そこにゲイリーさんのことも思い浮かべて、彫刻するときはいつも動きを考えてそこに形とラインをいれていくわけです。そうすると、深いところに水が落ちて川になっていくのと同じで、表情のきっかけを彫刻にいれておくとゲイリーさんがその表情をやったときに、うまい具合に表現されるようになっているんです」。その絶妙な職人技は本編でいかんなく発揮されている。カメラは幾度となく、ゲイリーふんするチャーチルの姿をアップで捉えているが、そこで確かにチャーチルは苛立ち、苦悩し、喜び、さまざまな表情を見せるのだ。

[PR]

 辻は技術のほかにも、道具や素材についての研究にも力を入れている。「ゲイリーさんも60歳近くなので、若い人の肌と違って、人口肌を乗せても、動かないんです。なので、どれだけの柔らかさのものをつけたら、本人の表情と一緒に動くかというのを見つけなくてはいけませんでした。シリコンは油をいれて柔らかくできるんですが、柔らかくすればするほど貼り付けつけるのが難しくなるので、ある程度のところで止めてしまうんです。でも今回はもっと柔らかくして、ゲイリーさんの細かい引きつり具合も伝わるようにしました」。そして日本のある道具が重宝しているとも。「日本のパンチパーマのアイロンをアメリカでも使っているんです。すごく細くて、温度を一定に保つ、そういうアイロンはなかなかないので、大事な道具の一つなんです(笑)」。

 辻の特殊メイクのおかげもあって、ゲイリーはチャーチルに変貌を遂げた。かねてからカメレオン俳優と呼ばれてきた彼が、ついに本作でアカデミー賞主演男優賞に輝いた。辻はゲイリーについて「人としても役者としても素晴らしい人」と称えつつ、それを物語るエピソードの一つとして、「特殊メイクに3時間もかかるとわかると、役者さんはメイク中に携帯をいじったり、映画を観たりするわけです。でもゲイリーさんは、それをやることでメイクさんがうまくできないというのを知っているんです。かえって時間もかかるし、メイクのクオリティーが下がるということも知っていたので、じっと座っていましたね」と明かす。本作で辻が成し遂げたことに、業界では「レベルが一歩上がった。今度はみんながこれを目指していくことになる」との声があがっていたそう。当の本人である辻は「今までも改善していくのは当たり前だったので、それが楽しみであり、変えていくというのが好きなので。状況に応じて、そこでなにが欲されているかというのを知ったうえで最高のものをだせるように、ものをつくっていくっていくのは、どんな状況でも一緒です」と変わらぬ創作意欲を見せていた。(編集部・石神恵美子)

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は全国公開中

» 動画の詳細
  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア

楽天市場

[PR]