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『バービー』グレタ・ガーウィグ監督&プロデューサー来日インタビュー

来日したグレタ・ガーウィグ監督
来日したグレタ・ガーウィグ監督

 映画『バービー』で監督・脚本・製作総指揮を務めたグレタ・ガーウィグとプロデューサーのデヴィッド・ハイマンが来日時にそれぞれインタビューに応じ、カラフルで楽しい本作がいかにして生まれたのかを語った。

【画像】可愛すぎると話題!実写バービー役のマーゴット・ロビー

 『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』などで高い評価を得てきたガーウィグ監督が、公私にわたるパートナーであるノア・バームバックと本作の脚本を書いたのはパンデミック中のことだった。

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 「ロックダウンになりどこへも行くことができず、『また映画館に戻れる日が来るのだろうか?』という感覚がありました。あのような体験はもう二度とできないのかもしれない、と。だからこそわたしたちは、楽しさに満ちていてワイルドで自由、そしておかしくて胸を打つ、たくさんの人々と共に映画館で観たいと思うような映画を書こうと決めました。もしあの場所に戻れるのなら、何か突飛なことをやってみようと。だから脚本が出来上がった時、それはわたしが絶対に監督したい、しなければならないものになっていました。なぜならこれは“またみんなで映画館に戻ろう!”という希望のようなものになっていましたから」

 毎日が完璧なバービーランドでさまざまな職業のバービーたちがハッピーに暮らす中、マーゴット・ロビー演じるバービーは死についての考えが頭から離れなくなってしまう。「このアイデアは、1959年に誕生して以来、バービーが象徴してきた“完璧さ”と正反対なものをやりたい、というところから生まれた気がします。それは人間味というだけでなく、ボロボロになること、死ぬということ。全ての職業に就いたバービーが、やったことがないこと。そこは、バービーと共に行ってみるのに興味深い場所かもしれないと思ったんです」

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 そうした映画のトーンが本作を唯一無二のものにしていると言っても過言ではない。「バカバカしさと誠実さのバランスは、わたしの俳優たちと見つけていきました。わたしのキャリアは本当に素晴らしい俳優たちと仕事ができて恵まれているのですが、彼らがやることは、信じられないほどおかしいのと同時に、地に足がついている。だから本作のユーモアは、そうしたことを真剣にやっていることから来ているんです。おかしいことをやってやろう、というんじゃなくてね。だからバカげているのに、そこには人間らしさがある。わたしは、彼らを通してそれを理解したのだと思います」とガーウィグ監督。

 ガーウィグ監督はバービーを生んだマテル社自体も本作に登場させ、軽快なジョークにしている。「もちろん、マテル社にはわたしたちがやっていることに対して思うところもあったみたいですが(笑)、最終的には100%サポートしてくれました。それはプロデューサーでもあるマーゴット・ロビーが『これがわたしが作りたい映画のバージョンであり、わたしはこれを支持します』と絶対的な味方をしてくれたことが大きいはずです。(マテル社のCEO、社員たちの描写について)彼らは『マテルはこんなじゃないよ』と言っていたけど、わたしは『それはもちろん! でもこれは映画だから。ジョークなの』と(笑)。最後には『……OK、やっていいよ!』となりました」と笑った。

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 たくさんのジョークがある一方で、アメリカ・フェレーラ演じるマテル社のグロリアが女性たちの境遇について声を上げる、パワフルで感動的なスピーチもある。「2日間にわたって、数十回、本当にたくさん撮影をしました。だから彼女はあのスピーチを何度も何度もやったのですが、毎回が少し違っていて、毎回がエモーショナルだったんです。たくさんのテイクをしたのは、全ての異なるバージョンを表に出す機会を与えたいと思ったから。このシーンに関しては“どうすべきか”という確固としたものがなく、わたしはただ彼女にそれを探究するスペースをあげたかった。だから彼女にいろいろ試してもらい、正しいと感じるものを見つけてほしかったんです」

 「わたしには本作についてのクリアなビジョンがありました。どんなふうに見えるべきか、感じられるべきかというアイデアがあり、そのために時間をかけて準備していきました。しかし同時に、特に俳優たちからのサプライズも求めていました。だからわたしにとって映画作りは、常にバランス。計画して、計画して、計画して、フレームを決め、全てのことをコントロールしようとして、でも同時に予想外のものも受け入れられるようにする。そこに映画作りの魔法みたいなものがあるのだと思います」と映画制作への愛を語っていた。

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グレタ・ガーウィグ監督

 そうして生まれた『バービー』は、公開3週目にして世界興行収入10億ドル(約1,400億円・1ドル140円計算)の大台を突破する大ヒットを記録している。そんな盛り上がりの中で浮上したのが米公式SNSの不適切投稿問題だ。

 海外では、カラフルで楽しい『バービー』と、“原爆の父”が題材のシリアスな『オッペンハイマー(原題) / Oppenheimer』(クリストファー・ノーラン監督)という正反対の作風の大作が同日公開だったことで、2作のタイトルを掛け合わせたハッシュタグ・バーベンハイマー(#Barbenheimer)がSNSで大流行。同ハッシュタグでは両作のビジュアルを掛け合わせたファンアートが多数投稿されており、その多くはバービーと共に原爆のきのこ雲をポップに描いたものだ。『バービー』米公式X(旧Twitter)がそうしたファンアートに好意的なリプライを送ったことが日本で物議を醸し、ワーナー ブラザース ジャパン合同会社が先月31日に謝罪。翌日、米ワーナー・ブラザースも「先の配慮に欠けたソーシャルメディアへの投稿を遺憾に思っております。深くお詫び申し上げます」と世界のメディアに対して声明を出していた。

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 この件について、ガーウィグ監督は「わたしにとって、米ワーナー・ブラザースが謝罪することがとても重要でした。そして、実際に彼らがそうしたことが重要だと思います」と神妙にコメント。

 そもそも映画『バービー』と原爆には何の関係もなく、先の投稿も監督をはじめとした『バービー』の映画製作者たちのあずかり知らないところで行われたもの。しかし、米ワーナーの謝罪後も、日本では映画『バービー』そのもののイメージが損なわれてしまった。

 プロデューサーのハイマンは「あの投稿のいずれとも、わたしたちが作ったこの映画、そしてわれわれ映画製作者たちとは何の関係もありません。だからこそ、わたしたちは彼らが謝罪文を出すことがとても重要だと感じていて、彼らはそうしました。人々が本作を、“美しい、人生を肯定する映画”というありのままの姿で観てくれることを願っています」と切々と語っていた。事実、バカバカしくも鋭く切実に、社会に決められた男女の役割に切り込んだ『バービー』は、生きづらさを抱えた全ての人に寄り添い、そしてパワーを与えるような、幸福感に満ちた映画になっている。(編集部・市川遥)

映画『バービー』は8月11日より全国公開

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