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大沢たかおが見いだした王騎役のルール

大沢たかお
大沢たかお - 写真:高野広美

 原泰久の漫画を山崎賢人主演で実写映画化したシリーズの第3弾『キングダム 運命の炎』(7月28日公開)で、圧倒的存在感を放つ人気キャラクターの大将軍・王騎役を続投した大沢たかお(※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記)。その徹底した役づくりは、漫画ならではの現実離れしたキャラクターに血肉を与え、原作ファンからも高い評価を受けた。しかし、20キロ近い増量と過酷なトレーニングによる肉体改造などは役づくりのほんの一部でしかないという。その真意とは……?

【動画】王騎はなにが変わった?大沢たかおインタビューの様子

第3弾で王騎が本気の顔に

『キングダム 運命の炎』より蒙武(平山祐介)、干央(高橋光臣)、王騎(大沢たかお)、騰(要潤)(C)原泰久/集英社 (C)2023映画「キングダム」製作委員会

 紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く戦災孤児の少年・信(山崎)と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政(吉沢亮)を描く本シリーズ。第3作では、エイ政の壮絶な過去が明かされる「紫夏編」を交えつつ、王騎が本格的に戦地に舞い戻る「馬陽(ばよう)の戦い」が大スケールで描かれる。秦に積年の恨みを抱く隣国・趙の大軍勢が秦への侵攻を開始したことから、エイ政は長らく戦から離れていた伝説の大将軍・王騎を総大将に任命。実は決戦の地である馬陽は、王騎にとって因縁の地だった。初めて信を正式な配下に置いた上で共に戦うことになる今回の「馬陽の戦い」について大沢は、「王騎にとって最大の見せ場にもなる」という。

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 「馬陽の戦いは、秦国にとっても、王騎にとっても、いろいろなものを背負った戦いになるので、これまでの戦いとは大きく違う。前作までの王騎は、あくまで外野から、時には加勢し、時には冷やかすような立場でしたが、今回はいよいよ総大将となって自らが暴れることになる。彼は将軍で、武将ですから、戦こそが彼の生きざまで、生きる場所。いよいよ本番ともいえ、初めて王騎が本気になった姿を見せられると思います」

王騎役に必要なのは「特別な異物感」

『キングダム 運命の炎』より王騎(C)原泰久/集英社 (C)2023映画「キングダム」製作委員会

 王騎がクローズアップされる本作では、独特の笑みや言葉遣いなども、これまで以上に多くのシーンで堪能できる。いまや王騎役は大沢以外に考えられないほどのハマりぶりを見せているが、漫画的表現の個性の強いキャラクターが実写として成立できたのは、大沢が時間をかけて試行錯誤した上でつくり上げたからこそ。大沢は以前にも「本当に難易度が高く、どこを着地点にすべきなのかをすごく考えながら現場に入っていました」と語っていたが、容姿は肉体改造や衣装やメイクなどで原作の画に近づけることができたとしても、個性的すぎる笑い方や話し方、表情や動き方などの芝居は、正解がわからない中で常に模索していたようだ。

 「王騎の話し方は、実際に声を出してみたらめちゃめちゃ高かったみたいな(笑)。そういうところからスタートして、撮影が進んで現場で演じていくうちに段々と構築していったり、実験してみたりする中で、自分にとってしっくりくる着地点を探っていきました」と振り返る大沢は、1作目の完成品を見たり、その反響を聞いたことで「王騎を演じる上での一つのルールができた」という。結果的に成功したものの、王騎の普通ではない笑い方や話し方や容姿は、その違和感が圧倒的な存在感を生む狙いが原作にもあったとはいえ、実写化した際に受け入れられるかは未知数。違和感を与えることは狙いでもあるが、悪い違和感を与えてはいけないという難題に挑んだことになる。「よく見ると少し化粧もしているし、不思議な人ですよね」と微笑みながら話す大沢が、原作の王騎に感じたのは「特別な異物感」だったという。

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 「原作を読んで僕は王騎に、全く別の星からの生物が降臨したように感じました。いい意味でそれが彼のスタンスだし、それは主人公の信が憧れる存在というものにもリンクしていく。それが、王騎という役で僕がやりたかったこと。でも、それを表現するのは難しくて、作品自体を良くも悪くもぶち壊す可能性がある。作品をダメにしてしまうこともあるけど、別のトーンの異質なキャラクターが突然出てくることでムードを一変させたり、自分色に変えてしまうこともできる。台詞一言や笑い方だけで空気を一新するようなものが、独特の異物感と絶対的存在感を与えていて、それこそが信の憧れ続けた六大将軍の最後の1人らしさにもなるのかなと。人って、ただ強くて威厳があるだけでは好きになれない。どこか変なところやユーモアも相まって、王騎という原先生が作った、すごく魅力的なキャラクターができている。それを実写の中で茶番にならないように、僕なりにうまく合わせることや、他の俳優の皆さんが演じているキャラクターや普通の人間とはちょっと違う次元の人であることを、同じ空間の中でも見せきるということが、実写版『キングダム』での自分の一番大事な仕事だったかなと思います」

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 今回の王騎は、独特の笑みや言葉遣いの中でも、シリアスに聞かせるシーンもあれば笑わせるシーンもあり、その演じ分けは見事というしかない。もはや役を完璧に掴んでいるようにも思うが、「うまくできたなんて思えたことは一回もないし、やり方も無限大にあるので、監督のOKという言葉を信じつつ、現場で常にぐるぐる考えながら、どんどん変えていった感じです」という大沢。撮影現場では、テスト(芝居やカメラワークなどを確認するリハーサル)を一度やっただけで本番撮影に入り、一発OKということも多かったらしいが、事前に声のトーンなどは練習を重ねていたのだろうか。

 「台本を覚える際、声を出して読む時もありますが、それをやりすぎるとそこに溺れて、用意したものに近づける作業になってしまう。自分の小さな頭の中だけで計算してやることって、感動してもらえない。そこからいい意味ではみ出ないといけないんですよね。そこに、人は色気を感じたり、エンターテインメント性を感じると思うので、現場で演じてみないとわからないんです」

肉体改造は役づくりの1~2割にすぎない

写真:高野広美

 さらに王騎の役づくりについて、身体づくりや台詞回しなど以外でも重要視していることを尋ねると、「体を大きくすることなどは、僕からするとちょっとしたエッセンスでしかなく、役を作る上での1~2割くらい」と大沢。

 「でも、残りの8~9割の要素を言葉にするのは難しい。今回の王騎を演じるのには約1年くらい準備時間をかけたと思いますが、ちょっとずつ気付いていくことがあるんです。その積み重ねが8割くらいにあたるので、それを具体的には挙げられないけど、異物感であることの面白さとか、強さとは何なのか、将軍とは何なのかといったことを突き詰めたところにあるのが王騎だと思うので、その精神性みたいなものを考え、表現することが、多くを占めているかもしれないですね」

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 「癖のある役なので、その手癖みたいな形に溺れてしまわないように、毎カット毎カット、リセットしなきゃいけない」と王騎の異物感にいい意味で慣れないようにも気を付けたという大沢。王騎という役の魅力については、「僕は原先生の原作に最大の魅力を感じているので、その原作の王騎に恥じぬよう、王騎が『お前がやってくれて良かった』と喜んでくれるようなことだけを考えてやらせていただいています。だから自分の演じた王騎の魅力やその出来については全然わからない。それはむしろ観客の皆さんに僕が聞かせていただきたい(笑)」とのことだが、「作品は素晴らしいです!」と明言していた。(取材・文:天本伸一郎)

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