日本のインディペンデント映画に世界が熱狂!狂気の映画作りの裏側を監督が語る

藤井秀剛監督の最新作『超擬態人間』
藤井秀剛監督の最新作『超擬態人間』 - 2018 (C) POP CO., LTD

 『生地獄』『狂覗』で注目された藤井秀剛監督の新作『超擬態人間』(10月30日公開)は、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭2019で、アジア映画部門のグランプリに輝いた。残念なことに新型コロナウィルスの蔓延に伴い、一時は公開が延期となってしまった本作だが、作品への思いを藤井監督に聞いた。

『超擬態人間』予告映像

 本作は、明治から昭和初期に活躍した画家・伊藤晴雨の幽霊画「怪談乳房榎図」に着想を得て「日本でしか作れないアメリカンホラー」をコンセプトに製作された。幼児虐待という社会問題を描きながらも、予測不能のストーリー展開と、スプラッタホラーが融合したエンターテインメント作品だ。

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 森で目覚めた男と息子、結婚式場に向かう途中トラブルに見舞われて森の中で立ち往生するカップル。2組の登場人物たちのストーリーは、観客の想像を絶する方向へと転がっていく。本作は、スペインのシッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭、ポルトガルのポルト国際映画祭と並んで“世界三大ファンタスティック映画祭”と称され、世界中のホラー・SF映画ファンから注目されているブリュッセル国際ファンタスティック映画祭のアジア部門で見事グランプリに選出された。

超擬態人間
2018 (C) POP CO., LTD

 日本映画とアメリカンスラッシャーを融合させたような描写が海外のファンを熱狂させているが、それは監督が高校1年からアメリカに移住したことが大きく影響しているようだ。「海外にいると日本を求めるんですけど、日本に戻ってくると全く興味なくなってしまうんです。向こうにいたときは、お岩さんとかお化け物作りたいなって思ってたはずなのに、多分もともとお化けに興味ないんでしょうね」と話す。

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 監督が本作で目指したのはスペイン映画『ザ・チャイルド』(1976)のような、難解だが潜在的に観客の心に何かを残す映画作りだったという。「メインストリームの映画はわかり易すぎて、僕自身そこに興味ないんです。わかりにくい=嫌悪感でなく、わかりにくさを許容できる本来の芸術性を受け止める側に求めてほしいですね。そうでないと僕の思惑から外れてしまう。映画の楽しみ方も単純になりつつある中で、潜在的に何かを訴える部分がブリュッセル映画祭で評価されたのは大きな意味のあることでしたね」。

 潜在的に訴えてくるといえば、本作の音楽もまさに潜在的な共鳴がある。それは前作『狂覗』でもそうだったが、監督の作品における音楽は非常に重要なファクターの一つだと言えるだろう。「音楽はメロディを避けてレゾナンスで構築してほしい、効果音に近いもので作ってほしいって伝えました。とにかく心臓に負担をかけて疲れさせようっていうのが今回の作品の狙いですね」という言葉の通り、こちらの精神状態は映画に出てくる主人公たち同様に疲弊していく。

 監督の映画作りもハードそのものだ。本作も、映画『狂覗』と同じスタイルで藤井監督が監督・製作・脚本・撮影・編集をつとめ、俳優たちがスタッフもこなす制作チーム・CFAによって制作している。「金額は言えないけれど尋常ではない予算でやっています」と笑う藤井監督だが、その情熱は仲間たちと共に10日間という超短期間の撮影時間に注ぎ込まれた。

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 「撮影中は本当に全く眠れないんです。みんな寝ないで撮ってるんで、本当に狂ってくるんですよね。沼のシーンなんかも、本人が自分で2メートルくらい掘って自分で入っているので(笑)」

藤井秀剛監督
藤井秀剛監督 - (C) Cine21

 これだけの低予算で撮影した映画が海外の映画祭で高い評価を受けるのは、若者たちの目標にもなり得るのではないだろうか。「そうなるといいなと思う反面、日本の業界が変わっていけばいいと思ってしまいますね」と複雑だ。「今無名の監督や俳優が出てくるっていうのがほぼないじゃないですか? 代理店主義が問題。ホラーなのに有名人が出ないとダメみたいな。海外だとホラーは無名な人でも出られるジャンルなんです」と指摘。「安く映画を撮れることはいいけれどその分、世界からなめられるし、誰かが泣いている。日本映画は末端価格で買い叩かれているんです。日本の映画界はどうせ面白くないんだろ? って。それに、シネコンとミニシアターもかける作品が全く別物になっていると思います。そこが一つになるともっとよくなると思います」

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 中学卒業後すぐにニューヨークの高校へと留学、高校卒業後はロサンゼルス近郊のカリフォルニア芸術大学で映画製作を専攻した藤井監督は、日本映画界はもっと国際的に目を向けるべきだという。「国際的に活躍できる人間をもっと雇い入れないとダメだと思うんです。外国の人と英語で張り合える人間に蓋をするところに真の問題があると思います。今回ティーチインをブリュッセルでやったんですが、終わった後に言われたのが通訳を介さずに話せたのはあなたと原田さんだけだと。日本はまだまだ恥ずかしいと思いましたね。韓国の映画は、21世紀になった時に海外に出た人が、韓国に戻ってきて今活躍してるんです。日本は昔は大島渚や黒澤明など凄い監督がたくさんいたけれども、結局そこにずっと胡座をかいてると思います」

 世界中のスプラッターファンを熱狂させた『超擬態人間』。本作は、これまで観ていたホラー映画の定義を根底から覆すはずだ。藤井監督にもまた、作品同様日本の映画界に大きな国際革命を起こしていってもらいたい。(森田真帆)

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