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日本アニメ・漫画オタクのYouTuber監督、“憑依チャレンジ”ホラー『TALK TO ME』でも貫くクリエイターとしての姿勢

『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』を監督したマイケル・フィリッポウとダニー・フィリッポウ
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』を監督したマイケル・フィリッポウとダニー・フィリッポウ

 A24が北米配給権を獲得し、スマッシュヒットとなった映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(全国公開中)で一躍注目のクリエイターとなったYouTuber兄弟監督、マイケル・フィリッポウダニー・フィリッポウが日本を訪問。人気格闘ゲーム「ストリートファイター」実写映画版に抜てきされるなど、さらなる活躍が期待される2人が、長編映画デビューとなった本作について語った。

憑依チャレンジで大変なことに!『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』予告編

 オーストラリア出身のフィリッポウ兄弟は、映画監督にして、YouTubeチャンネル「RackaRacka(ラッカラッカ)」を運営するYouTuber。2013年に開設した同チャンネルは、刺激的なコメディーセンスと体を張った過激なアクション、ヒーロー映画や日本アニメのパロディーなどで話題を呼び、現在の登録者数は680万人を突破している。

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 日本のアニメやコミックが「死ぬほど好き」だといい、この日のダニーは「HUNTER×HUNTER」のキャラクターがプリントされたデニムを身に着けていたほど。「アニメや漫画といった日本文化に取り憑かれた白人のことをスラングでweeb(ウィーブ)って言うんですけど、僕らはまさにそれですね」と笑みを浮かべる。

 そんな彼らの長編映画デビュー作『トーク・トゥ・ミー』は、霊媒師の“手”を使った憑依体験でハイになるティーンたちを描いた新感覚ホラー。呪物の手を握り「トーク・トゥ・ミー(話したまえ)」と唱えて呼び出した霊を憑依させる遊びにハマった若者たちが「霊を憑依させる時間は90秒まで」というルールを破ったことから、取り返しのつかない事態に見舞われる。

 劇中で描かれるのは、憑依された仲間の異常な行動を嬉々としてスマホで撮り続け、SNSで共有する若者たち。YouTubeでパロディーにしている大作映画や、体をはったアクション動画とは一味違う作風の本作は、監督たちのパーソナルな体験から生まれたという。

 「この映画のインスピレーションのひとつになったのが、たまたま見た、近所の子供たちが撮った動画です。彼らの1人がいろんなドラッグを試していて、そのうち床でけいれんし始めてしまった。でも、周りの仲間たちは、笑いながら動画を撮り続けている。それを見た時に、すごく嫌な、怖い気持ちになったんです」とダニーが明かすと、マイケルも「YouTubeの動画とは傾向が違いますが、僕たちはもともと、個人的なテーマを扱った映画やドラマが大好き。だから、自分たちの映画を作る時も『TALK TO ME』のようなパーソナルな作品にしたかったんです」と明かす。

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手が呼び出した幽霊とは……主人公のミア(ソフィー・ワイルド)(C) 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia

 「自分自身をきちんと表現したければ、ユニークで個人的なストーリーを語るべきだと思います。最初から何かを模倣しようとしすぎると、個人的なものではない、平坦な脚本ができあがってしまう。だからこそ、僕たちが物語を書くなら、身近に感じられるものでありたいと思ったんです」(ダニー)

 それだけに本作は、無責任な若者を戒めるだけの映画ではない。主人公のミア(ソフィー・ワイルド)は、一見すると身勝手で、周囲から少し煙たがられているティーンだが、物語が進むなかで、彼女の抱える孤独やトラウマが浮かび上がっていく。ダニーは「映画では時として、主人公の描写があまりに型通りになってしまうことがあります。でも僕らは、最初は『こいつは何でこんなことをしてるんだ!?』と思うけれど、観ていくうちに『ああ、でも何か気持ちがわかる』と、どこか共感してしまうようなキャラクターを作りたい。人間って、誰もが白黒で分けられるものではない。それは悪役だってそうです。そういうグレーな部分を見せることが僕らにとっては大事なことだったんです」と語る。

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 実際のティーンを配役したという若者たちの描写も非常にリアルで、彼らに寄り添うような描写も印象的だ。マイケルは「“手”がもたらす憑依の怖さだけじゃなくて、なぜ若者がそうした体験やスリルに惹かれるのか。その魅力の面もしっかり描こうと思いました。彼らの行いを上から見下すのではなくね。それが僕らの仕事でもあり、それを理解していますからね」と語る。

「自分たちのオリジナルのアイデアに基づいた作品をやりたい」(C) 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia

 本作は、スティーヴン・スピルバーグアリ・アスターといったビッグネームが絶賛し、兄弟は今後、大物クリエイターとのタッグ企画などが報じられている。しかし「ビビってしまうようなすごい人達から連絡をもらって、ラッキーな状況だと思っています。メジャースタジオからこれをやってみない? って脚本も送られてくるんですが、どんなに大きな企画でもいまいちピンとこないんです。やっぱり自分たちのオリジナルのアイデアに基づいた作品をやりたいんですよね」とその方針は変わらない。

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 「ストリートファイター」の実写版についても「現在は開発を進めています。(製作の)レジェンダリー・ピクチャーズが自分たちと同じ方向でアプローチを続けてくれるのであれば、このまま行きたいですね」と自分たちのアイデアを大事にする姿勢で「将来的にはアクション大作もやりたい。すごいビッグバジェットの作品を、自分たちのやり方で出来たら最高だなって思っています。あとはゲーム! 僕らはすごいゲーマーでもあって、(「メタルギア ソリッド」などの)小島秀夫監督も友達なんです。アイデアはあるので、いつか作れたらいいですね」とクリエイターとしての展望を明かしていた。(編集部・入倉功一)

「#90秒憑依チャレンジ」が恐怖を招く…映画『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』日本版予告編 » 動画の詳細
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