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アジア系アメリカ人として初のオスカー主演男優賞ノミネート!スティーヴン・ユァンが『ミナリ』で学んだこと

第93回アカデミー賞

映画『ミナリ』より夫婦役を務めたスティーヴン・ユァン&ハン・イェリ
映画『ミナリ』より夫婦役を務めたスティーヴン・ユァン&ハン・イェリ - (C) 2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.

 テレビドラマ「ウォーキング・デッド」のグレン役でも知られるスティーヴン・ユァンが、映画『ミナリ』での演技で、アジア系アメリカ人として初めてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。発表前にインタビューに応じたスティーヴンが、同作での役づくりやリー・アイザック・チョン監督との仕事を通して学んだことを明かした。

【動画】『ミナリ』予告編

 『ミナリ』は1980年代を舞台に、アメリカンドリームを求めてアーカンソー州の高原に引っ越してきた韓国系移民一家の物語。農業での成功を夢見る父ジェイコブ、時に無鉄砲になる彼に不安といらだちを感じている母モニカ、しっかり者の長女アン、心臓の病があるが好奇心旺盛なデビッドの4人家族が暮らすトレーラーハウスに、毒舌で破天荒な祖母もやってきて……。チョン監督は自身の幼少期の体験を基に脚本も執筆し、困難に立ち向かう家族の希望の物語をみずみずしく描き出している。

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 チョン監督はスティーヴンにジェイコブ役をオファーした理由の一つに、彼に「韓国とアメリカの両方の文化に溶け込みながら、同時に両方の文化にとってよそ者である」というバックグラウンドがあることを挙げている。このことについてスティーヴンは「アイザックは人間に対して鋭い目を持っているんだと思うよ」と笑うと、「僕は両方の場所(アメリカと韓国)でやっていく方法を学んだが、結局はその両方から誤解されているところもあると気付いた。僕は独特な場所にいる。孤立していると感じることでもあるが、それは正直な真実でもある」と言葉を選びながら打ち明ける。それゆえジェイコブには深く共感できたといい、「僕は4歳の頃に全く新しい場所に移民してきたから、そうした孤立感は僕の人生に深く根差しているものだと思う」と続けた。

ミナリ

 スティーヴンいわく『ミナリ』の撮影期間はわずか25日で、ほとんどのシーンが1テイクで撮られたもの。チョン監督はそんな中でも常に穏やかに、時間とお金、そしてたくさんのスタッフのかじ取りをしていたのが印象的だったという。

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 「経済的な問題で、彼は準備の段階で多くのことを済ませておかないといけなかったんだ。だけど撮影では、僕たちが自分たちのアイデアを持ち込めるスペースも与えてくれた。例えば、後半にあるジェイコブが薄闇の原野でタバコを吸うシーンは脚本にはなかった。あれは撮影の長い1日の後、撮影監督が外で『日没のシーンを撮りたい』と言っている時、ウロウロするのが好きな(笑)僕が居合わせたことから生まれたんだ。『何を撮るの?』と聞いたら、アイザック(チョン監督)が『今、君を撮ってもいいかな?』と。それで僕はただタバコに火を付けて、座ってタバコを吸った。タバコ休憩みたいにね(笑)。そして、アイザックはそのシーンを使ったんだ。映画においてとても力強い瞬間になったと思う」「多くのシーンが1テイクで、最高でも2~3テイクだった。一発勝負だとみんなもずっと集中することになるし、それはアイザックの大胆さと自信の表れでもあった。このやり方が僕は本当に好きだったよ」

ミナリ

 自身のバックグランドにも向き合うことになった今回のジェイコブ役。『ミナリ』での経験で、スティーヴンは今まで以上に自分自身について深く知ることになったのだろうか?「ワオ……僕が、自分が何者かを知れる日が来るかはわからない」と人懐っこく笑ったスティーヴンだが、「でも今回は、その表面をひっかけたというか、少し深く掘り下げることができた気はする」と語る。

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 「『ミナリ』での経験は、僕の親の世代の人々に人間性を与えるという作業だったと思う。誰かに人間性を説明しようとするわけではない。そうではなくて、物語を語る。そして、そうした人々をとても人間的な形で表現する。欠点もあって、二面性があり、矛盾があったりするといった風にね。僕にとっては、そこに解放感があった。『ミナリ』を観た多くの人々が感動しているのを見て、本当に素晴らしいことだと思う。時にその理由は、僕たちが最終的には障壁をなくすことができたからじゃないかと思うんだ」

 「この映画を観るために必要な“異文化理解”などはない。ただそこにあるのは人間の物語で、それは誰もが共感できるもの。存在しようとし、人生を創造し、共に生きようとする。文化的な理解については、観客のために僕たち作り手が持っていればいいのだと思う。アイザックがとても寛大で大胆なのは、脚本にもそういった壁を書かなかったこと。“この映画を理解するにはこうしたことを知っていないといけないよ”といったね。彼には、誰でも受け入れる寛大さがある」

 「僕自身もそうすることで実際、自分をちょっとクリアに見られるにようになった。アメリカでは時に、異なる物語、異なる経験ということで壁を作ってしまいがちだ。それはある程度は役に立つことかもしれないが、人間性を見ることを妨げ、僕たちはただ同じ人間なんだということを忘れさせてしまう。ほんの少し違うやり方で、同じことをしている人間なんだって。それが、僕が学んだことだね」

 『ミナリ』は第93回アカデミー賞で主演男優賞のみならず、作品賞、監督賞、助演女優賞(祖母役のユン・ヨジョン)、脚本賞、作曲賞の計6部門でノミネートを果たしている。韓国系アメリカ人監督のパーソナルな物語でありながら普遍的な家族の物語として多くの人々に感動と共感を与えている同作の、オスカーでの健闘にも期待がかかる。(編集部・市川遥)

映画『ミナリ』は公開中

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