三谷幸喜、5年ぶり新作は長澤まさみ主演『スオミの話をしよう』　大富豪の妻が失踪するサスペンスコメディー

　三谷幸喜監督の5年ぶりとなる新作映画が、長澤まさみ主演の『スオミの話をしよう』に決定したことが13日、TOHOシネマズ日比谷で行われた東宝ラインナップ発表会にて明らかになった。会場には三谷監督も駆けつけ、新作の内容について自ら解説した。

【画像】記憶喪失の総理大臣を描いた三谷監督の前作『記憶にございません！』

　2019年の映画『記憶にございません！』以来、およそ5年ぶりの新作となる本作は、三谷が監督・脚本を務めるサスペンスコメディー。三谷監督は「作り手が映画の話をするときに、この映画はコメディーとかミステリーとか、恋愛ものですと、作った側が言うのはちょっと違う気がしています。そういうのは、やっぱりお客さんが見て判断することだと思うんです。それを踏まえたうえで、僕が製作している『スオミの話をしよう』がどういう映画なのかという話をこれからするんですが、何か1つの限定してこれだということではなく、5つの顔があります」と前置きする。

　そんな中、「まずはミステリーです」といきなりジャンルを定義しはじめた三谷監督に、会場からはクスクス笑いが漏れる。「大富豪の奥さんの名前がスオミというんですが、実は突然いなくなってしまうんです。これが誘拐事件なのか、単なる家出なのか分からない大富豪は、あまりことを大事にしたくないので、警察には言わず、自分の知り合いの警察官に極秘で捜査をしてほしいと頼むんです。それが物語の発端となっております。日本映画で誘拐というと、黒澤明監督の『天国と地獄』という作品がありますが、今回はそれを目指そうと思っています……とちょっと大きく言ってしまいました」と説明した。

　2つめの要素は「コメディー」。これまで観客に笑ってもらうことを大前提として作品づくりを行ってきたという三谷監督だけあって、最新作でもその姿勢は変わらないと語る。

　「スオミがいなくなって、その代表のところに、かつてスオミが結婚していた4人の男性が集まってきます、だから今の旦那さんと含めて5人のスオミを愛する男たちが集結する物語です。さっきの極秘捜査をお願いした警察官というのは、実はスオミの前の旦那さん。その5人の男たちがスオミがいなくなってしまったことを忘れてしまって。誰が一番スオミを愛していたかということでマウントを取り始めるという展開になります」と三谷監督。「出演してくれた俳優さんたちも、本当にすばらしい方ばかり。あまり今まで僕の作品には出てこなかった俳優さんたちに集まってもらいました。プロデューサーからは絶対に言うなと言われているんですが……ならば出てない俳優さんについては言ってもいいんですかね？　佐藤浩市は出ていないです。中井貴一も出ていないです。西田敏行さんも出ていないです。これでだいぶ絞れてきたんじゃないでしょうか」

　そして3つめの要素は「恋愛映画」。「僕の作品としては珍しいんですが、5人の男たちがスオミとの思い出を語る中でいろんな愛の形が見えてくるという構成になっております」と三谷監督は明かす。続く4つ目の要素は「長澤まさみ作品」だと力説すると、「僕は長澤まさみさんが大好きです。今までも舞台も一緒にやりましたし、ドラマにも出ていただいた。大河ではナレーションもやっていただいたんですけども、おそらく今の日本映画界で最も力があり、輝いている女優さんだと思います。その長澤さんの一番すてきな部分、コメディエンヌとしての輝きも含めて、今現在の長澤さんの魅力をすべておさめたかったというのが僕のひとつの目標でもありました。だから長澤さんのファンの方には、こんな長澤さんが見たかったときっと思ってもらえると思っています」と語った。

　最後に、5つ目の要素として「三谷幸喜作品」を挙げた三谷監督。「この作品は僕にとって9本目の映画になるんですが、もう9本になっちゃうんだなと思って。毎回試行錯誤を繰り返しておりますが、今回はちょっと手応えがあるというか。今はまだ編集の途中なんですが、面白い作品になっていると思います。今までの映画と同じように、カンヌとかベネチアにはまったく縁のない作品ではあるんですが、今の日本のお客さまには必ず楽しんでもらえる作品になっていると思います」と自負した。（取材・文：壬生智裕）

映画『スオミの話をしよう』は2024年9月13日全国公開